ソニックガーデン企業理念のアップデート

私たちソニックガーデンは、このたび企業理念のアップデートを行いました。時代の変化や会社の成長に合わせて、私たちの目指す方向性をより明確に表現するため、ミッション、ビジョン、パーパスを見直し、新たな形で定義しました。(公式情報はこちら)

  • ミッション(顧客)「一緒に悩んで、いいものつくる。」
  • ビジョン(仲間)「いいコードと、生きていく。」
  • パーパス(社会)「いいソフトウェアをつくる。」

今回のアップデートは、単なる言葉の変更ではなく、私たちの事業の本質や、社会に対する貢献の在り方を深く考え直す機会となりました。新しい企業理念は、社員一人ひとりの想いや、お客様との対話を通じて生まれたものです。

本稿では、この企業理念アップデートの背景や過程、そして新しい理念の詳細についてご紹介します。

取り組んだきっかけと意図

企業理念の見直しを考えたきっかけは、会社の成長と共に組織が変化したことでした。

創業から10年以上が経ち、徒弟制度を導入して若いプログラマが増え、社員数も50名を超える規模になりました。また、主事業である「納品のない受託開発」に加え、kintone連携の「じぶんシリーズ」や仮想オフィスの「Remotty」、さらには「倉貫書房」といった出版事業にまで取り組むようになり、事業内容が多様化しました。良い意味での多様性が広がる一方、何の会社なのかがわかりにくくなってきたのです。

このまま手当たり次第に事業を広げることも一つの選択肢ですが、そうすると「何でもあり」になり、逆に「何でもない」会社になってしまうリスクも感じていました。創業以来掲げてきた「プログラマを一生の仕事に」という理念や、「納品のない受託開発」という事業に共感して集まったプログラマたちと、これからも長く働き続けたい。そのために、今一度、自分たちの原点を見つめ直し、どうありたいかを考える必要があると感じました。

そんな時に、株式会社PARKの田村さんとの出会いがあり、彼のコピーライティングへの真摯な姿勢に、私たちのプログラミングへの取り組み方と共通するものを感じました。そこから、田村さんと一緒に企業理念の言語化とアップデートに取り組むことが決まりました。

私個人としては、ソニックガーデンという会社が、倉貫を中心とする小さな組織から脱却し、自立したアイデンティティを持つことを目指したいと考えました。組織が大きくなるにつれ、私が全社員と直接繋がるのは難しくなり、これからはソニックガーデンそのものが中心となって進んでいくべきだと思っています。すでに、若い世代が入社する理由は「ソニックガーデン」という会社そのものになりつつあります。彼らにも「自分たちの会社」と感じてもらい、共に理想を描いていきたいと思っています。

この理念のアップデートプロセスは、単なるトップダウンの決定ではなく、全社員を巻き込んだ取り組みとなりました。社内でのワークショップや議論を通じて、私たちが大切にしている価値観や将来のビジョンについて活発な意見交換が行われました。この過程を経て、自社の強みや独自性を再確認し、それを新しい理念に反映させることができました。また、社員一人ひとりが自分の言葉で会社の方向性を語れるようになったことも、大きな成果です。

新しい企業理念の具体的な内容については、以下で詳しく説明していきます。まず、私たちのミッション(使命)から見ていきましょう。

一緒に悩んで、いいものつくる。

私たちのミッションは「一緒に悩んで、いいものをつくる」ことです。これは正確にはミッションというよりも、私たちが大切にしているお客さまへの思いを言葉にしたものです。この考え方は、私たちが「納品のない受託開発」というビジネスモデルを通じて実現したかった理想の形そのものです。

もともとは、アジャイル開発を特別に意識せずとも、自然とその形でプロジェクトに取り組めるようにしたいと考えていました。私が思い描くアジャイル開発は、ソフトウェア開発を分業化せず、考えることと作ることを一体化するアプローチです。私たちは、単なる受発注の関係を超え、お客さまと一緒にソフトウェアを作り上げていく姿勢を望んでいます。

その実現を妨げるのが、「納品」を前提とした従来の契約形態でした。だからこそ、私たちは納品をなくしたビジネスモデル「納品のない受託開発」を作り上げました。

では、「一緒にソフトウェアを作る」とは、どういうことなのでしょうか。それは、解決すべき問題や生み出したい価値について、お客さまとともに考えることです。まだ作るものが決まっていない段階から、私たちは一緒に悩み、考えることを大切にしています。

特に経営者や事業責任者にとってもっとも悩ましいのは、抱えている問題や求める価値が明確ではない状況です。もしそれがはっきりしていれば、解決するのは比較的容易です。しかし、多くの場合、その前段階で正解が見えないからこそ悩み、困難が生じるのです。

私たちは、こうした悩みの段階から一緒に取り組むことで、本当に価値あるソフトウェアを作り出せると信じています。つまり、私たちの仕事は「問題 vs 私たち」という構図で、問題を見つける段階からお客様と共に歩むことなのです。プログラマーとして「いいものをつくる」ことは当然ですが、その前から深く関わることにこそ、私たちの価値があります。

