『EXTREME TEAMS』の感想と偉大なチームの共通点

『EXTREME TEAMS』の感想と偉大なチームの共通点

先鋭的なチームは、成果と人間関係の追求がもたらすリスクを心得ながら、極限を追求する。

優れた企業では、組織を構成する「チーム」がうまく機能している。

ホールフーズ、ピクサー、ザッポス、エアービーアンドビー、パタゴニア、ネットフリックス、アリババ・・・ビジネスや経営の世界にいれば、名前を聞いたことのある企業ばかりだ。どれも歴史と伝統を重んじる企業というよりも、新しい市場を作り出し、新しい価値観を広めてきた企業だ。

この7社を分析し、そこに共通する偉大なチーム「エクストリーム・チーム」についてまとめたのが、本書「EXTREME TEAMS(エクストリーム・チームズ)— アップル、グーグルに続く次世代最先端企業の成功の秘訣」だ。

良い会社で終わらない、偉大な会社になるために

大きく時代が変わりつつある中で、組織の構造や、そのマネジメントも変わることが求められている。成果だけを求めて、数字と権力といった外発的動機で支配する時代は終わったのだ。これからは、働く個々人が尊重され、組織よりも個人が強い時代になるだろう。私自身そう考えて経営をしてきた。

一方で、社員を大事にして、セルフマネジメントでフラットな組織を経営していると、儲ける気がないのか?と言われることもある。短期的には、そう見えるのかもしれないが、そんなことはない。しっかりと成果を出すことも大事にしている。目指す成果が従来の短期の業績目標だけではないというだけだ。

大きな成果を出すためには、チームで立ち向かうことになる。お互いを支え合い、高め合う仲間との絆、それを実現したチームだからこそ、偉大な成果を出すことができる。そんな「成果と人間関係の相互作用」に着目したのが、本書である。

信念に基づいた独自の企業文化を重視する点、採用では時間をかけて才能よりも適性を重視する点、働くことを単なる労働や業務と捉えずに使命だと考える点、成果のために気まずさを恐れず衝突することも大事だとする点、本書に書かれたどの項目も共感するものばかりだった。

ただの「良い会社」で終わるのではなく、成果と人間関係の両方を徹底的に追求して、偉大な会社になりたい。そう思える本だ。

一般的なチームとエクストリーム・チームの違い

本書の最初の方に出てくるのが、一般的なチームとエクストリームチームとの違いという表がある。

一般的なチーム

  • 仕事のことを、プロとして「こなすべき作業」と見ている
  • チームメンバー個々人のキャリアや業務能力を重視する
  • 一度に多くの優先事項を追いかける。多くやれば成果が出ると考える
  • 効率的で先の予測が立つ文化の創出に努める
  • チームメンバー同士の調和を大事にする。衝突や、気まずい状況になることは、できるだけ避ける

エクストリーム・チーム

  • 仕事のことを、「天職」と見ている。仕事に執着する
  • メンバーが文化にフィットすること、チーム全体で結果を出せることを重視する
  • 少数で必須の優先事項を追求する。集中する領域が少ないほうが成果が出ると考える
  • ハードかつソフトな文化の創出に努める
  • チームメンバー同士の衝突を大事にする。気まずい状況になることのメリットを理解している

この表を見ただけでも、私は共感するところばかりで、もしここで共感した方ならば一読の価値はあると思う。

偉大なチームに共通すること

チーム制の持つポテンシャルを理解し、新たなアプローチを実験していこうという意欲がある。こうした企業で活躍しているチームのことを、私は「エクストリーム・チーム」と呼びたい。

本書の目次が、まさしく偉大なチームに共通することを表している。

第1章:成果と人間関係の両立 〜 大きなリスクに挑むチームだけが、大きく前進できる
第2章:執着心の共有 〜 ビジネス以上、カルト未満
第3章:能力より適性 〜 最高の人材を探そうとするな。ふさわしい人材を選べ
第4章:焦点を絞る。焦点を広げる 〜 難しいのは「何をしないべきか」を知ることだ
第5章:ハードかつソフトな企業文化 〜 すべての偉大な文化は、矛盾を孕んでいる
第6章:気まずさを恐れない 〜 私が聞きたくないことであろうことも、聞かせてちょうだい
第7章:エクストリーム・チームを作る 〜 冒険なきチームは衰退する

本書に登場する7社は非常に先鋭的で成功もしているが、共通点ばかりではない。本質は似ていても、具体的な取り組みは全く違っていたりする。つまり、エクストリーム・チームになりたいからといって、彼らのことをそのまま真似をしても意味はない、ということだ。

本質は、仲間との絆で結ばれたチームを作り偉大な成果を出すことへの意思と、それに基づく様々な実験的な取り組みへの勇気、そして、極端(エクストリーム)にまで徹底をしていく姿勢こそが、共通項であり参考にすべき点ではないか、と読んで感じた。

いつも組織とチームについて考えている人にとって、とても面白く、とても参考になる本だ。お勧めする。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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