2014年6月12日に、拙著 「納品」をなくせばうまくいくーソフトウェア業界の“常識”を変えるビジネスモデル が発売となりました。
日本実業出版社
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私はこれまで技術者として、そして経営者としてずっと取り組んできたソフトウェア開発の業界を、少しでも良くしたいという思いから、新しいビジネスモデルに取り組んできました。
その取り組みを、今回のような1冊の本にまとめることが出来たことで、より多くの方にソフトウェア開発の世界で起きている問題と、それを解決するためのアイデアの一つとしてのビジネスモデルを知って頂く機会になれば、私にとってもとても嬉しいことです。
本書では、技術的な用語はほとんど使わずに表現することを心がけました。技術者の皆さんだけでなく、経営者やビジネスマンの皆さんにとっても読みやすいものになっていると思います。
ソフトウェアやプログラミングの仕事とは本来は楽しいものであり、そのことをもっと多くの人に知ってもらいたいし、それを実現するためにできる現実的な解決としてのビジネスモデルを提供したい、という思いが、本書を書こうと思った理由です。
私の考えていることは、このブログ”Social Change”でこれまではずっと書き続けてきたのですが、それでもやはり書籍という一貫したテーマを持って、まとまって読める形にすることは意味のあることだと考えました。
そのタイミングでご縁を頂き、日本実業出版社さんから初の単著を出すことが出来ました。編集部の皆さんには大変お世話になりました。とても感謝しております。
なにより、こうして「納品のない受託開発」に関する書籍を出せたのも、その価値を認めてくださったお客さまのご理解とご支援があり、また、現場で実践してくれている株式会社ソニックガーデンのみんなの協力があってこそと、心から感謝しています。本当にありがとうございます。そして、今後ともよろしくお願いします。
多くの読者の皆さまのご支援と応援も頂きまして、Amazonでの予約も多数頂いていたと聞いています。本当にありがとうございます。
これから読者の皆さまとの交流の場として、そして、書籍の動向をお知らせする場として、Facebookページも開設いたしました。Facebookページでは、私もチェック&投稿していきますので、お気軽にご意見・ご質問・ご感想など頂けたら幸いです。
そして、ぜひ応援の気持ちで、このFacebookページに「いいね」して頂けたら嬉しいです。→「納品」をなくせばうまくいく(倉貫義人著 日本実業出版社刊)のページ
最後に、本書の目次と「はじめに」を掲載しておきます。
目次
- 第1章 常識を覆す「納品のない受託開発」とは
- 受託開発なのに「納品」がない?
- 「納品」が引き起こしてきた問題とは
- ソフトウェアはなぜそんなに高いのか?
- 「納品のない受託開発」が問題を解決する
- 弁護士や税理士のような〝顧問〟ビジネスとして
- 第2章 時代が「納品のない受託開発」を求めている
- スタートアップに適したシステム開発とは
- 「納品のない受託開発」で解決できること
- 「納品のない受託開発」の契約
- この世界に「銀の弾丸」は存在しない
- 第3章 顧客から見た「納品のない受託開発」の進め方
- 「何を作るか」よりも「なぜ作るのか」
- 開発と運用が同時並行で進んでいく
- 顧客が分担する作業もある
- 開発と運用を繰り返して改良し続ける
- 第4章 事例に見る「納品のない受託開発」
- まるで〝子育て〟のようなソフトウェア開発 ー【事例 】株式会社AsMama
- 仕様変更に柔軟かつスピーディに対応 ー【事例 】株式会社トライフ
- 第5章 「納品のない受託開発」を 支える技術とマネジメント
- 「完成」から「持続」への変化
- 「納品のない受託開発」を支える技術戦略
- アジャイル開発によるマネジメント
- 人を信頼し、中心におく経営
- 第6章 エンジニアが ナレッジワーカーになる日
- アジャイル開発を実践する新しいビジネスモデル
- エンジニアにとっての幸福な働き方とは
