新規顧客の獲得より既存顧客を大事にするマーケティングでチームは強くなる

新規顧客の獲得より既存顧客を大事にするマーケティングでチームは強くなる

前回の記事では、私たちが「納品のない受託開発」で、お問い合わせからの新規顧客を獲得するためのマーケティングについて書きました。

しかし新規顧客の獲得は、実はそれほど重視していません。私たちが本当に大事にしているのは既存顧客との関係です。この記事では、新規顧客の獲得より既存顧客を大事にするマーケティングの本質について書きました。

新規顧客の獲得より既存顧客を大事にする

多くの企業において、マーケティングとは新規顧客の獲得をすることだと考えがちですが、私たちは既存顧客と向き合うことこそがマーケティングだと考えるように発想を逆転させました。

私たちが急拡大をしないのは、既存のお客さまへのサービス品質を落とさないためだというのは、前回の記事で書きましたが、ただ品質を落とさないだけでなく、常にサービスの改善に取り組んでいます。

たとえば、こちらの記事でも紹介したプログラマへのデザイン教育をする「デザインメンター制度」も、どうすればよりお客さまに喜んで頂けるかという観点から取り組んだ施策です。

契約頂いているお客様には常に満足して頂くために努力することで、現在の契約を継続してもらえれば、それだけで給料を出せて会社を続けていくことができます。

そして、ご満足して頂いたお客さまからは、別のお客さまを紹介してもらえることも多数あります。素敵なお客さまが紹介してくれる方は、素敵な方ばかりです。

お客さまから新しいお客さまを紹介してもらえることに、心から感謝しています。マーケティングと難しく考えずとも、目の前のお客さまにどれだけ信頼してもらえるかどうかに注力すべきだと考えています。

そのため、新規顧客の獲得にコストをかけるよりも、既存顧客へのサービス拡充に投資をしたほうが、長期的に見たらより多くのお客さまにご相談頂けるようになります。

プログラマこそが最高の営業担当者である

「納品のない受託開発」では、税理士のような月額定額の顧問形式のビジネスのため、毎月お客さまに満足して頂くことで契約は継続していきます。

しかも基本的には、ずっとパートナーとして担当させて頂くので、お客さまとの契約が長く続けられさえすれば、無理に新規顧客を開拓する必要はないのです。

よく言われますが、このビジネスモデルでは人を増やしていくことでしか拡大はできませんし、月額定額なので大儲けもできません。しかし、私たちはそれで良いと考えているのです。

私たちが大事にしている価値観は、ゆとりのある人間らしい生活の中で、楽しい仲間と好きなソフトウェア開発の仕事を続けていけることです。そのために、お客さまのために一生懸命に働いて、それがお客さまの喜びにつながって、自分たちの生活の糧になっていく。それはとても自然な形に思えます。

そこまでの循環を実現しているのが「納品のない受託開発」のビジネスモデルです

お客さまに満足してもらえれば翌月も仕事が続くと考えると、前回の記事では私たちに営業担当はいないと書きましたが、実はプログラマこそが営業担当なのかもしれません。

顧客満足度をあげる活動そのものが営業につながるなんて、とても幸せなことだと思います。

お客さまのためなら作らない提案さえ出来る

「納品のない受託開発」で私たちが担っているのは、言われたものを作ることではありません。それではお客さまに満足して頂くことはできないし、ビジネスの成長を支援していることにはなりません。お客さまの立場に立って提案していく姿勢が求められています。

もしお客さまにとってベストな解であれば、プログラムを作らないで、そのコストを別のことに使う提案さえします。その「作らない提案」こそがお客さまに選んで頂いている理由の一つです。

従来の受託開発におけるビジネスでは、開発会社はソフトウェアを作らなければ儲けることはできません。そうなると、なるべく沢山の機能を作ろうという提案に思考が働いてしまいます。

しかし、お客さまの本当のニーズは、ソフトウェアの機能を沢山つくることではありません。少ないコストで最大の効果を発揮できるのであれば、機能の数など関係なかったはずです。

「納品のない受託開発」では、作らない提案をして高い費用対効果を実現できれば、お客さまはビジネスを続けられるし、私たちも契約が続くことになり、双方が嬉しいことなのです。

