準備なし、宿題なし、購入なし、手ぶらでOKの読書会「アクティブ・ブック・ダイアローグ®」

読書会といえば、本好きな人たちが集まって自分の好きな本を紹介したり、何回かに渡って全員で少しずつ読み込んでいく、そんなイメージがあると思います。それはそれで楽しいし、チームビルディングの手段としても良い。

とはいえ、ちょっと大変なイメージもありますね。各自で読んでくるスタイルだと予習する時間が取れなかったりして、だんだん参加できなくなったり・・・

だから読書会って参加するのはハードルが高いな、と少し思ってました。今回の記事で紹介する「アクティブ・ブック・ダイアローグ®」(長いので以下ABD)も同じかなと思っていたんですが、一度体験してみて印象が変わったのです。

本稿では、ABDについての簡単な紹介と私が実際に体験して感じたことを考察してみます。本を読むのは好きだけど、なかなか分厚い本は手が出なかったり、買ったものの積ん読になってしまう、そんな人にこそABD読書会はぴったりです。

「アクティブ・ブック・ダイアローグ®(ABD)」とは

ABDは、1冊の本を分割して全員で分担して読み込んで共有するというスタイルの読書会です。だから、事前に読んでくる必要もなく、当日の読書会に参加するだけという気軽さが特徴です。大きく3つのパートで構成されます。

・担当した本の一部を読み込んで、要約して紙にまとめる
・壁に貼り出して、本の流れに沿って順にプレゼンする
・本全体について、気になったところや感想や意見を交わす

「前後がわからずに読めるものなの?」って思いそうですが、案外、読めるもので、プレゼンを順番にやって聞いていくうちに自分のパートに書かれていたことを理解できるようになってきます。

ABDのメソッドは、削ぎ落として伝えるという紙芝居プレゼンのKP法と、長い文章を分割して学んだものを後からあわせるジグソー法というものの組み合わせになっています。

さらに詳しい情報は、ABDの本家のページで。こちら → http://www.abd-abd.com/

ABDとゲラ無償提供のムーブメント

ABDは「ティール組織」の読書会で注目されるようになりました。たしかに、あの分厚い本を一人で読むのは挫けます。「ティール組織」を読みたい!という人にとっては、ABDの形式はとても相性がよかったのです。

また「ティール組織」ではABDをする際に、ゲラの無償提供を行うことにしています。ABDをする際に、問題となるのは本の分割の部分で、実際に裁断をして配ったりしています。しかし、さすがに忍びないですよね。

そこでABD読書会にむけてゲラの無償提供をすることをしたんですね。それも読書会の開催を後押ししたのだと思います。

今のところ、ゲラの無償提供をしているのは「ティール組織」に続き、自由すぎるサラリーマンで有名な仲山さんの「組織にいながら、自由に働く。」そして、拙著「管理ゼロで成果はあがる」になっています。これからもムーブメントは続くかもしれません。

以下が各出版社のページです。
ティール組織
組織にいながら、自由に働く
管理ゼロで成果はあがる

ABDで準備する物と場所と人と時間(運営者向け)

ABD読書会は、だいたい10人〜15人くらいでやるのが良さそうです。あまり多くなるとファシリテーションの難易度があがってしまいます。おしゃべりもしにくくなりますね。人数にあわせて工夫してください。

全体の時間は2時間〜4時間くらいです。ABD経験者でやる場合は前段の説明や練習を省けるので2時間でいけると思いますが、もう少し余裕を見た方が良いでしょう。

参考までに「組織にいながら、自由に働く。」全246ページで、16人くらい参加者のABDに参加したときは、2時間だときつく2時間半あるとちょうど良いくらいでした。その人数だと一人当たりのページ分量は14〜16ページになります。

