Students and Teacher in a Classroom at Cathedral High School in New Ulm, Minnesota… / The U.S. National Archives
多くの会社で新社会人を迎え入れる季節になりました。若い人たちをどう育てるのか、企業にとってとても重要なテーマです。私たちソニックガーデンでも、毎年なんとか新卒社員を採用し、師匠のもとで弟子という形で教育しています。
私の考える教育方針の哲学はシンプルで「子供扱いしないこと」「育てるのではなく育つ」「守るのではなく見守る」というものです。
これは、私が様々な先輩や上司の元で働かせて頂いた中で感じたことを思い出して考えたものです。これから若手を育てなければいけない立場になった先輩や上司の人たちにとって参考になればと思い、それを記事にしてみました。
目次
子供扱いしないこと
人は子供扱いされると子供のように振る舞うし、大人扱いされると大人として振る舞うものです。小さな子供のように、あれも駄目、これも駄目、何をするにも許可が必要、そんな環境にずっといると、自分で考えることをやめてしまうでしょう。
しかし、会社に入ってくる若者は、社会に出てきた時点で、もう立派な大人です。何がよくて何が悪いか判断つくはずです。そもそも、そんな判断もつかない人を採用していたとしたら、そっちが問題です。
大人に対して子供扱いするのは失礼です。分別のつく大人として接することで、本人にも自覚が産まれます。大人としてどう振る舞えば良いか、仕事に対してどう取り組めば良いか考えるようになります。
大人として自分で考える癖をつけることは、その先の生き方に大きく影響を与えるでしょうし、会社としてもルールで縛るよりもいいはずです。
私のこの考えは、「小さなチーム、大きな仕事」という私たちがリスペクトしている企業である37signalsの本から影響を受けています。その本について私の書いた書評はこのブログの過去記事であるこちらに書いています。本を読んだとき、目から鱗が落ちたのを覚えています。
では、大人として扱うというのはどういうことか。それは、話が通じるということだと思っています。新人や若手には雑用をさせることもあるでしょう。それは給料分の仕事が出来ないうちは当然のことです。
ただ、そんなときであっても、その仕事の目的を伝えることを忘れてはいけません。なぜその作業が必要なのか、その先にどんな価値が産まれるのか、お客さまにどう届くのか、意識して仕事をするかどうかで、成長するかどうか大きく分かれます。
だから、目的を伝えるのです。つべこべ言わずにやらせてしまうと、その先は、考えない社員が出来てしまうでしょう。
育てるのではなく育つ
人が成長するのに必要なのは、期待と機会。どうあって欲しいか、どうなって欲しいかという期待を伝えなければ目指せないし、求められなければ頑張れない。そして、教えたり守ったりするのではなく、仕事として成長できる機会を与え、自ら育つのを見守る。人は育てるのではなく、育つものと考えている。
— Yoshihito Kuranuki / 倉貫義人 (@kuranuki) April 4, 2013
会社というのは仕事をする場で、学校ではありません。だから、育てることだけを目的とするわけにはいきません。会社と社員は、価値を提供するから、その対価として給与を払うという契約で成り立っています。一方的に育てるなんてありえません。
以前に私は、人を育てようとしても中々うまくいかない経験を沢山してきました。どんな風に育ってほしいと考えて、教育の計画をしっかり立てて、それに必要な研修コースを用意したり、自分で教鞭をふるってみたり。
しかし、うまくいかなかった。座学だろうがワークショップだろうが、なかなか身に付いて育っているという訳にはいかなかったのです。これはおそらく、社会人で働いてからの方が、学校や研修にいきたいと思うのと同じことが起きていました。
目的が曖昧で、必要性を感じられない研修は誰しもが、身に付かないのです。
では、どうするか。もはや人を育てようなんて考えずに、育つ環境を与えることの方がよほど効果的ではないか、と考えるようになりました。
育つ環境というのは、その本人にとって少しハードルの高い仕事を任せることです。上司からみたら少しのハードルの高さでも、本人にとってはとてつもなく大きなハードルに感じるような高さがちょうどいいです。
そして、仕事として任せるのです。手取り足取り一緒にやるのではなく、本人が自分で考えて解決していくのを見守ります。
そのときに忘れてはいけないのが、「期待」を伝えることです。何が出来るようになってほしいから、その仕事を任せるのか、期待していることを伝えます。本人も、期待を受けなければ頑張れないですよね。
期待を伝えて機会を与える。ここが出発点です。
そこで、上司や先輩ができることは、仕事ぶりや仕事の内容についてレビューをすることです。やってみたことに対して、うまく出来ていれば褒めて、うまく出来てないところは指摘する。
そうしていくことで、自分にとってどうしていくことが正しいことなのかを知ることができます。
守るのではなく見守る
大昔にマネージャーをしてた頃は、部下や若者を会社や顧客から守ることが自分の役割で、間に入ってあげようなんて考えてた頃もあった。でも、それは間違いだった。最初から最前線で直接にお客さんとやりとりもした方が、辛いこともあるけど嬉しいことも大きいし、それが成長の原動力になるとわかった。
— Yoshihito Kuranuki / 倉貫義人 (@kuranuki) April 4, 2013
社会人になってから最初の頃、自分が一番成長できたのは何だったかな、と思い返してみると、客先に出る仕事を一人で任されたときだったと思い出せます。お客さんのところのサーバールームに行って、サーバーのセットアップをしてみたり。
その瞬間は他に頼る人がいない、自分でなんとかしなければいけない緊張感の中で、一生懸命考えながら仕事をしたことがよかったように思います。すごく大変だったけれど、それがよかったんでしょうね。
その後、自分がマネージャーや管理職になって最初の頃は、お客さんの前に出るのは上司である自分で、部下や若者にその負担を負わせないようにしてあげることが自分の仕事だなんて考えていた頃もありました。
でも、それって違うんですよね。それは自分の社員のことを信頼してないし、見くびっていたと言われても仕方ありません。そして、そのように人を扱うとそうなってしまう、というのは前述の通りです。
お客さんの前に出さないというのは、保身の気持ちもあったのかもしれません。
本当に育ってほしいなら、最初から現場の最前線、その会社にとってのお客さまと直接に話をできる場所に置くべきです。自分たちの会社にお金を払ってくれるお客さまと接することは緊張するでしょうが、それが良いのです。
お客さまと仕事をすると、直接お叱りを受けることもあるでしょう。それは当然凹みますし苦しいはずです。ただうまくいったときに、喜んで頂けることを直接感じることが出来ます。それは、次への大きなモチベーションになります。
社員が、自ら考え行動するようになるためには、そのような仕事を任せていく、ということですね。社員を守ることよりも、見守ることの方が大変です。最終的には責任をとるのは会社であり、上司ですから。
でも、そうやって徐々にでも任せられるようになると、いつか部下や後輩は、自分にとってかけがえのない頼れる仲間になってくれるはずです。