今回の記事は、リモートワークアドベントカレンダーの17日目として用意しました。
注目されるリモートワークですが、オフィスで働くのと変わらない成果を発揮するためにはノウハウが必要になります。この記事では「デジタル出社」という新しいワークスタイルで、リモートワークでもチームでうまく働くノウハウを紹介します。
目次
リモートワークを望む課題の本質は「通勤」だったのでは?
都心で働く人たちにとって、通勤における満員電車ほど嫌なものはないでしょう。ただでさえ飽和状態にある都市人口の中で、多くの人たちが同じ時間に通勤するものだから混雑は大変なものだし、男女共に痴漢にまつわるリスクもあるでしょう。
私がリモートワークを始めて本当に良かったな、と思うのは、満員電車に乗る機会が激減したことです。週2日ほどはオフィスに行きますが、それも午前中は在宅勤務にして、午後から移動にしたりすることで満員電車は避けることができます。
一方で、オフィスのような場所で同僚と仕事をするのは楽しいもので、オフィスだからこそ生産性が出せたり、チームで密な連携ができたりするという話もよく聞きます。人は一人では生きられない、社会性を持った生き物なのです。
ふと考えてみると、もしかするとリモートワークの働き方で解決したいのは、オフィスに出社しないことではなく、通勤をしなくて済むようにすることだったのではないでしょうか。「どこでもドア」さえあれば、出社しても良いとは思いませんか?
通勤はないけれど、出社はある?!のが「デジタル出社」
もし「どこでもドア」があるなら、どこでも好きな場所に住みながら、働きたい仕事があり、一緒に働きたい仲間のいる会社で働くことができます。リモートワークで実現したかったことって、そういうことだったんじゃないでしょうか。
そこで「通勤」と「出社」を分けて考えてみると、問題はシンプルになります。「通勤」にかかる労力とコスト、精神的な疲れやリスクはなくしたい、一方で「出社」することで得られる連帯感やチームワーク、コミュニケーションは手に入れたい。
そこで私たちがリモートワークにおけるチームワークのために取り入れているコンセプトが「デジタル出社」です。(私たちの間では「論理出社」とも呼んでいます。)
クラウドに働く場所があり、仕事をするときはログインをします。ログインすると出社したことになります。つまり「通勤」はないけれど、働く場所に「出社」はするのです。私たちは、そのクラウド上の働く場所として「Remotty」を自作しました。
「デジタル出社」という新しいチームのワークスタイル
「デジタル出社」のコンセプトの背景にあるのは、チームで働くためには同じ時間帯で働くべきだという考えがあります。同じ時間帯に同じ場所に「出社」することで、物理的な場所は離れていても、いつでも相談や雑談をすることができるのです。
私たちの会社は渋谷に物理的なオフィスもありますが、それはあくまで関東近郊に住む人たちのためのコワーキングスペースのようなものとして考えていて、あくまで「Remotty」が本社オフィスとして、全員が出社する場所として考えています。
朝、ログインしてくると「おはようございます」の挨拶から始まって、仕事中はずっとログインしてタブを開いたままにして、仕事を終えるときは「お疲れ様でした」と一言残してタブを閉じる、そんなワークスタイルはまるでオフィスと同じです。
デジタル出社する先の「働く場所」は、何を使っても良いと思いますが、私たちが自作した理由は「同僚の顔が見える」「各自の席で声がけ」などのオフィス感のあるものがなかったためです。私たちは「Remotty」をチャットだと考えていないのです。
「デジタル出社」ならクリエイティブなアイデアも産まれる
リモートワークは、一人でする仕事や割り振られた仕事をするには向いているけれど、チームでクリエイティブな仕事をするには向いていない、という話も聞きますが、「デジタル出社」をするチームでは、そんなことは問題にはなりません。
離れた場所で働くことに加えて、好きな時間にバラバラに働いて、必要な時にだけ連絡やコミュニケーションをとるといったワークスタイルでリモートワークをしているのであれば、チームで働くことで生み出されるアイデアは出てこないでしょう。
チーム全員が「デジタル出社」して同じ時間・同じ場所で働くことで、連絡事項がないときでもずっと繋がっているので、気軽な会話や雑談が生まれやすくなります。そうした雑談からアイデアが生まれることが多いのはオフィスにいるのと同じです。
所詮オフィスに集まったところでクリエイティブな仕事なんてできないチームもたくさんある訳で、「デジタル出社」を導入すれば、もし良いチームだったなら、リモートワークということはそれほどのハンディにはならないと感じています。
「デジタル出社」すればリモートワークの孤独感は感じない
Remottyに「デジタル出社」すれば、働いている同僚の顔がずっと映しだされているので、たった一人で働いている感覚にはなりません。特に話すことがなくても、全員が仕事中はログインしているようにしているため、よくある孤独感など感じません。
Remottyでは、ほぼライブでカメラ撮影した全員の画像が見えます。アイコンでも良さそうなものですが、実際に今そこにいる人が見えることは情報量として圧倒的に違います。また、自分の様子が配信されているのも良い緊張感を産んでくれます。
ライブ版:
アイコン版:
ソフトウェアの中とはいえ同じ時間・同じ場所にいるので、社内で起きている出来事をリアルタイムに知ることができるし、社内での盛り上がりの熱量も共有することができます。それらが、よりチームで一緒に働いている感覚にさせてくれます。
「デジタル出社」のために犠牲にするトレードオフは自由
「デジタル出社」をすれば、場所に縛られずに働けることと、チームで協調しながら働けることの両立が出来、リモートワークとオフィスワークの良いところ取りのようなものですが、その代わりにトレードオフで諦めないといけないこともあります。
諦めるのは完全にいつ働いても良いという自由です。やはりチームで助け合いをするためには、大体同じ時間帯に働かなければなりません。私たちの会社ではコアタイムや就業時間の規則などありませんが、それでも皆はほぼ同じ時間帯に働いています。
ただそれでもオフィスで働くことに比べたら相当に柔軟に時間を使うことができます。調子が悪ければ昼寝をしても良いし、お迎えや子供の用事があれば途中で抜けることなど、オフィスだったら出来なかったことができるようになっています。
リモートワークでチームワークを発揮するためには、ただ個人で成果さえ出していれば、いつどこで働いても良いという訳にはいかなくなります。仲間同志で助け合うことが求められますが、それってチームにとって良いことだったはずですよね。
通勤をなくせばうまくいく〜「デジタル出社」が変える働き方
同じ会社や同じチームであることの本質は、オフィスという物理的な場所だったのでしょうか。物理的に同じ場所で働くからといって、チームになって仲間になるのでしょうか。ビルやオフィスというハードウェアは、チームの本質ではありません。
物理的なオフィスにこだわることさえなくせば、チームの仲間が働く場所への「どこでもドア」は手に入るのです。「デジタル出社」がつまびらかにするのは、本質的なチームの存在であり、本当のチームワークに対する考えかたです。
出社はするけど通勤はしないワークスタイルで、自分の好きな場所で、好きな人たちと一緒に働くことができるようになります。それがきっと働く人を幸せにするはずです。私がリモートワークを広めたい思いも、そんなところにあります。
そんな私にできることの一つが、リモートワークに関する本を日本人の手によって執筆することでした。新しいワークスタイルは海外の話でも未来の話でもなく、日本でも起きているリアルな話として多くの人に知ってもらいたいと本を書きました。
本日、発売です。リモートワークだけでなく、これからの新しい働き方、チームワークの本質といった言葉にピンと来た方には、ぜひ読んで頂きたいと思っています。
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