不確実な世界で成果をあげる〜変化を抱擁するアジャイル思考

先日、福岡にて行われたプロジェクト管理ツールBacklogのユーザーコミュニティによるイベント「Backlog World 2023」にて、基調講演として呼んでいただいたので話してきました。

そのときの様子は、backlogブログで記事にして頂いてます

プロジェクトマネジメントにまつわるテーマということで、不確実さが増す社会において、今こそ「アジャイルソフトウェア開発」のエッセンスを、ソフトウェア開発以外のマネジメントにも適応していくと良いのではないか、ということを話してきました。

本稿では、そのときの講演タイトル「不確実な世界で成果をあげる〜変化を抱擁するアジャイル思考」について、少し補足をして言語化してみます。

アジャイルソフトウェア開発の本質

最近は「アジャイル」という言葉だけを使われることがありますが、本来は「アジャイルソフトウェア開発宣言(アジャイルマニフェスト)」にある通り、ソフトウェア開発の文脈で語られる言葉です。

私自身、ソフトウェア開発者としてキャリアをスタートしたので、ソフトウェア開発におけるアジャイルの有用性は理解しているつもりです。それを抽象化した上で、経営や組織運営に適用するとしたら、その肝は何か考えねばなりません。

そのために、まず「アジャイルソフトウェア開発」の本質から考えるのですが、これについては以前に書きました。

そこで書いたのは、「アジャイル開発では当初に想定した機能を”全部”つくらない」ことが、掛け声のような精神論でもなく、ただのベストプラクティス集でもない、アジャイルソフトウェア開発の本質ではないか、ということです。もちろん私見ですが。

未来の結果を確約しないアジャイルマネジメント

では、これをソフトウェア開発とは違う分野に適用するとしたら、どうなるのでしょうか。仮に、それをアジャイルマネジメントと呼ぶとしたら、その本質は「未来の結果を確約しない」ということではないかと考えました。

ソフトウェア開発プロジェクトに限らずとも不確実性が高い状況において、勝ち筋やアプローチが見通せないほど先のことについて事前に確定させることは非常に困難です。

もし仮に経営サイドが確定させて、絶対に実現させるというスタンスをとったとしても、それはウォーターフォール的で不確実さを飲み込む現場サイドの苦労は計り知れません。

経営サイドにしても、結果を事前に確定させてしまうことで時間経過によって得られたかもしれない経験や、想定できていない様々な機会を逸してしまう可能性があります。

では、どうすればよいのか。確実に進められる部分にフォーカスし、出てきた結果を積み上げていくのです。結果を積み上げていく過程で、方針転換をすることもできるし、優先順位を変えることもできます。

見通せる範囲までを確定させて進めていき、時間とともに進捗したら、そこからはまた見通せる範囲を確定させていくことが、アジャイル的な不確実な状況におけるプロジェクトマネジメントや経営になるのではないでしょうか。

変化を抱擁するアジャイル思考

結果を確約しないと言うと、果たして大丈夫なのか心配になると思いますが、結果を確約しない代わりに、今を精一杯に取り組むことにフォーカスします。

マーケティングやプロダクト開発など様々な不確実さの多い仕事や、アイデアや創造性が求められる再現性の低い仕事において、やれば絶対に結果がでるわけではありません。できることはベストを尽くすことだけです。

コントロールできる範囲に小さくして取り組んで、そこで得た学びや経験をふりかえって取り込んで、また次の小さな範囲に取り組むことで、少しずつ上達したり、成功確率をあげていくことができます。

どうも刹那的で行き当たりばったりに見えるかもしれませんが、むしろ逆で、大きな目的やビジョンのようなものを据えて、期限をきらないだけで、一つ一つ進めていくことでいつか実現することを目指します。

こうした考え方を「適応型マインドセット」として、以前にまとめています。私は、これこそがアジャイル思考と呼ぶべきもので、不確実さの中でも成果をあげていくことのできる思考法ではないかと考えています。

アジャイル思考は、弓道の世界で言われる「正射必中」の考えに近いものです。的に当てることではなく、正しく射ることに集中することを指した言葉です。正しいフォームで射ることで、結果として的に当たる。そのためには自分たちのフォームを知っていないといけません。

そうしたフォームは例えばアジャイルソフトウェア開発では、スクラムとして体系化されたりしていますが、経営やマネジメントをアジャイルにすすめる知識の体系化はまだなされていません。

今後いずれアジャイル思考を実践していくための体系化、アジャイルマネジメントを実践するための整理に取り組んでみたいものです。

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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