私たちは、「一緒に悩んで、いいものをつくる」という姿勢を貫き、常にその思いを持って仕事に取り組んでいます。

いいコードと、生きていく。

私たちのビジョンは「いいコードと、生きていく」としました。ビジョンを描くとき、私たちはまず、実現したい社会の姿の前に、自分たちがどうありたいかを思い浮かべました。なぜなら、私たちはゴールを達成するために集まった事業体である前に、ビジョンに共感したプログラマたちのコミュニティであると考えているからです。

そのため、何をするかも重要ですが、誰と一緒に働くかをもっと大事に考えています。だからこそ、私たちは「どうありたいか」「どんな人たちと働きたいか」を真剣に考えました。

これまで「プログラマを一生の仕事に」という言葉を使ってきた通り、プログラミングこそが私たちの中心にある活動です。プログラミングとは、ただコードを書くことではなく、ソフトウェアを実現するためのあらゆる行為を指します。

それでも最終的には、すべてがソースコードとして実装されます。ミッションである「一緒に悩んで、いいものつくる」を果たすために、ヒアリングや提案の能力も求められますが、結局はコードを書く力が不可欠です。

その上で、私たちは常に「いいコード」を追求しています。「納品のない受託開発」というビジネスモデルで実現したかったもう一つの側面は、いいコードがビジネス的な価値となることです。納品がないからこそ、品質をトレードオフの対象にすることなく、自身の作品として関わり続けられます。存分に、いいコードを書けるのです。

「いいコード」には具体的な正解はありません。時代や技術にあわせて、常に変わっていくものです。だからこそ、より良いコードを探究していく人たちでありたいのです。

私たちが何より大切にしているのは、プログラマが自分の仕事=つくったコードに誇りを持てることです。これが私たちの文化の基盤であり、「いいコードと、生きていく」というビジョンを共有する仲間たちと、共に成長していきたいと考えています。

いいソフトウェアをつくる。

「一緒に悩んで、いいものをつくる」が私たちのお客さまに対する思いであり、「いいコードと、生きていく」が仲間に向けた思いならば、それらをつなぐものは何でしょうか?

私たちソニックガーデンが事業を通じて経済活動に参加し、コミュニティのような組織として成り立つとき、私たちの存在意義は何か。それは「いいソフトウェアをつくる」ことに集約されると考えました。

今やソフトウェアは、あらゆる活動に欠かせないものとなり、一人ひとりがスマートフォンを持ち、企業がデジタルを前提にビジネスを構築する時代です。社会を良くするための活動や新しい価値を創造するためには、ソフトウェアが不可欠です。しかし、それを誰もが簡単に作れるわけではありません。特に難しい課題に挑み、新たな価値を生み出そうとする時、ソフトウェアを作るプロフェッショナルの力が求められます。

私たちは、いいソフトウェアをつくることで、そうした社会を良くしたいと考える人々を支え、そのビジョンの実現を手助けしていきたいのです。私たちだけで社会を変えることはできませんが、いいソフトウェアをつくることを通じてならば、より良い社会の実現に貢献できると信じています。

これまでソニックガーデンが取り組んできたことの核には、常に「いいソフトウェアをつくる」ことがありました。これからも、その姿勢は変わりません。取り組み方は変化するかもしれませんが、私たちの軸はブレることはないでしょう。

改めて、ソフトウェアとは何でしょうか? ソフトウェアは単なるプログラムではなく、使う人、考える人、つくる人が一体となった生態系のようなもので、完成という概念はありません。さらに広く捉えれば、会社や組織、そして人の思考さえもソフトウェアのようなものです。

だからこそ、「いいソフトウェアをつくる」ために、私たちは良い会社、良い組織をつくり、良い人たちが集まる場を築いていきたいと考えています。

新しいロゴ

そして、これを機にロゴデザインのリニューアルも行いました。

創業当時から使っていたロゴは、長く使ってきたので愛着もあったのですが、そもそもが私がロゴメーカーみたいなサービスを利用して作ったものだったので、思い切って刷新することにしました。

ロゴのモチーフは、プログラマがもっとも見慣れたキャレット(カーソル)です。そこに、変化をしめすグラデーションをあしらっています。

謝辞

今回の企業理念のアップデートにあたっては、株式会社PARKの皆さんに多大なご協力をいただきました。特に、代表の田村さんには、私たちの思いや背景にある哲学をじっくりと紐解いていただき、根気強くお付き合いいただいたことに心から感謝しています。

このプロセスには1年半以上を要しましたが、私にとっては、その探究の旅そのものが大きな価値を持っていたと感じています。いただいた問いを通じて私自身の内省が深まり、それをもとに言葉を磨いていく作業は、まさに「一緒に悩んで、いいものつくる」という姿勢を体現したものでした。

今、私が強く感じているのは、企業理念もソニックガーデンという「ソフトウェア」の一部であるなら、アップデートに終わりはないのではないか、ということです。今回、公式サイトで発表した言葉は、現時点での最善のスナップショットであり、今この瞬間から、また新たな変化が始まっているのだと思います。

そのため、これからも早速アップデートを続けていきたいと考えています。この旅はまだ終わりません。これからも、どうぞよろしくお願いします。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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