良い文章を書くこと、そのために文章力を磨くことは、ビジネスパーソンにとって重要な事でしょうか、それとも意味のないことでしょうか。私は文章力を身につけることは、どんな仕事においても最も基礎となる大事なスキルに通じると考えています。
私の考える仕事のできる人は「創造性」「提案力」「論理性」の3つの能力が優れているように思います。そして、この3つの能力は、文章力を磨くことで身につけることができるのではないか、と考えています。
この記事では、ビジネスパーソンにとって、なぜ文章力を磨くことでビジネススキルの基礎が身につくのか、その理由について考えてみました。
目次
文章力で「創造性」を身につける
文章を書くという行為は、ゼロから作品を生み出す行為です。企画書でも提案書でも何かしら文章を書くためには、ただ文字を打てば良いわけではなくて、何を伝えるかを考えて、どう伝えるか構成を考え、それを相手に伝わるように表現するということが必要です。この3つの工程が「創造性」「提案力」「論理性」につながるのです。
文章を書くというのは、世の中にある多くの創作活動の中で、誰もが取り掛かることのできる最もハードルの低いものの一つでしょう。作曲をすることや、絵を描くこと、プログラムを作ることなど、どれもいきなり始めるには難しいものばかりですが、文章を書くのはいつでもどこでも始めることができます。それでいて、ちゃんと創作活動の基本を押さえているのです。
ビジネスの文脈で文章を書くとなれば、自分のためだけに書くことはなく、誰かが読むために書くことになります。読者がいるということは、その読者は誰かということを考えなければなりませんし、その読者に何を伝えるのか、考えなければなりません。ここでクリエイティブさが鍛えられるのです。何かを生み出す能力は、何かを生み出すことでしか身に付けられません。
文章力で「提案力」が伸びる
作業ではなく仕事をうまく進めるためには、その仕事の相手に対して提案をする場面が出てくることが少なくありません。提案とは、相手のことを考えて、相手が喜ぶことと自分ができることを繋げる大事なプロセスです。相手へのせっかくの提案も伝わらなければ意味がありません。コミュニケーション能力が求められるのです。
提案は、思いつきで言ってもうまくいかないでしょう。きちんと相手にとってメリットがあることや、リスクやリターンについての考慮がされているかどうかなど、しっかり考えられていることが求められます。本当に良いアイデアだったら、相手に伝わるように工夫したいものです。そこでも文章力が応用できます。
良い文章を書こうとすると、どう伝えるか考える必要があります。どんな流れで伝えることで相手は理解し、どんな表現をすれば相手は納得してくれるのか、文章を書くということはコミュニケーションの基本なのです。相手に伝えることを意識して文章を書くことで、提案力を伸ばすことができます。
文章力で「論理性」が鍛えられる
私は新卒で上場企業に入ったのですが、上場企業に入って良かったなと思うことの一つは、稟議決裁の仕組みがしっかりしていて、稟議書を書くスキルをとても鍛えられたことです。上場企業の中で新しいことをしたり、会社への提案をしたりするには、ただ現場で語っても実現しません。稟議書を書いて稟議決裁を通す必要があります。
そして、稟議が通るかどうかは、ただ良いアイデアや企画だということだけでは決まりません。その稟議書での説明が、論理的で筋が通っているかどうかも重要な要素になってくるのです。上場企業において稟議を通すには多くの人の納得が必要です。納得するには誰がどう見ても論理的に正しいことが求められるのです。
ビジネスでは、論理的であることはとても重要なことです。そして良い文章は論理的です。相手に理解しやすいように伝えるためには論理性が必要です。文章を書いていくと、自分の主張に矛盾を感じたり、論理的に破綻していたりすることに気づき直していくことも多いですが、それが論理性を鍛えることになるのです。
プログラマならプログラミングしよう
文章力を磨くことで、ビジネスパーソンに必要な「創造性」「提案力」「論理性」の3つの能力を高める訓練になるということを書きました。しかし、プログラマの中には文章を書くことを苦手とする人、好きじゃない人も多いです。しかし、プログラマに文章を書かせてみると、とても良い文章を書いたりすることがあります。
それは、プログラミングという行為も実は「創造性」「提案力」「論理性」を鍛えることに通じているからだと思います。それはそうで、誰かのために何かを作る、という行為は、文章を書くことも、プログラミングすることも同じことだからです。そうであれば、プログラマならば、プログラミングで精進した方が良さそうです。
自分でアプリを考えて、プログラミングして、世の中に出して使ってもらう。それがビジネスになっているかどうかはともかくとして、誰かに使ってもらう意識でプログラムを作ることで、きっと仕事をする上での大事な力が身につくと思います。本当に優れたプログラマは、優れたビジネスパーソンでもあるのです。
エバーノートでも文章力で採用を決める
エバーノートのCEOであるフィル・リービンも、こちらの取材記事の中で、文章力の重要性について語っています。少し引用します。
僕は社員を採用する際に簡単な作文のテストをしています。(略)なぜこんな課題を与えるかというと、作文は書き手の性格がとてもよく理解できるんです。表現力、説明力、意気込みなど、ほんの数段落の短い文章でも、長々と口頭で面接するより、僕の場合、はるかに正確に人物を把握できます。さらに大きいのが、文章を通じてコミュニケーション能力が分かることです。短い文章で、自分の考えを簡潔に相手に伝える。これが仕事の上では非常に大事になんですね。
これはとても同意できます。ソニックガーデンの採用課程でも「作文」があります。とあるテーマについて書いてもらうことで、その文章の内容についても評価の対象となりますし、その書き方や伝え方も、人となりを知ることの助けになります。ソニックガーデンの採用について、以下の2つの記事が参考になると思います。
文章を書くという過程を経験することで、創作活動とは何かということの常識を知ることができます。そのことは仕事でのスキルにきっと活きてくることでしょう。(とはいえ、私のこうしたブログ記事も、長くて読みにくいという意見も聞いたりするので、偉そうに言える立場ではないですね。日々修行です。)