いい会社を作るための企業文化とその育てかた

いい会社を作るための企業文化とその育てかた

先日、船井総研さんの企業見学ツアーで、私たちソニックガーデンのオフィスに50名ほどのお客さまに訪問して頂きました。そのときの様子を、船井総研の方にブログにもして頂いています。

『オーダーメイドの受託開発もクラウド型になる時代へ』

私がその際にお話ししたのは、「納品のない受託開発」という新しいビジネスモデルについて、そして、珍しいことなんですが、私たちソニックガーデンの企業文化についてお話しました。この記事では、企業におけるカルチャーの重要性について、そして、企業見学の際にお話ししたソニックガーデンのカルチャーについて紹介します。

企業文化とは何か

世の中には沢山の会社があり、様々な労働条件の中、それぞれの会社ごとに事業を行っています。統一した視点で見れば、従業員数や売上、平均給与などといったフォーマットで横並びにして比較することが出来ます。就職や転職の際には、そういった比較から会社を選ぶということもあるでしょう。しかし、条件だけで選んでしまうと失敗することになりがちです。

企業には、そうした定数評価では計ることのできないようなものが、それぞれの企業ごとにあります。会社の雰囲気もあるし、勉強会があったり、会社での行事があるところもあれば、オンオフをはっきりさせるところもあるでしょう。そうした定性的な会社の特徴を「企業文化(コーポレートカルチャー)」と呼びます。

他の会社とは定量的には比較することのできないものであるため、外からは簡単にはわかりにくいものではありますが、どんな会社にも間違いなく企業文化は存在しています。極めて少人数の会社であれば、そこにいる人たちの関係性と性格こそが、企業文化と言えるかもしれません。企業文化とは、会社にとっての性格のようなものです。

人間だって結婚相手を選ぶときに、条件だけで選ぶということはないように、会社を選ぶ際も、条件だけで選ぶことのないようにしたいものです。企業文化に合えば居心地も良いでしょう。自らを厳しい環境に置くという考えかたは良いと思いますが、居心地の良さと、己に厳しい環境というのは、必ずしも相反するものではありません。居心地よく成長できる場が最高ですね。

特に、新たな価値を生み出す成果を求められるナレッジワーカーにとっては、企業文化は、より一層重要になってきます。働く一人一人の社員こそが、その会社の競争力になりうる場合、それぞれが現場で判断を求められたとき、拠り所のひとつになるのが企業文化だからです。

企業文化の育てかた

では企業文化とは、どうやって社内に浸透させていけば良いのでしょうか。もしくは、企業文化とは浸透させるものではなく、自然と企業に表れてくるものでしょうか。放っておいても企業文化は存在しますが、放っておけば、人が増えたりすると、一貫性を失います。やはり、その企業の創業者の考えかたやポリシーこそが、企業文化の最初の種であり、後から入った人に伝えていかなければ、うまくいきません。

「企業文化」を大事にする有名な企業といえば、靴のオンライン販売をしているザッポスという会社でしょう。ECにおけるカスタマーサービスを重要な競争力だと考えて、社員の教育や企業文化を重視した経営を行うことで、高い顧客満足度を得ている会社です。カスタマーサービスの担当者には、時間制限やルールはなく、顧客のためになることであれば、何をしても良いというポリシーで対応するのです。

そのザッポスでは、企業文化を「10個のコア・バリュー」として明文化するときにしたことは、もっともザッポスらしさをもった社員を見つけて、その人たちの特徴を集めることでCEO自ら作り上げたそうです。そして、その企業文化を守るために、採用と教育に相当な時間とコストをかけています。

これもザッポスを有名にした話ですが、社員を採用する際に重視するのはスキルよりもカルチャーがフィットするかどうかで、もし採用されてしまった社員が数ヶ月でカルチャーにあわないとわかったときは、その人に、2000ドルの採用辞退ボーナスを提示して辞めてもらうということをするそうです。そのボーナスで辞めてしまうような人は、カルチャーにあわないということだし、それがあれば、次の転職先も見つけられるだろうということです。

