リモート入社式に見る「オンラインが先」の発想 〜 リモートワークを成功させるシンプルな法則

リモート入社式に見る「オンラインが先」の発想 〜 リモートワークを成功させるシンプルな法則

先日、私たちソニックガーデンでも新入社員を迎える入社式を行った。全社員がリモートワークで全国各地に散らばっているため、必然的に入社式もリモートで行った。

リモートワークが難しいという話の多くは、リモートワーク側をリアルのオマケとして扱うからだと私は考えている。解消するには、リモートワーク側をメインで考えて、リアルが補完関係にあるとすれば良い。

そうして行き着いた一つが「リモート入社式」だ。本稿では、リモート入社式をどのように実現したのか、それを支える「オンラインが先にある」という考え方について書いた。

リモートにはびこる疎外感や寂しさの原因

昨年までも入社式は行ってきたが、オフィスがあった時代はオフィスで、オフィスがなくなってからは自由が丘にあるワークプレイスで執り行ってきた。実のところ、リモート入社式というのは今回が初の試みだった。

以前は、新人のうちはリモートワーク禁止で上京してくるようにしていたし、それでなくても入社式と言えばリアルでやるものだと思い込んでいた。

そのため、地方に住んでいるメンバーたちも入社式を祝うために出席するが、テレビ会議を通じてということになる。それだと遠くから眺めているような感じで、やはり少し寂しく感じるものだ。

これは、リアルの場にテレビ会議で繋いでしまうという、よくあるテレビ会議の失敗にみられる構図だ。その解消方法は、全員がテレビ会議で参加するというものになるが、果たして入社式ではどうすれば良いのか。

リモート入社式を支える技術と構成

そこで逆転の発想だ。入社式そのものを、オンラインの中で執り行って、自由が丘などのリアルで集まる人たちが、その様子を眺めるという構図に切り替えた。

その結果、リアルに集まる場はリモート入社式の様子を眺めるパブリックビューイングの会場になった訳だ。リアルとリモートの主従関係を逆転させたのだ。

自由が丘のワークプレイスは幾つかの部屋に分かれているので、大きなリビングをパブリックビューイングの会場にして、会議室に使っている部屋を中継スタジオにして、新入社員はスタジオからオンラインに参加することにした。

入社式のためのzoom(テレビ会議)の部屋を用意して、地方にいるメンバーは各自で参加し、パブリックビューイング会場にいるメンバーたちは一台で参加する。今回、パブリックビューイング会場は、自由が丘のワークプレイスと、島根から松江城の公園で用意された。

新入社員へのメッセージは、リモートメンバーはzoom経由で、自由が丘にいるメンバーは入社式スタジオにしている部屋に移動して直接に伝える形にして実現できた。

概ね、うまくいったように思う。パブリックビューイング会場では雑談も出来たが、リモート同士は雑談できなかったので、その辺りは今後の反省として改善していきたいところだ。

オンラインが主で、リアルは補完の関係性

今回の発想の転換は、オンラインの方をメイン会場にして、リアルは必要に応じて用意するサテライト会場にしたという点だ。

この発想は、普段からのリモートワークでも有効だ。私たちのように本社オフィスを撤廃してしまったら当然だが、そうでなくても、リモートワークを実践したいとき、リアルな場所ありきでリモートを繋ぐという発想ではうまくいかない。

リアルな場をメインとして考えると、リモート側で働く側は「遠さ」を感じてしまう。物理的な距離だけでなく、コミュニケーションやちょっとしたことの精神的な距離が出来てしまうものだ。

だから、まずはオンラインで繋がることを主に置く。オンラインであれば、場所などの制約に縛られることなく繋がることができる。それで、リアルなオフィスや場所が不要な訳ではない。リアルな場は、オンラインを補完するために使えば良いのだ。

リアルな場所は、オンラインより多くの制約を受ける。人数が増えると入りきらなくなるし、賃貸契約によっては数年で移転せざるを得ない場合もある。雪など天候が荒れれば出社は困難になるし、通勤電車で疲弊するのもリアルな場所を必須にしているからだ。

オンラインでは、そういった問題はない。インターネットがなくなったら困るが、リアルで発生する物理的な障害に比べたら、圧倒的にリスクは低い。まずはオンラインが先にありき、そしてリアルな場は「オプション」の一つとして考えれば良いのだ。

「オンラインを先に考える」という成功法則

オンラインに場所がある感覚は、オンラインゲームに親しむ世代なら問題なく受け入れられる。ゲーム内の場所を指定して、xx時に会おうと言うことがある。もしくは、少し前のインターネット世代なら、チャットやBBSに入り浸っていれば、まるでそこに居場所があるような感覚を持った人もいるだろう。

オンラインで場所があるという感覚は、オフィスでも同じように考えることができる。オンラインにオフィスがあって繋がっていれば、オフィスに行こうが、在宅で働こうが、カフェでノマドしようが関係ない。どのリアルの場もオプションになる。

「オンラインファースト(オンラインを先に考える)」へパラダイムシフトをすることが、リモートワーク成功の法則だ。

リアルなオフィスでやっていたことを、リモートで再現することを考えるのではない。それでは、どこまでいってもリアルの制約を受けることになる。

馬車から自動車への転換が行われた時代に、馬車と同じ構造で作る必要はなく、自動車にあわせたデザインをすることで効率がよく、便利に、安全になったのだ。

リモートだからこその強みを活かすためには、まずはオンラインありきで考える。そうすると、リアルで受けていた制約がなくなり、生産性も働きやすさも別次元のレベルを実現することができるだろう。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

ニュースレター

ブログの更新情報や、ここだけの執筆裏話など、3ヶ月に1度のペースでお届けします。

購読する
書影: 私はロボットではありません
倉貫書房の新刊

私はロボットではありません

長瀬光弘 著

「嫌な未来なら変えればいい」

あなたの毎日にも、きっと繋がる。株式会社ソニックガーデン代表倉貫義人のブログ「Social Change!」のノベライズ化第一弾。

BASEで注文する
ページ上部へ