Waiting to be written...Waiting to be written... / smoorenburg

このところ本を執筆するお話をいくつか頂いています。書きたいことはブログに書いてしまっているので、あまり新しいネタはないのですが、せっかくなので、いくつかの出版社さんと企画を一緒に考えて頂いています。

私がこのブログで書いていることは、私自身が考えていることで、かつ自分もしくは自分の会社で実践したことを、少し抽象化した内容を書き残すようにしています。特に、実践して抽象化する、ということを大事にしています。そして、このブログを通じて伝えたいのは「新しい価値観」だと考えています。

私がソニックガーデンという会社を経営していく上で、いつも考えているのは、本質を見極めて自分たちの頭で判断する、ということです。これまでの商慣習だからと従うのではなく、それが本当に意味があると思えてから、色々な決断をしています。「納品のない受託開発」もそうやって産まれました。

ときに間違いも失敗もありますが、それでも、本質を考えて実践していくことが大事だと考えているのです。その上で、気付いたことや学んだことを、ブログを通じて伝えていくことを大事にしています。

私たちは何か新しい働きかたをするために会社を経営している訳ではありませんが、結果として、これまでの価値観とは違う働きかたを実現することになっている部分があります。たとえば、小さな会社が良い、という考え方。これも、一般的な会社経営の考え方からすると、おかしいことかもしれません。しかし、私たちは手段として小さな会社を選んでいます。これも、新しい価値観です。

私が本を書くとしたら、私が経験したことで得た、こうした新しい価値観について伝えられる本を書きたいと考えました。そして、いくつかの企画を作成しているところです。

今回の記事では、そのうちの一つの企画案として書いた「はじめに」を掲載します。「小さな会社と幸せな働きかた ~ これからのリーダーに必要な思考と行動のヒント」というタイトルの本の企画だったのですが、残念ながら没になってしまった企画です。

まだ私の知名度?では「幸せ」を語っても読者には響かない、ということで、その点は確かに、上場してる訳でもないですし、テレビにでるような有名人でもないので、まだまだ本は売れる感じはしませんね。なので、このテーマは一旦とりさげました。今はまた、別の切り口の企画を考えているところです。それはまた出すとなったら報告します。

今回の記事で、このテーマ企画の供養として「はじめに」だけ残しておきます。

Poker Chips

はじめに(「小さな会社と幸せな働きかた ~ これからのリーダーに必要な思考と行動のヒント」より)

会社は大きくすべきだという考えかたは正しいことでしょうか?

たとえば、上場しているような大きな会社では右肩上がりの成長目標があり、それを達成するために残業を繰り返し、家族と過ごす時間も減ってしまい、なぜ自分は働いているのかわからなくなる、そんなことは起きていませんか?

たとえば、いずれ上場を目指しているようなベンチャー企業では、大した報酬もないままに、昼も夜も関係なくガムシャラに働き、自分たちが本当にしたかった仕事とは何だったかわからなくなる、そんなことは起きていませんか?

どんな大きな会社も永遠に拡大し続けることはありえませんし、どんなベンチャー企業もすべてが上場できる訳ではありません。そうした会社で働くという価値観もあるでしょうし、それはそれで経済においては大事なことかもしれません。

しかし、私は無理な急拡大や、安易な人員拡大をすることで、そこで働く人が幸せを感じないのであれば、そんな経営に意味はないと考えています。お客さまの役に立って喜んでもらうこと、それと同時に、働く社員が幸せに働けるようにすることが、経営者のするべきことではないでしょうか。お客さまと働く社員の両方の幸せを実現できることが、良い会社であるための条件だと考えています。

働く社員のひとりひとりが、会社の顔として責任と裁量をもって働けること、家族やプライベートの時間も大切にしつつ、自ら取り組む仕事に誇りを持って、ひとりひとりの成長が会社の成長につながるような、そんな会社であれば、規模の拡大や急成長なんてしなくても良いのではないでしょうか。そして、そんな風に生き生きと働く社員がいれば、きっとお客さまへのサービスも良いものになって、喜んでもらえるように思います。

そのために出来ることとして「小さな会社でいる」というのが一つのアイデアです。

急拡大を目指すのではなく、お互いのことをわかりあって、尊敬しあえる仲間たちと共に、楽しく働き、豊かに暮らす。そんな働く人の幸せを実現するための環境として会社があるという考えかたです。英語での「カンパニー(company)」の語源は、「パンを分け合う仲間」ということからきてると言います。目の前のパンを分け合える程度の大きさの会社が理想ではないでしょうか。

