Facebookで友人が読んだ本ということで知った本。読んでみたところ、とても面白い本でした。こういう自分では見つけられない本に出会うことができるのがソーシャルメディアの良いところですね。

とても面白いと書いたけれど、この本を読んで面白いと感じるのは、時代の変化に気付いている人に違いない。そして、そういう人たちは既に本書で書かれている「アーティスト」として活動をしている人たちなのだろうと思う。こういう本の難しいところは、すでに理解しつつある人にとっては当たり前のことを明文化してくれただけとも言えるし、まだ気付いてない人にとっては新しすぎて理解しきれない、というジレンマがありますが、本書はどちらの人にとっても役に立つ本になっているように思います。

本書では、世界の市場やビジネスに変化が起きつつあり、それに伴って人々は働きかたを変えていかねばならず、そこで成功するにはこれまでとは異なる「アーティストのように、才能を全開にして働くこと」が出来る人にならなければならない、ということを語っています。

農業社会から工業社会に変わった際に、市場からは大量生産が求められ、人は独創性や自主性よりも従順な労働力を提供することが求められてきました。しかし、一部の国や市場では、工業社会から次の知識社会に産業革命が起きつつあります。人は大量に作られたものではなく、自分の感性に響くものを買うようになり、個人と個人がTwitterやFacebookを通じて知り合うことで「人を中心としたビジネス」の可能性が大きく広がりつつあります。そこで働くには、従順なだけでは生き残れません。そんな新しい時代をどうサバイブしていくかを本書で知ることができます。

目次からいくつか抜粋。

  • 「モノが中心の時代」の終焉、そして「第三の世代」へ・・・(第1章)
  • あなたの価値は「どれだけ個性ある能力を発揮したか」で決まる(p.35)
  • 「替えの利かない人間」になれる人・なれない人の分かれ道(p.40)
  • 「知識に頼る人」が危機的な状況に(p.76)
  • 人の心に「感動を呼ぶ」仕事が最大の評価を得る(3章)
  • 「何かを与えられる人」だけが生き残る時代(5章)
  • トップダウンではもはや変化は起こせない(p.204)

ここからは私の意見ですが、工業社会が誕生したからといって農業がなくなった訳ではなく、従事する人たちの数が変わっただけで共存しています。同様に、知識社会が到来したからといって、工業がなくなることはないでしょう。工場は必要だし、そこで働く人たちも必要です。工業社会での働きかたは変わらないでしょう。しかし、知識産業が広まってきた際に、それまでと同じように働くというのは、ナレッジワーカーにとって窮屈になってくるのは間違いありません。

ナレッジワーカーにとって働くとは一体何か、本当に価値を産む仕事は何かを、企業は考えなければ生き残ってはいけないでしょう。ナレッジワーカーにとって会社にいる時間だけが仕事なのでしょうか。そうではないはずです。アイデアは考えるものではなく閃くものです。いつでも仕事だし、いつでも仕事ではないのです。そして、働く場所も同様です。ノマドと呼ばれる働きかたが広まりつつあるのは、ナレッジワーカーにとって場所は制約以上の何者でもないからでしょう。

私はナレッジワーカーが働く企業に、大企業は不要だと思っています。本書の中でも語られていますが、ダンバー数と呼ばれる組織として人間の認識できる人数の限界である150名を超えるような大規模な企業は必要ないのです。大企業は、たくさんの労働者を雇います。労働者の仕事を取り替えの利く仕事だと考えているならば、たくさんの人数を抱えていることは意味があるでしょう。しかし、ナレッジワーカーに換えは利かないのです。属人性は排除するものでなく、属人性こそが大事なのです。そうであれば、たくさんの人数は不要です。

ブルーカラー、ホワイトカラーと働きかたを分ける表現があります。ナレッジワーカーは、ただの事務仕事ではありません。デスクワークをしていればナレッジワーカーという訳ではありません。ナレッジワーカーは、新しい価値を生み出し、その人でしか出来ないことを、自分の才能と人とのつながりで実現していく人のことです。マニュアル化することができないのがナレッジワーカーの仕事です。私に言わせれば、プログラマは立派なナレッジワーカーです。プログラマのことを、ナレッジワーカーとして扱えない企業はなくなってもらいたい。

本書には、ナレッジワーカーとして働くにはどうすれば良いか、そして、ナレッジワーカーを企業側はどう扱えば良いのか、が書かれています。自分がどちらの立場であるかによって、読んだときの印象は変わるでしょう。今、企業の中で働いているけれども、時間や場所に縛られることに窮屈に感じている人、ソーシャルメディアでのつながりがビジネスになりそうなのに踏み出せない人などは、本書を読むことで、自分たちが間違っていないという実感を持つことが出来るはずです。

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