個人の熟達もアジャイル思考で考えよう

どうしても若く未熟なうちは、自分ができていないことに目を向けてしまいがちです。

できない自分を責めて、もっと頑張ってみても、まだ足りていないと感じてしまう。そして、いつか心が折れてしまうことも起きてしまうかもしれません。それは誰にとっても避けたい事態です。

本稿では、そうした状況から脱却するために、私の考えるアジャイル思考のマインドセットを個人の熟達に応用してみたいと思います。熟達に取り組む人にとって参考になれば幸いです。

足りないものを埋めるウォーターフォール思考

「まだまだ実力が足りていないので頑張ります」

仕事だけでなく様々なことで、自分はまだまだだと感じることがあると思います。正しく自己認識し、より向上していこうと考えるのは素晴らしいことですが、ずっと足りないものを埋めていく発想でいると苦しくなってしまう人もいるでしょう。

近くに同じ職種や似た境遇なのに自分よりも圧倒的にできる人たちがいると、そう考えてしまうのはわかります。他者と比較すると、あれも足りない、これも足りないと思ってしまう。

先々のことを考えすぎて、決めたゴールや理想像から逆算して、足りないものを埋めていくようなスタンスは、まるでウォーターフォール型のプロジェクトのようです。このマインドセットのつらいところは、ゴールするまでは途中経過に過ぎなくて実績になるわけではないと考えてしまう点です。

できた足跡をふりかえって進むアジャイル思考

こうしたことは若い人にありがちですが、若くなくてもあります。もうすぐ50歳になる私でさえも、優れた経営者の人たちに接したときは、自分まだまだだなと思ったりします。

ただ、まだまだと思う一方で、これまで自分が取り組んできた実績も思い返すことで、まんざらでもないな、と思えるものです。

つまり、できていないことは認めつつも、これまで取り組んでこれたことがなくなるわけではないと考えるのです。そのように今あるものや環境を受け入れつつ、その上でより良い状態を目指していくのがアジャイル思考だと、私は考えています。

もっと仕事ができるようになりたいとか、プログラミングが上達したいとか、そうした向上心はお金で買えない代え難いものです。その気持ちを失うことなく、うまく活かしていくためのアジャイル思考を応用した考え方、それが以下の3つです。

・その1)まずはできたことを確認していこう
・その2)問題でなく伸び代があると考えよう
・その3)感謝しつつ周りの人に頼っていこう

その1)まずはできたことを確認していこう

まだまだ足りてないと考えて頑張るのも一つの手ですが、ずっと果てしなく続くとしたら疲れてしまいます。そして熟達に終わりはないのです。であれば、今できていない課題を数えること以上に、少しでもできたことを確認していくと良いでしょう。

人によっては目指すビジョンや理想の姿があっても良いと思いますが、ずっと遠くばかりを見てギャップを感じながら日々を過ごすのは耐え難いでしょう。日々はビジョンや理想につながるような、だけど小さな一歩でいいから着実に進めていくのです。

アジャイル思考でいえば、未来を確約するのではなく、今できることを精一杯にベストを尽くして一つ一つ進めていくこと。そのためには、取り組む単位を小さくすること。小口化です。小さくても成功体験を積み重ねていくことが大事だからです。

できたことを誰かに褒めてもらえると嬉しいですが、いずれは誰に褒められなくても自分で実感できるようになりましょう。セルフマネジメント的には、自画自賛できる能力が重要です。その上で周囲の人を称えられるようになると最高ですね。

その2)問題でなく伸び代があると考えよう

アジャイル思考でいえば、ベストを尽くした後は「ふりかえり」して学習をしていきます。できたことから学びを抽出していくのです。ただし「ふりかえり」をすると、どうしてもできなかったことにも目を向けることになります。

私たちソニックガーデンでは「ふりかえり」のフォーマットに「KPT」を使っています。ただし、一般的に言われている「Keep/Problem/Try」ではなくて、「Keep/Potential/Try」だと考えています。”Potential”の”P”です。

現時点で未熟なところがあることは問題ではなく、まだ成長する余地がある、すなわち伸び代があるということです。そのためには当然ですが、できていないことはできていないと認識しなければいけないので、そこに厳しさはあります。

しかし「ふりかえり」は反省会ではなく、次に繋げるための機会だと捉えるならば、厳しい現実を受け入れながらも課題を伸び代と捉えることで新たに取り組むテーマが見つかります。前向きに取り組んでいきましょう。

その3)感謝しつつ周りの人に頼っていこう

とはいえ、どうやっても今の自分の能力では難しいことにも出てくるでしょう。そうしたときに、どうすればいいのか。つい、できないことを謝罪してしまうかもしれませんが、それでは物事は前に進みません。謝罪して楽になるより、どうすればいいか考えましょう。

できないなら周りに頼るしかありません。視野が狭いと「自分の仕事」を「自分だけの仕事」だと勘違いしてしまいますが、価値を生み出したり、問題を解決することが仕事の本質だとすれば、自分が活躍することは必須のことではありません。

私も若い頃は、自分の成果を見せつけて、驚かせたりすることに躍起になったときもありました。しかし、直接お客様と話をするようになり、会社や事業のことを理解し、一緒に取り組む仲間や部下ができたことで、自分だけで解決することに固執しなくなりました。

周りの人たちに相談をすることで、アジャイル思考でいう「問題vs私たち」の構図をつくることができます。もし、協力してもらうことができないなら、もしかすると環境の問題かもしれません。

未熟なうちは「自分の実力」を自分だけの能力だと思ってしまうかもしれませんが、自分を取り巻く環境も自分の力のうちなのです。大企業なら大企業の良さがあるし、スタートアップならスタートアップの良さがある、その環境にいることを選んだのは自分の決断だし、選ばれたのも自分の実力なのです。

自分でできないことがあったら謝罪するのではなく、周りに頼って感謝することです。きっと、なんとかなります。

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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