社員一人ひとりが会社で本来の自分を曝け出すことができること、そして、それを受け入れるための「心理的安全性」、つまり他者への心遣いや共感、理解力を醸成することが、間接的にではあるが、チームの生産性を高めることにつながる。

これは現代ビジネスのウェブ版に掲載された以下の記事からの一節だ。
グーグルが突きとめた!社員の「生産性」を高める唯一の方法はこうだ

グーグルが取り組んだ生産性向上計画についての記事で、それによると生産性の高いチームに共通するのは「他者への心遣いや同情、あるいは配慮や共感」がうまくいっていることだと言うのだ。

チームの中で、気兼ねなく安心して発言や行動できるような心理的な不安がない状態が、高い生産性を実現すると言われれば、確かにそう思う。そうした状態を心理学の専門用語から「心理的安全性(psychological safety)」と呼ぶらしい。

これまで言葉として認識していなかったけれど、私たちソニックガーデンでの取り組みも、この「心理的安全性」という言葉で表現できそうだ。いつものごとく、本質が先にあって、言葉が後から付いてきたパターンだから、正しさは保証できないが。

心理的安全性と、リモートワークかオフィスワークか

リモートチームに対する反対意見の一つが、オフィスに比べて社員同士の何気ない会話がしにくい、そのために新しいアイデアが生まれなかったり、密なコミュニケーションが重要なクリエイティブな仕事に向いていないというものだ。

実際のところ、私たちはリモートチームで仕事をしていて困ったことがないので、必ずしもリモートであることが問題ではないと思っていたし、オフィスにいたとしてもコミュニケーションがうまく取れていないチームはごまんとあるだろう。

ここで「心理的安全性」を考慮すると、リモートかオフィスという対立軸ではなく、心理的安全性が保たれたチームかどうかの軸で直交する4象限で捉えることができる。リモートだろうとオフィスだろうと、心理的安全性の保たれたチームならコミュニケーションや雑談がうまくいって、そうでないなら場所に関係なくダメだろう。

オフィスで心理的安全性が高いなら、間違いなく生産性が高まるだろう。一方で、リモートであっても心理的安全性を高めることが出来れば、高い生産性を実現することが出来る筈だ。むしろ合理化されているから、より生産性が高まるのではないか。

この心理的安全性を考慮することがマネジメントの肝となる訳だ。オフィスに集めれば心理的安全性が勝手に保てるというのは幻想だろう。優れたマネージャならば、オフィスが前提の時代から、心理的安全性を保つための取り組みはしていた筈だ。リモートでも、その基本を忘れずに少し形を変えて取り組めば良いのだ。

心理的安全性を高めるマネジメントの取り組み

オフィスにいても、安心して発言できないチームや部署はあるだろう。心理的安全を実現することは、オフィスもリモートも関係なくマネジメントの役割となる。安心して働くために出来ることは何があるだろうか。

マネージャはメンバーを信頼するところから始まる。メンバーにしてみれば、もし信頼されていないと感じれば、安心して発言することなどできないだろう。だから、そもそも信頼できる人を採用すべきだ。私たちは採用にとても時間をかけている。

信頼関係を築くには、大きな成果で見せるのではなく、少しずつ成果を出していくこと、小さな約束を守り続けること、コミュニケーションをこまめに取ることだろう。

また、経営者の発言に一貫性があり、判断が公平であること。言うことがコロコロ変わる人の元では安心できない。そのためにチームに共通の価値観があると良い。

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一緒に働く仲間のことを、一人の人間として見ることも大事だ。人をリソースと見ると敬意が失われる。立派な大人として敬意を持って接しよう。人は子供扱いされると子供のように振る舞うし、大人として扱われると大人として振る舞うものだ。

そのために、互いの考え方の根底にある人生観や、家族のことや将来の夢などパーソナルな面を知るのも良い。行動原理の背景にあるものを知ることも安心を生む材料となる。私たちは、合宿リモート飲み会、家族旅行を通じて取り組んでいる。

感情に任せた発言や怒ったりもしない。それは誰も得しないからだ。もし失敗があったとしても、当事者の能力ではなく、仕組みを疑うべきだ。改善できるものは、コントロールできるものだけだ。

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チーム内での情報格差をなくすと良いだろう。良いことも悪いこともオープンに伝えることで、情報を持つことでの駆け引きなどなくなる。私たちは、人事権や個人評価すらなくしたので、情報の駆け引きどころの話ではない。

人手は足りていない位がちょうど良い。顧客や市場だけ見ていた方が協力しあえる。よく言われる「問題対私たち」の構図を作るためだ。

どんな仕事だって、本人が納得して取り組めることが生産性を高めることになる。そのためには、あらゆる取り組みを論理的に説明している。ロジックが通っていることが大前提、その上で感情に訴えかけるのだ。ただの根性論では安心できない。

今回は、思いつくものをざっと並べてみたが、私たちが具体的にどうしているのか既に書いているものもあるが、他については別の機会に書くとしよう。

心理的安全性で高められる本当の生産性

もし感情のないロボットに働かせるのなら、心理的安全性など考慮する必要などないだろう。人が働くのだから、安心できる環境は生産性に影響を与えるはずだ。そして感情のいらない仕事は、それこそロボットに奪われる時代だ。

人間にしか出来ない仕事は、デザインなどのナレッジワークが中心になっていき、どれだけ同じものを手を動かして作ったかではなく、インスピレーションやアイデアなどのナレッジで成果を出すようになる。生産性の定義が変わるのだ。

ならば、そうしたナレッジが生み出されやすくなる環境、つまり心理的安全性の高い企業が生き残っていくのではないか。

心理的安全性の高め方に正解などない。そこにいる人はそれぞれ違うからだ。だから、自分たちのチームで「心理的安全性を高めるためには」というテーマで議論してみるのも良いだろう。必ずしも答えが一つではない問題について、一緒に議論することも、心理的安全性を高めるための手段になるかもしれない。

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