参加者の方は手ぶらでOKですが、運営側は準備が必要です。運営側で準備するものは以下のものです。
・B5用紙(6枚を人数分)
・マーカー(人数分ちょっと多めに)
・マスキングテープ(紙を壁に貼り出すために使う)
・そこで読む本を1冊(裁断用、ゲラがあればそれで)

開催する場所としては、プレゼン用の紙を貼り出せる壁のあるところが必須です。一人5枚を縦に人数分を横に並べて貼り出すことのできる大きさの壁がいります。もしかしたら、これが一番のハードルかも。

運営側には、ABDファシリテーターが1〜2名が必要です。ABDの進め方を説明して、その会がスムースに進行することを手助けします。公式の認定ABDファシリテーターもいますが、別に資格がなくても構いません。

場所などの費用も必要ですし、ファシリテーターの手間への感謝も込めて、読書会の参加費は有料にした方が良いと思います。目安としては1000円〜3000円といったところでしょうか。なにより有料にした方が本気度が違ってきますから楽しくなります。本気で遊ぶと楽しいですからね。(書籍より高いと著者としては複雑ですが笑)

ABDの進め方のサンプル

ABDの公式サイトにマニュアルもあるので、ファシリテーターする人は事前に読んでおくと良いでしょう。イメージを湧いてもらうために、ここで私が以前に参加したABDを参考にサンプル的に進め方を紹介します。

1)チェックイン

ABDの開始時間になったら、まずはチェックインから始めます。ファシリテーターによる挨拶とお礼のあとは、参加者同士で自己紹介をしてもらいます。名前のほかに、参加したきっかけや会に対する期待などを述べてもらいます。「最近に夢中になったこと」などのお題を出すのも話しやすくなって良いでしょう。

人数が少なければ全員で順番にやっても良いですし、多ければ2〜3人で組みになって相互にやってもらいます。心配になりますが、みんな大人だから大丈夫。

2)進め方の説明

場が温まったところで、ABDについての簡単な説明と、このあとの進め方についてファシリテーターから説明します。みんなABD経験者なら飛ばしても良いでしょう。

この説明のときから、B5用紙に用意したものを順番に貼り出してプレゼンするKP法で行うとスムースです。

3)「はじめに」を使った練習ABD

ABDが初めてという方がいる場合、いきなり本編に入る前に練習するのも良いでしょう。練習に使うのは「はじめに」です。「はじめに」は、だいたい本で言いたいことが凝縮されているので、どんな本か掴むにもうってつけです。

「はじめに」だけは人数分を印刷して用意しておき配ります。そして、全員で3分ほどで読んで、B5用紙1枚にまとめます。まとめ終わったら、また2〜3人で組みになって1人30秒ずつで共有しあってもらいます。

参加者は思ったよりスピーディーで慌ててしまいますが、まずは体感してもらうのです。これが練習になります。練習結果を踏まえて、以下のポイントを共有しておきましょう。

・B5用紙は貼り出すので横向きに使う
・貼り出して見えるよう、多くて10文字6行以内
・イラストや図は使ってもOK
・文字を書くペンは寒色系で(見やすい)

4)本番ABDにむけて担当を決める

次は本番です。1冊の本を全員で分担するためには順番を決めなければいけません。ランダムでも良いですし、このタイミングで席替えして担当を決めても構いません。

「組織にいながら、自由に働く。」の読書会では、「自由な働き方できてますか?」という質問を出して、0点から100点まで自己採点して一列に並んでもらって、自由度の高い人ほど後ろの部分を担当するようにしていました。

5)読んで要約する(コ・サマライズ)

いよいよ本番ABD開始です。練習ABDでやったのと同じように、全員で一斉に読んでプレゼン用に要約してアウトプットする時間になります。難しい言葉ですが「コ・サマライズ」というそうです。

時間はだいたい20分で、B5用紙は最大5枚までにまとめます。枚数は少なくても構いません。そのあとのプレゼンで自分が発表するためにまとめるのです。ファシリテーターはタイムキーパーをしてあげてください。