- 優秀なエンジニアを採用するには
- ナレッジワーカーとしてのエンジニアをどうやって育てるか
- 第7章 「納品のない受託開発」をオープン化する
- 「納品のない受託開発」がもたらす未来
- 小さな会社の大きなビジョン
- 「ベストエフォート経営」で社員の幸せを大事にする
- 「納品のない受託開発」を拡大する「のれん分け」と「ギルド」
はじめに
本書は、IT業界の、とりわけソフトウェア開発の業界で〝常識〟とされているビジネスモデルを変えてしまおうという試み──。ソフトウェア業界にはびこる多くの問題を解決するために取り組んだ新しいビジネスモデル「納品のない受託開発」について書いています。「納品のない受託開発」というこの言葉を初めて耳にした人は、たいてい「一体どういうことですか?」と聞き返します。実はそれが私の狙いでもあります。
一般的に受託開発と言えば、顧客からの注文を受けて開発を行い、でき上がった製品を発注先に「納品」することで対価を受け取るビジネスです。この受託開発の〝常識〟からすれば、「納品のない受託開発」という言葉は、ずいぶんと不思議なものに見えるかもしれません。「受託開発」なのに「納品」をしない、なぜそんなことをやっているのか、そして、なぜそんなことが実現できるのか、その秘密について解説したのが本書です。
ソフトウェア業界における受託開発も、最初に何を作るかを決めて、数か月かけて作った後に、できたものを発注した顧客に納品してお金をいただくビジネスです。この業界では「一括請負」と呼ばれています。しかし、ソフトウェアの場合は、最初に何を作るのかを決めることが、実はとても難しいのです。ビルや家なら完成品の絵を描くことも、必要なら模型を作ることもできますが、ソフトウェアの場合はそうはいきません。
しかも、インターネットのサービスを作るとすれば、毎月のように新しい機能が登場し、どんどんとバージョンアップをしていくのが当たり前のようになっています。それなのに、最初に作るものを決めて作ってしまうから、納品の間際になってトラブルが起きるのです。この業界で「デスマーチ」などと呼ばれる、エンジニアにとっての過酷な労働環境は、そうした納品間際でのトラブルに起因していることが多いのでしょう。
こうした問題を何とか解消できないか、一体何が原因なのかを考え尽くしたところ、それはソフトウェアの作り方やテクノロジー、マネジメント手法など、そういった技術的な話ではなく、この業界を支える「一括請負」というビジネスモデルそのものに問題があるとわかったのです。そして、その一括請負のビジネスモデルの中心にある「納品」をなくすことで、すべての問題を解決できるのではないか、と考えました。
この仮説を立証するために、私たちの会社では「納品のない受託開発」というビジネスモデルに取り組み、それを実践してきました。その結果、多くの事例を作ることができました。これまでの「納めて終わり」のソフトウェア開発に不満を抱いていた顧客には、納品がなくずっと開発と運用が続いていくことの価値を評価してもらっています。そして、働くエンジニアたちは、残業も休日出勤もなく、やりがいを持って仕事に取り組むことができています。今のところ、私の仮説は当たっていたようです。
本書では、「納品のない受託開発」の概要やコンセプトから、実際の進め方、裏側で支えるマネジメントや技術について解説しています。ソフトウェアを発注する立場、受注する立場、現場で開発を行うエンジニアの立場、マネジメントや会社を経営する立場、それぞれの立場から読んでいただいて、この業界を変えるかもしれないビジネスモデルについて知ってもらいたいと願っています。また、新しいビジネスモデルを発想するためや、新しいワークスタイルを実践するためのヒントとして、これからの未来を担う起業家や経営者の方にも役立つ内容になっていると思います。
ソフトウェア業界の〝常識〟を変えるビジネスモデル「納品のない受託開発」で、新しい世界に踏み出しましょう。本書がその一助になれば幸いです。
2014年5月 著者
日本実業出版社
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