書評:ドラゴンフライエフェクト〜ソーシャルメディアで世界を変える

書評:ドラゴンフライエフェクト〜ソーシャルメディアで世界を変える

本書を知ったのはまさしくソーシャルメディアの力でした。Facebook上で、Twitter上で、私の友人たちが続けて購読しているのを横で見ているうちに、読みたくなって買ってしまいました。本の最初の推薦文では、モチベーション3.0のダニエル・ピンクや、FacebookのCOOシェリル・サンドバーグ、先日書評を書いた「新しい働きかたが出来る人の時代」のセス・ゴーディン、ジェフリー・ムーアなど、著名な方々による言葉があり、読む前から期待させてくれます。

ソーシャルメディアをツールでなく人で解説した本

本書は、ソーシャルメディアを題材にしていますが、テクノロジーの本ではありません。ましてや、巷にあふれるFacebook/Twitterの操作本でもありません。本書では、ソーシャルメディアを活用する「人」とその人が起こしたムーブメントにフォーカスを当てた本です。そして、ソーシャルメディアにおける本当の主役はツールではなく、それを使う人々であるため、とてもまっとうなソーシャルメディアの解説本と言えます。

本書のタイトルになっている「ドラゴンフライ エフェクト」とは、「焦点(Focus)」「注目(Grab Attention)」「魅了(Engage)」「行動(Take Action)」の4つのスキルを上手に活用することで、成し遂げたい目標のためにソーシャルメディアの力を活かすことのできる手法のことです。それらの原則とスキルはあたかも、蜻蛉(ドラゴンフライ)の4つの羽に喩えられ、うまく調和させることで、ソーシャルメディアにおける自分の意思を大きな波紋にすることが出来ると主張しています。本書では、そのソーシャルメディアで起こった波及効果について、様々な事例を交えて説明しています。

ソーシャルメディア活用をデザイン思考で解説

また本書の特徴は、デザイン思考を活用して手法の解説をしています。前述の4つのスキルには原則という形でまとめられています。原則の名前だけ抜粋して紹介します。

・焦点(Focus):焦点を絞るためのデザイン原則
1)人間的(Humanistic)
2)実行可能(Actionable)
3)検証可能(Testable)
4)明確(Clarity)
5)幸福(Happiness)

・注目(Grab Attention):注意を引くためのデザイン原則
1)私的に
2)驚きのあることを言う
3)メッセージを視覚化する
4)感覚に訴える

・魅了(Engage):魅了するためのデザイン原則
1)ストーリー(物語)を語る
2)共感する
3)信頼を得る
4)メディアを組み合わせる

・行動(Take Action):行動を起こさせるためのデザイン原則
1)簡単にする
2)楽しくする
3)相手に合わせる
4)オープンにする

キーワードだけですが、ソーシャルメディアを活用するにあたって重要であると感じられるものが並んでいるのがわかります。ソーシャルメディアならではのマーケティング術を身につけることができると思います。ソーシャルメディアのなかった時代のマーケティングから、ソーシャルメディアを活用するマーケティングに時代が移るとして、本書を読むことで、ソーシャルメディアを活用する上で重要なことは、ひとりの人間の人間性や意思の力だと再認識させてくれます。これまでよりも、よりコンテンツを発信している「人」の顔を前面に出すことで、興味・関心・共感を得ていくことが出来ます。

ストーリーの力

私が特に勉強になったと思うのは、「魅了」の原則1の「ストーリーを語る」でした。ユーザへの情報提供は、きれいに整理された情報や、きれいにライティングされた文章があることの方が大事だと思っていたところがありましたが、それも大事かもしれませんが、それよりも物語として相手に伝えることの方が記憶に残りやすいし、興味をもってもらいやすい。確かに、営業マンがパンフレットを持って説明に来るより、創業者が何故その事業を始めたのかを知れた方が、購買につながりそうに思えます。

本書を通じて、ソーシャルメディアの活用方法を学ぶことが出来ますが、そこに書かれたストーリーとしての事例を読んでいくことで、世界を良くしようと働きかけた人たちの思いに触れることで、幸せとは何かを考え直すきっかけも得ることが出来るでしょう。自分の死に直面しながら、世界を良くするために動き、そこにソーシャルメディアがあったことで、何倍にも大きな波を起こした人たちのストーリーは、読んでいて胸にこみ上げるものがありました。

世界をよりよくする

ソーシャルメディアで世界が良くなる訳ではないけれど、人の意思が思いのほか速く広まるようになったのは事実。ソーシャルメディアのプラットフォームは今後変わるかもしれないけど、それを活用できるように人は進化していくのでしょうね。世界はフラットにシンプルになりつつあり、権威や財産を持たなくても人々の協力を得られるようになってきている息吹を感じることができました。

本書を読んだあとは、自分でも何か行動したいと思うようになると思います。そこで必要なのは目標、それも「意義ある目標」です。なにかを為そうとするときに、これまでよりも早く大きく波及効果をもたらすことができるようになったとはいえ、為すべきことがなければ始まりません。実はそれを見つけることが一番難しいのかもしれませんが、それも実はソーシャルメディアで誰かの活動や思想を見てヒントを得られるかもしれません。

私の会社であるSonicGardenもFacebookにファンページがあります。SonicGardenのビジョンは、ウェブサイトに掲載していますが、私たちの思いに賛同してくれファンページでLikeを押してくれた皆さんとは、メンバーのページに並べて表示するようにしました。まずは行動ということで、ぜひ「Like!」をお願いします!

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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