6)貼り出して発表する(リレー・プレゼン)

要約の時間が済んだら、それを壁一面に書籍の順番に貼り出していきます。そして、本の先頭である左側から順に発表をしていきます。だいたい制限時間は1人90秒です。

B5用紙に書ききれなかったこともプレゼンの中で補足してもOKです。時間は限られているので簡潔に話すことを促します。順番に話していくのですが、せっかくなので次の人に交代するときはハイタッチしましょう。

7)内容について対話する(ダイアローグ)

全員のプレゼンが終わったら大きな拍手を。そして全員でペンを持って、気になったB5用紙にスターとかハートとかのマークをつけていきましょう。そのあとは内容や気になった点について、感想などを話し合う対話の時間になります。人数が多ければ、また3〜4人の組みにわかれておこないます。

ここでのポイントは、正解を探ろうとしないことです。書籍には著者の考えがありますが、どう受け取るかは本人次第です。本人がどう感じて、どういった気付きを得たのか共有しあうのです。

「肯定ファースト」という言葉を最近知ったのですが、まずは相手の意見を肯定すること、そのあとで自分の意見も言うスタイルが場を良いものにしてくれます。

8)チェックアウト

最後は、全員で今回のABD参加した感想を伝えるチェックアウトをおこなって終わりです。お疲れ様でした。

さらに詳しい進め方については以下が参考になります。
ABDのマニュアル
『ティール組織』読書会ガイド

ABDを体験した感想(参加者視点)

私が実際にABDに参加してみて感じた特徴は以下の3つでした。(個人の感想です)

1)とても気軽で楽しい

なかなか分厚い本を読む時間をとることも難しく、宿題や予習の必要な読書会には参加できないのだけど、ABDは本当にフラッと参加することができるので、圧倒的に気軽なことがよかった。

私の参加したABDは前日に参加を決めたのだけど、予備知識もいらなかったし、何か教養を問われたり評価されたりする場でもなかったこともあって楽しく参加できました。

ABDに参加したことで本の全体像も把握できるので、その本を読もうと思っている人にとっては読みやすくなるのも良さそうです。

2)集中するのが楽しい

限られた時間で、自分の担当する部分をプレゼンする前提で要約するというのは、なんとなくゲームのような、もしくは国語の試験を思い出すような感覚で大人になって久しぶりで楽しかった。

アウトプット前提で読むこと、時間内に要約することは、想像以上に集中力が必要でスポーツ感覚もあったのが楽しい理由でしょうか。

短い時間で一通り理解することができるのでコストパフォーマンスで考えても良いものだと思う。読みたいと思いつつ積ん読にしておく位なら参加したい。

3)仲良くなれて楽しい

それぞれが自分の好きな本を持ち込む読書会と違って、同じ本を分担して読むという協同作業と、同じ本の内容を共有しているという感覚で、参加者同士が仲良くなりやすい感じがしました。

勉強会に参加しても懇親会でなかなか話が盛り上がらないなんて経験はあるけど、ABDのあとは本の内容で話ができるんです。人見知りには嬉しい。

追記)
「アクティブ・ブック・ダイアローグ®」を円滑に運営するための実践的なノウハウ(ファシリテーターしたい人向け)

「管理ゼロで成果はあがる」ABD向けにゲラ無償提供します

現在、発売中の「管理ゼロで成果はあがる」でも、ABDを実施したいという方のためにゲラの無償提供を始めています。詳しくはこちら

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

ニュースレター

ブログの更新情報や、ここだけの執筆裏話など、3ヶ月に1度のペースでお届けします。

購読する
書影: 私はロボットではありません
倉貫書房の新刊

私はロボットではありません

長瀬光弘 著

「嫌な未来なら変えればいい」

あなたの毎日にも、きっと繋がる。株式会社ソニックガーデン代表倉貫義人のブログ「Social Change!」のノベライズ化第一弾。

BASEで注文する
ページ上部へ