先週の金曜日、「業務ハック」に関する初めての勉強会「業務ハック勉強会@東京」が開催された。エントリー自体は100名を軽く超えて、キャンセル待ちも多く発生するほどの規模となった。本当に多くのご参加ありがとうございました。
業務ハック勉強会に参加して感じたのは、これまで表舞台に出てこなかったような業務に携わっている人たちが登壇をして、そのノウハウを共有することが、いかに画期的なのか、ということだった。
こうして共有される機会が出来たことこそが「業務ハック」と名前を付けた意義だったのではないだろうか。この記事では、業務ハック勉強会での所感と、これまで私のブログに頂いた反応への回答を書いた。
目次
セルフマネジメントとホラクラシーを支える「業務ハック」
業務ハック勉強会では、私は登壇していない。そもそも企画運営にも、ほとんど携わっていない。なぜならば、私は業務ハッカーではないからだ。業務ハッカーは、あくまで、現場で業務に携わっている人であり、それを改善していくための工夫をする人だからだ。
私の会社での立場は経営者であり、現場のオペレーションは副社長が筆頭に取り組んでくれている。だから、ソニックガーデンという会社の業務ハッカーは、私ではなく、副社長の藤原なのだ。だから、今回は業務ハックの事例の1つとして、彼が登壇した。
私たちソニックガーデンは、セルフマネジメントな人材とフラットな組織、今風に言えば「ホラクラシー」な経営を実践しているが、それを支えている大きな要因が、実は「業務ハック」だったということは、これまでブログにも書いていないし、表にも出していなかった。
セルフマネジメントな組織では、各々が得意なことに取り組んで苦手なことはなるべく避けるようにしているが、そうするとクリエイティブな人でなくても誰もが苦手な総務や事務の仕事が取りこぼされることになる。それを全て引き受けているのが、バックオフィスを統括している副社長だ。
そして人が増え、組織が大きくなるに連れて煩雑になるバックオフィスの業務を、私たちは人手を増やすのではなく、テクノロジーで解決してきた。
領収書の記録を一人でするのが大変なら、各自が自分で記録できるようなシステムを作った。作業を沢山こなすのではなく、作業そのものをなくすアイデアを技術で実現してきた。それこそ業務ハックだ。業務ハックがなければ、ホラクラシーは実現していない。
そして、そこでの具体的なノウハウなど、これまで表に出ることも出る機会もなかったけれど、業務ハック勉強会という舞台が出来たからこそ、彼のノウハウを共有する場が出来たのだ。そのことは、私にとっても、とても嬉しいことだった。
「業務ハック」を続けたら、通勤しない働き方に変わった
業務ハック勉強会に参加して、特に画期的だったと感じたのは、登壇者がエンジニアではない、ということだ。エンジニアたちが勉強会を開催して、互いのノウハウを共有しあう文化があることが周知だが、普通に業務をしている人が登壇する機会など、今までなかったのではないか。
それが今回、現場の人たちが登壇し、自社の業務に取り組み、日々の中で改善し、業務ハックを実現してきた話は、どれも、とても面白いものだった。特に、大阪の会社で業務ハックを実現された方の話は、非常に示唆に富む興味深いストーリーだった。
ドイツから工業用の素材を輸入し、自社の倉庫で残量調整を行って卸を行う会社で、倉庫管理のバックオフィスを担当されていて、拡大成長する企業の中で、その成長に従って日々増える業務に取り組んできた。以前は、エクセルで管理できていた情報も限界になり、ついにシステム導入を検討することになる。
パッケージ導入を進めることを考えている経営陣に対して、現場にフィットして改善を続けるシステム開発を提案。現場の人たちを巻き込み、少しずつ業務ハックを続けることで、倉庫管理を全てクラウドに移行し、最終的には現場の人にとっての効率化も実現したのだ。
そして、この話にはオマケがある。事業拡大に伴って、倉庫の移転をすることになるのだが、その倉庫管理をしている方にとっては、移転をすると通勤時間が片道30分だったのが2時間もかかるようになってしまうというのだ。
それが、今回の業務ハックに取り組んだことでペーパーレス化が実現し、ほぼ全ての業務がクラウド化したことで、なんと倉庫に行かなくても業務が出来るようになったのだ。そう、今どきのリモートワークの在宅勤務が実現できて、今では月に3日も行く程度ということだった。
毎日、往復で4時間を20営業日も続けていたら、月に80時間も通勤にかけることになるが、それが全てゼロとなって、自分の時間になったのだ。これこそ、業務ハックが働き方改革を実現した実践例だ。働き方改革は、業務改善から始まるのだ。
昔からいた「業務ハッカー」たちが脚光を浴びる世界に
「業務ハック」と「業務ハッカー」というコンセプトについて、これまでに書いた記事はこちらだ。
多くの人に読んでもらうことが出来て、沢山のフィードバックをもらうことが出来た。賛否両論あったけれど、そうして話題にしてもらえるということは、いくばくかの関心として引っかかったのかもしれない。
多く頂いたフィードバックの一つは、ポジティブにもネガティヴにも両方だけど、「業務ハッカー」のような仕事は昔からやっている、とか、まさに自分がやっている仕事が「業務ハッカー」だった、というものだった。
そう、業務ハッカーはまったく新しいものではなく、これまでにやってきた人たちがいて、その仕事に名前を付けたのだ。だからこそ、反応してもらえたのだと思う。
ポイントは名前付けだ。名前を付けたことで認識が生まれ、同じ仕事をしている人たちが見つかり、仲間の存在に気付くことが出来る。これはノウハウを共有していくのに、とても大事なのだと考えているのだ。
また、業務改善とシステム化を一緒にやってしまうことを「業務ハッカー」と呼んでいるけれど、そんなことは出来て当たり前だ、それが普通だ、という意見も多かった。
確かにそうなのかもしれないが、そう言ってしまうと、社内で日々の業務の傍らで業務改善に取り組んでいる人たちの仕事を、出来て当たり前なんだと感謝や尊敬がなくなってしまうことに寂しさを覚える。業務改善とシステム化をすることが、とても大事な仕事だという認識を広めたい。
業務ハックは、簡単な仕事ではないけれど、だからこそ評価される仕事であってほしい。業務ハックで効率化に取り組まない会社は、これからの社会で生き残ることは出来ない。もっと評価される仕事にしたいのだ。「業務ハック」が、そのための旗印になれば嬉しい。