「納品のない受託開発」で担当するプログラマは、作らない提案はもちろんのこと、お客さまのためなら何をやっても構わないとしています。そのことはプロフェッショナルな関係として、お互いにとって理想的です。

お客様と社員が直接触れ合う機会をつくる

マーケティングの本質とは、お客さまに向き合って絆を深めていくことだと考えていて、そのために私たちは様々な取り組みをしています。その一つが『「納品のない受託開発」新春感謝祭2015』です。

今回は「納品のない受託開発」のお客さまをオフィスにご招待して、プログラマたちがホスト役となっておもてなしをしつつ、お客さまには自社のプレゼンをして頂きました。こちらがそのときの様子です。

これまで「納品のない受託開発」のお客さま同士の交流はなかったのですが、お客さまの多くはスタートアップで熱い思いを持った人たちばかりなので、繋がるときっと面白い化学反応が起こると考えました。

また、お客さまには担当を中心にチームで対応させて頂いているので、その支援しているメンバーも知って頂きたかったし、プログラマにもお客さまのことを知ってもらいたかったのです。

私たちにはマーケティング専任のスタッフはいないので、社員全員でおもてなしをさせてもらいました。手作り感いっぱいでしたが、お客さまと知り合うきっかけになって良かったです。

直接お客さまと知り合うことで、より一層助けてあげたいという気持ちも生まれ、お客さまにとってもチームでサポートしていることを知ってもらえば、より安心してもらえるのではないでしょうか。

『GIANT KILLING』に学ぶマーケティング

私の好きな漫画に『GIANT KILLING』という作品があります。これは、クラブチームを率いるサッカーの監督が主人公の話なのですが、その10巻に印象的なシーンがあります。

クラブの選手もフロントもサポーターも、関係者みんなを集めてカレーパーティーをするシーンで、垣根を越えて一体となるのが、本当に強いクラブになれる、というエピソードです。

皆が一緒になってカレーを食べているところは、私の好きなシーンの一つです。そこで、主人公の監督がこう語っているのです。

ピッチに立ってプレーするのは11人
でもそれだけじゃリーグ戦の長丁場は戦えない
ベンチ、フロント、サポーター、クラブに係わる沢山の人・・・
そのすべてが同じ方向を向いて 同じ気持ちで戦うんだ
それが出来りゃETUは もっともっと強くなる

これは、私たちが目指している姿と同じです。『「納品のない受託開発」新春感謝祭2015』でやりたかったのはこれだったのです。

そして、そのエピソードには続きがあって、カレーパーティーに積極的だった選手が次の試合でスタメンになるのです。実は社内行事への積極的な参加は、思いの強い社員かどうかのバロメータになるのかもしれませんね。

まとめ:お客様を本当に大切にするマーケティング

ドラッカー曰く「マーケティングとは社員全員の活動である」ということですが、私たちはお客さまを担当して満足してもらうための仕事をするプログラマの全員がマーケティングしていると言えます。それがマーケティングの本質です。

「マーケティング」や「ブランディング」という言葉になった瞬間に、いろいろな本質がこぼれ落ちてしまい、手法や手順ばかりが注目されがちです。

その活動を通じて一体なにをしたかったのか、そこを忘れてしまうと本当に大事にしたかったものを失ってしまいます。私たちが本当に大事にしたいのは、お客さまからの信頼です。

お客さまから信頼を得ることこそが、次の仕事につながっていくのです。より多くのお客さまから得た信頼こそがブランドと呼べるものになるのでしょう。そして、それは一朝一夕では作れません。

お客さまとの繋がりや信頼は、財務諸表には載らないけれど、立派な財産です。

既存のお客さまを本当に大事にし続けたら、一気にスケールすることはできなくなります。しかし、スケールすることを諦めさえすれば、お客さまを大事にできるということでもあります。

マニュアル化されたチェーン店よりも、常連客を大事にしてくれる小さなお店の方が、自分が客で行くなら嬉しいですよね。だったら自分の会社もそんなお客さまにとって嬉しいお店を目指せば良いとは思いませんか。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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