私がこの本で伝えたいことは、ただ沢山のものを作ることや、大きな売上をあげることや、多くの社員を雇うことだけが会社の理想の姿なのではなく、もっと働くことそのものを幸せだと感じられるような、そんな会社や働きかた、価値観があるということを知ってもらうことです。そして、それは夢や幻想ではなく、いろいろな工夫をすることで実現することが出来ることなのです。

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私はいま、東京で小さなソフトウェア開発の会社を経営しています。今でこそ経営者をしていますが、もともとはエンジニアでした。学生時代はベンチャー企業でアルバイトをしたり、学生仲間とフリーソフトを開発していたりしていました。卒業後は大手企業に就職し、現場でのエンジニアの仕事から、プロジェクトマネージャや営業にいたるまで様々な仕事を経験させてもらいました。

そして30歳になる頃に、社内向けにシステムを作る仕事を企画から任せてもらいました。自社の社内向けのSNSを開発する仕事です。その社内SNSを一生懸命に開発し、社内に展開した結果、非常に良い評価を得ることができたので、次はそれをオープンソースという形で世の中に出した後、当時の社長に直談判を行って、その社内SNSを使った新規事業に取り組ませてもらうことになりました。

その新規事業はそれまでにない取り組みだったことから、当時その会社には制度が無かったのですが、社内ベンチャーという仕組みを新たに作ってもらい、仲間と共に任せてもらうことになりました。それが私にとって初めて経営する小さな会社でした。

その社内ベンチャーを2年間続けさせてもらい、なんとか収益の見込みがついた時点で、次のステップということで、私と現在の副社長である藤原と二人で、その社内ベンチャーの事業とチームを買い取ることで、独立を果たしました。

それが、私がいま代表を務めている株式会社ソニックガーデンという会社です。

こうしたキャリアの中で、私自身は、大きな組織の中で働く経験と、小さな会社を経営する経験の、両方を体験してきました。大きな組織には大きな組織の良いところは沢山あります。ただ、私の実感になりますが、小さな会社で働く人たちの方が幸せを感じやすいのでないか、と考えるようになりました。

もちろん、小さな会社で働くということは、一人一人の責任は重くなりますし、大変なことでもあります。少ない人数ですから、経営状態が不安定になることもありますし、大きな会社よりもつぶれる可能性も高いでしょう。それでも、お客さまと直接やりとりができることや、一致団結してチャレンジをして成果をあげたら、その成果を全員で共有できることなど、社会とつながっている感覚は強くなりますし、それは働くうえで幸せなことでもあります。

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日本の経済を鑑みても、高度成長の時代はとうの昔に終わりを告げていて、どう考えても、これからの時代は働けば働くだけ豊かになるような時代ではなくなりました。そのことは若い世代になればなるほど実感として感じていることでしょう。そして、日本の人口はどうしても減っていっているのは明らかです。そうした中で、企業はこれからも拡大路線をとることは本当に賢明な選択でしょうか。

一方で、ICTと呼ばれるテクノロジーの発展はますます加速しています。インターネットとソーシャルメディアによって、これまでは大きな会社でしか出来なかったことが徐々になくなりつつあります。大きな会社だからといって安定だということはなく、今からも大企業が成長し続けて、これから就職する人たちが定年退職するまで生き残っているというのは、リアリティがなくなりつつあります。

多少不安定であっても小さな会社に入って、その不安定な状態でも生きていけるスタイルを身につけた方が、よほど将来は安定するのではないでしょうか。

これからの時代を生き抜くには、身動きの取りやすい小さな会社で柔軟に事業を推進していき、ただひたすら売上の拡大を目指すのではなく、どのような市場環境のもとでも継続して利益をあげていけることを目指した方がよさそうです。

巨大な身体で生きる恐竜のような時代は終わりを告げて、これからは、俊敏さと賢明さで生き残る時代になってきました。

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小さな会社を経営していくこと、小さな会社で働くことは、幸せなことも多いけれど、やはり大変なことも多いです。小さな会社で、これまでのような働きかたを続けても生き残ることは出来ません。小さな会社には、小さな会社にあった哲学と働きかたがあります。

そこで本書では、小さな会社やチームで、成果を最大化するための働きかたやチームの作りかたについて、私がソニックガーデンを経営していくなかでの経験から学んだことをもとに紹介しています。ビジョン、リーダーシップ、ワークスタイル、コミュニケーション、ビジネスとマネジメントの5つの観点でまとめました。

本書をきっかけに、たとえ小さくても、働く社員とお客さまの幸せを築けるような会社、それに取り組む人たちがたくさん出てくることになればと願っています。

※この本は今のところ出版の予定はありません。