リモートワーク時代を生き抜くためのセルフマネジメントのスキルと思考法(その1)「時間からスタート」「タスクばらし」「そもそも思考」

リモートワークが非常に注目されるようになって、よく聞かれることの一つが「リモートワークに向く人/向かない人は?」です。

それに対しては「セルフマネジメントが出来る人」と答えています。自宅や場所に関係なく、適切に周囲とコミュニケーションしつつ仕事を進捗させるためには、自分自身に対するマネジメントは欠かせません。

セルフマネジメントは、そもそもリモートワークに限らずとも、オフィスで働いても有益なものです。各自がセルフマネジメントできる人材で構成されたチームなら、必要以上にマネジメントコストがかからず生産性が高くなるのは自明です。

そう言うと「優秀な人しかできないのでは」という話になりがちですが、音楽や数学と同じで先天的な素養はあるかもしれませんが、セルフマネジメントを構成するスキルや思考法は後天的に身につけることができます。

どういったスキルや思考法があるのか考えてみましょう。

※本稿は新卒社員にも役に立つように非常に基本的なところから紹介しています。そのため内容が長くなるので数回に分けて掲載します。

時間からスタートする

日々の仕事をしていく上で、思いついたまま手を付けたり、依頼された順に仕事をしていくとしたら、いっこうに成果はあがらないでしょう。

また、どの仕事に、どの位の時間がかかったのかを把握することができないのなら、より生産性を高めるための改善方法もわかりません。自分の生産性がわからなければ、これから取り掛かる仕事の見通しも立ちません。

仕事と時間は、切っても切り離せない関係にあります。仕事でより成果をあげていきたいならば、自分の時間がどのように使えるのか把握するところから始めましょう。

たとえば、メモ帳などに1日の過ごしていった記録をとっていきます。13時から1時間の会議、企画をまとめて1.5時間など。人間の集中力が持続するのは90分程度ということもあるので、どこかで一息いれるはず。そこで記録を取るのです。

それを続けることで、自分がどういった時間の使い方をしているか知ることができます。無駄な時間や、時間の使い方が下手な部分があれば改善していけます。

そして、次は予定を立てるようにします。週が始まる前に1週間分の予定をシミュレーションし、1日が始まる前には、その日の予定をシミュレーションします。どんな風に時間を使うのか、予定を立てるのです。

ちなみに、注意点しては、予定を立てるからといって、予定をビッチリ埋めるというのは違います。割り込みや、急なチャンスを活かせるように余裕は持ちましょう。

その週や日にこなしたいタスクや目標を決めたら、なんとしても達成できるように頑張ります。1ヶ月や半年、1年といった単位の目標達成は難しくても、1日分ないし1週間分ならできるはずです。その日々の積み重ねが大きな実績になるでしょう。

そして、1日の予定と実績を見比べて自分の時間の使い方を改善していきます。それを続けることで、時間のマネジメントは上達します。

この「時間からスタートする」というのはドラッカーの言葉です。

成果をあげる者は仕事からスタートしない。時間からスタートする。計画からもスタートしない。時間が何にとられているかを明らかにすることからスタートする。

「タスクばらし」から取り掛かる

時間の予定と実績を立てる上で欠かせないのが「タスクばらし」というスキルです。

仕事をしていく上で、大きな塊のまま取り組むと、一体どこまで進んでいるのか、わかりません。30%進んでいるか70%進んでいるといった「進捗率」は、本当の進捗を表してはいませんし、止まっているときに原因が何かわかりません。

実際、どれだけ進捗率が進んでいようと、終わっていなければ成果としてはゼロなのです。もし1週間かかる仕事だとしたら、その1週間の間ずっと進捗ゼロというわけです。しかも、1週間が経って確認してようやく出来たかどうかわかるのです。それでは仕事を依頼した方も心配になるでしょう。

どれだけ仕事に取り掛かっていて、どれだけ仕事が進んでいるのか見えるようにすることは、マネジメントにとって大事なことです。

特にリモートワークの場合は、働きぶりは仕事の進捗でしか見えないので、より重要になります。(本当はコンピュータを使った仕事ならオフィスでも重要なはずですが。)

そこで「タスクばらし」です。ある程度の時間がかかりそうな仕事であれば、その仕事を達成するために必要な作業に分解していきます。仕事をタスクにばらすのです。大きな仕事も小さなタスクに分解すれば、それぞれ終えることができます。

つまり、小さな仕事を一つ一つクリアして「Done!(済み)」としていけば、進捗率のような曖昧なことを言わずとも、どこまで終わっているか明らかになります。大きな仕事のまま取り組んで「進んでいない」とヤキモキすることもありません。仕事とは終わらせて初めて、仕事したと言えるのです。

ポイントは、バラす単位は時間で考えることです。経験者だったら1時間で終わるけれど、初心者なら5時間かかる仕事があるとして、経験者なら1つのタスクで良いけれど、初心者なら3〜5つのタスクにバラしましょう。

詳しいタスクばらしのポイントは以下の記事を参照してください。

そもそも思考で考える

「タスクばらし」をするときに気を付けるのが、「そもそもこの仕事の目的は何か?」ということを頭に入れておくことです。

仕事というのは、何かしら目的を達成するためのものです。目的を達するために様々な取り組みが組み合わさって仕事になります。では、その仕事をタスクばらしする際には、目的が達成出来るかどうかが重要になります。

逆に考えれば、目的さえ達成することができれば、いくつかバラしたタスクのうち、しなくても良いタスクもあるかもしれません。誰かに依頼された仕事であれば、依頼主に目的を確認するところから始めましょう。

そもそも仕事を引き受けるときに、その仕事の目的は何か?ということを確認しておくと良いでしょう。そうでなければ、安易に仕事を引き受けることはできないはずです。

依頼主と一緒に目的を確認していくことで、もしかすると仕事しなくても解決できることもあるかもしれません。そうして問題解決するよりも、問題解消した方が圧倒的な生産性を出したことになります。

「なんかズルい!」と思ったかも知れませんが、目的を達成すること、問題そのものを解消することが仕事の価値なのですから、価値さえ出せばよいのです。いくら汗を流しても、価値を産んでいなければ意味がありません。この発想の転換こそが働き方を変える際の大きなポイントです。

たとえ相手が上司であろうと、顧客であろうと、ただ言われたとおりに仕事をしないことです。一見すると従順である方が喜ばれるかもしれませんが、それで成果が遠のくのだとしたら、本当の役には立っていないということです。

私は、この言われたとおりに仕事することを「受託脳」、そもそもから自分で考えて問題解消を狙うことを「提案脳」と呼んでいます。詳しくは以下を。

今回はここまで。次回以降で、以下のスキルと思考法を紹介します。

  • 着信主義でコミュニケーション
  • ザッソウ:雑談と雑に相談
  • 小口化できないか意識する
  • ふりかえりで改善する
  • 言語化でアウトプットする
  • オープンマインドでいる
  • 自己認識から自己肯定へ
  • 自分軸を持ち決断を委ねない
  • 自己マスタリーを身につける

【追記】第2回はこちら。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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