リモートワーク時代を生き抜くためのセルフマネジメントのスキルと思考法(その2)「着信主義」「ザッソウ」「小口化」

リモートワークを推進する上で欠かせないセルフマネジメント。セルフマネジメントは天性のものではなく、後天的に身につけることのできるスキルであり、思考法です。

第1回の前回は、「時間からスタートする」「タスクばらし」「そもそも思考」という3つについて解説しました。非常に基本的なところですが、だからこそ重要なスキルと思考法です。

逆に考えると、時間を意識せず、タスクは大きいままで、言われたとおりの仕事をしている人はリモートワーク時代を生き抜けません。いや、リモートワーク関係なく、これからの知識労働者の時代に生き残れないでしょう。

第2回ではコミュニケーションのスキルと思考法を中心に解説します。

着信主義でコミュニケーション

リモートワークに限りませんが、仕事を進めていく上で顧客や上司に同僚、協力してくれる関係会社など、様々な人たちとのコミュニケーションは欠かせません。

もし、誰とも対話することなく、誰にも伝える必要のない仕事があるとしたら、それは機械でもできる作業、もしくは個人で完結する趣味です。誰かの役に立つことが仕事だとしたら、少なくとも、その誰かとのコミュニケーションは必須です。

ここでいうコミュニケーションは、口頭で話をするものだけに限らず、テキストコミュニケーションも含みます。特にリモートワークの場合はテキストでのコミュニケーションの量は増えることになるでしょう。

いずれにせよ、コミュニケーションの基本は相手に伝えたいことを伝えることです。そもそも思考で考えると、そのゴールは相手に伝わることです。

コミュニケーションを勘違いして、自分の考えを伝えれば良いと思っていると不幸がおきます。「言ったつもり」「聞いてない」みたいなすれ違いは、ここに原因があります。どれだけ話しても、相手に伝わっていないと意味がありません。

「着信主義」という言葉があります。本来は文書が到着したと思われる時点で伝達されたとする考え方という経理用語ですが、コミュニケーションも同じで、相手に伝わって初めてコミュニケーションできたと言えるのです。

そのためにはコミュニケーションにも工夫が要ります。たとえば、お願いしたいことがあったとして、いきなり依頼事項だけを伝えても、相手からすると唐突だったら伝わりはしません。なぜ、このお願いがあるのか、依頼を遂行することに、どういう意味があるのか、そういったことから話したほうが伝わります。

当たり前のことですが、コミュニケーションは自分ひとりで完結しないのだから、伝える相手の立場に立つことが大事です。大変なように思えますが、訓練次第で身につけることができます。

ちなみに、お喋りが上手だったり社交的に振る舞うこととコミュニケーションは、まったく違います。その点については以下をご覧ください。

ザッソウ:雑談と雑に相談

仕事を進めていく上でコミュニケーションは欠かせませんが、中でも重要なコミュニケーションが「相談」です。

手順通りに手を動かすだけのルーチンワークであればいざしらず、何かしら仕事する当人に考えることが求められるような問題解決の仕事であれば、一人では解決できずに困ってしまうことも起きるでしょう。難しい仕事や抽象度の高い仕事になればなるほど、なおさらです。

そうしたときに一人で悩むのではなく、仕事の依頼主や専門家、同僚など誰かに相談することは仕事の遂行には欠かせません。

このように仕事を進める上での相談の重要性は語るまでもありませんが、実際にするとなると相談とは難しいものです。「どれくらいの困りごとで相談すれば良いのか」「相談する相手は誰が良いのか」「こんな簡単なこと相談してバカだと思われないか」などなど相談を妨げる心理的ハードルは様々あります。

そのハードルを下げる方法の一つが「雑談」です。普段からチームの仲間や、関係する人たちと話をしているかどうか、声をかけあっているかどうかがポイントです。まったく関係性のない人には、やはり相談はしにくいものです。

「雑談など仕事をする上で邪魔なものだ」と考えるのもわかりますが、それはルーチンワークの時代の考え方です。相談することが進捗に有効な仕事であれば、雑談も合わせて大事になってくるのです。雑談と相談をあわせて「ザッソウ」と呼びます。

雑談が苦手という人もいるでしょう。雑談といっても、仕事と関係ない話をしろというわけではありません。ちょっとした会話はすべて雑談です。かしこまったりしないで、短時間でもいいから仕事の話をしてみましょう。それも雑談です。

また、ザッソウには「雑談+相談」の他に「雑に相談する」という意味も込められています。雑に相談とは、しっかり準備せずに、雑なアイデアのまま相談して、ちゃんと着地もしなくても良いような相談のことです。

なるべく「雑に」軽く相談していくことで、コミュニケーションの量は増えます、それは相手とのいわゆる「心理的安全性」を高めることになります。心理的安全性と知的生産性に相関関係があることは報告されています。

それでも難しければ、まずは挨拶を交わすことから、そして、人と関わりあうことに少しでも積極的になってみましょう。

「ザッソウ」に取り組んで心理的安全性の高いチームを作りたいとしたら詳しくはこちらを読んで頂きたいです。

小口化できないか意識する

ザッソウは、言ってみればマメに小さく相談しておくことで、手戻りの無駄を減らしたり、間違ったことが起きる前に意識合わせが出来るということです。

このように「一度に大きくやる」よりも「何度も小さくやる」という方がうまくいくのも、これからの時代の仕事の特徴です。同じものを大量に作るのであれば、一度に処理できる量を増やして一度にやってしまう方が効率的でした。

しかし、知的労働者の仕事は、そうではありません。デザインにせよマーケティングにせよ、企画の仕事も人事の仕事も、毎日同じことを繰り返すわけではなく、何人も同じことをする人がいるわけでもありません。再現性が非常に低いのです。

一度で成果を出すのが難しい試行錯誤が求められる仕事であれば、一発勝負を賭けるのではなく、小さく何度も試したほうが良いでしょう。そうした考えが「小口化」です。どんな仕事や取り組みも「小口化」できないか考えましょう。

人間関係の構築も、何時間もガッツリ一緒に過ごして関係性を築くことも大事ですが、それが年に一度しかないよりも、毎日少しずつでも会話をする方が強固な人間関係を築くことができます。たまにしか会わない人よりも、SNSで頻繁にやりとりしている人の方が身近に感じるのと同じです。

信頼関係の築き方も小口化で考えることができます。たとえば一ヶ月ほどかかる仕事を依頼してから音沙汰がなく、完成したものを渡されるのはありがたいけれど、それで信頼関係を築くことが出来るかというと疑問です。

それよりも、少しずつでも状況を共有して、困ったことも伝えてくれたりする方が信頼関係は築いていけます。信頼関係というのは、よく貯金に例えられますが、一度に預け入れできる量に制限があるのです。

小さくても約束をして、それを守っていくことから始めましょう。約束を何度も守っていくことで信頼関係は築いていけます。リモートワークでは特に信頼関係が大事になると思っているなら、小口化の原則を忘れませんように。

チームや組織全体のマネジメントにも小口化は応用できます。詳しくは以下。

今回はここまで。次回以降で、以下のスキルと思考法を紹介します。

  • オープンマインドでいる
  • 自己認識から自己肯定へ
  • 自分軸を持ち決断を委ねない
  • ふりかえりで改善する
  • 言語化でアウトプットする
  • 自己マスタリーを身につける

第1回はこちら。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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