ここまで徹底すると、企業文化のためにかけるお金は、コストではなく、ブランドを守るための投資だと考えられます。

ザッポスほどまで出来ているかどうかはわかりませんが、私たちソニックガーデンでも、お客さまへの提供価値の信頼の証としてのブランドは大事にしていますし、それを守るための企業文化についても、大切にしています。

私たちの経営哲学として、物理面(仕組み)と精神面(気持ち)の両方を大事にするという姿勢があります。やりがいや想いなどの気持ちだけでは事業は続けられないし、一方で報酬や仕組みだけでは仕事は楽しくなりません。どちらも大切なのです。事業経営でいえば、ビジネスモデルとコーポレートカルチャーが、その両輪があってこそなのです。

私たちソニックガーデンでは、自社のカルチャーを伝えていく役割の先頭に立つのは社長である私の仕事だと認識しています。もちろん、私一人ではなく、全員がカルチャーを伝えていく役割をもつことが、私たちのカルチャーでもあります。私が伝える手段は、やはりこのブログです。ブログには私の考えかたや姿勢が表れます。ブログを通じてカルチャーを伝えていくのです。なので、採用やギルドで応募して頂く方々には、ブログを読んで頂くようにしています。(量が多くて大変なのですが・・・)

以前は仕事や飲み会なども通じてカルチャーを伝える機会にしていたし、今もそうした機会を活用していますが、社員が増えてきたことで全員と同じだけ一緒に仕事はできないし、リモートの人とは飲み会もなかなかいけないので、そうした制約を超えるためにもブログにしています。

また、企業文化はただのお題目になってしまっては意味がありません。経営の戦略策定から現場での判断まで、いたるところでソニックガーデンらしさを発揮していくことが本当の企業文化です。そこで、企業文化に則った行動を、私自ら率先して実行するようにしています。忙殺されると忘れてしまったりして、なかなか難しいことではありますが、自分たちの価値観をいつも見直すようにしています。

ソニックガーデンの企業文化

私たちソニックガーデンの価値観は、いつでも見直せるように、会社のホームページに掲載しています。ソニックガーデンのホームページは、ブログとニュースを除いて、一言一句すべて私が書いています。なので、この価値観の文言と文章も私の言葉です。今は、7つの価値観としてまとめています。

 

  • 小さな組織で個人の価値を尊重すること
  • 中間に入る無駄をなくして直接つなぐこと
  • 判断に理解と納得を持ち思考停止しないこと
  • 動くサービスを常に最高品質で提供すること
  • 小口化し繰り返すことで持続可能にすること
  • 日々学びを続けて自ら変化に取り組むこと
  • 情報をオープンにし常に公明正大であること

 

それぞれについて詳しくは会社のホームページをご覧ください。いずれ、このブログでも説明するかもしれません。

この7つの価値観は、ソニックガーデンを設立した3年前に書いたもので、それから進化している部分もあり、見えてきたカルチャーもあり、改めて追記してもいいかもしれないと考え始めています。その元になるようなカルチャーのキーワードを考えてみました。以下のようなものです。

  • ベストエフォート経営(持続性を重視し身の丈にあった成長を目指す。参考記事
  • ピープルファースト(人ありきで案件を準備する。案件のための採用はしない。)
  • フラットな組織(ピラミッド型ではなく、フットボール型の組織図と役割分担。)
  • 業務分掌よりも兼務(仕事の範囲を決めず、なんでもやってお互いに助け合う。)
  • 遅巧よりも拙速(いくら品質がよくても、遅いと意味はない。スピードは価値。)
  • ソースコード至上主義(美しく良いコードを書けることこそが最もカッコいい。)
  • セルフマネジメント(中間管理職を置かない。指示も命令もされない。参考記事
  • お客さまを財布として見ない(お金はとるものではなく、結果として頂くもの。)
  • 採用と取引までに時間をかける(契約には慎重に。その前にお試し期間を置く。)
  • 家族のような付き合い(社員の家族も含めて大きなチームのように大切にする。)

これらのうち、いくつかは既にこのブログで紹介していますし、そうでないものは今後、記事として紹介していこうと思います。もし、私たちソニックガーデンのカルチャーにあっている!と思った方は、ぜひ採用ギルドでご応募ください。一緒に働きましょう。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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