リーンスタートアップで小さく始めよう

リーンスタートアップで小さく始めよう

リーンスタートアップ”Lean Startup”という言葉を最近知りました。SonicGardenでは、アジャイル・Ruby・クラウドを実践してきましたが、開発だけをしている訳ではなくて、スタッフ一丸となってマーケティングも経営もしていたりして、それらを包括した言葉ってないのかな、と思っていたのですが、どうも「リーンスタートアップ」がうまくフィットしていると気付きました。

とはいえ、リーンスタートアップを学んだ上で実践している訳ではなくて、日々の試行錯誤の中で得たスタイルが、たまたまリーンスタートアップになっているということだけなので、正解かどうかはわからないので、自分たちなりのリーンスタートアップを考えてみました。(この正解かどうかわからないけど実践しているという感覚はアジャイルという言葉に対する感覚に似ていますね。)

リーンスタートアップを理解するのにわかりやすいスライドは以下にあります。平鍋さんが翻訳されブログで紹介されていました。

ここからは、私の考えるリーンスタートアップです。リーンスタートアップとは、ウェブサービスの新規事業を立ち上げる際の成功確率を上げるための考え方であり、手法であり、ベストプラクティス集です。新しいビジネスを成功させるということは非常に難しく、様々な知見が必要なはずです。幸運にも成功体験をした人は、次々と事業にとりくみ、その経験を深めていくことができるでしょう。しかし、新しいビジネスが成功する確率は非常に低く、よく「センミツ」つまり千個あれば3つしか当たらないと言われる世界です。

特にウェブサービスの場合、ただ起業をして八百屋を始めるのとは違い、ビジネスとしてスケールできることを目指しており、かつ、ユーザ自身も気付いていないニーズを発見し、新たな価値の提供とそれに伴う取引を産み出すことを目指しています。イノベーションですね。それは、非常に不確実性が高く、タイミングもあり、成功のための方程式など無い世界です。

一度、幸運にも成功した人だけがノウハウを蓄積できるのでしょうか。スタートアップにチャレンジして、運悪く失敗してしまったとして、そこでの経験やノウハウは、価値のないものでしょうか。いいえ、決してそんなことはなく、真剣に考えて行動し、取り組んだ経験をもってすれば、おそらく、もう一度チャレンジをしたならば、一度目のスタートアップよりもきっと上手に進めることができる筈です。それが経験です。

しかし、多くのスタートアップでは、デッドオアアライブ、生きるか死ぬかの世界だと思われています。一度でも失敗したら次のチャレンジが無いと思われています。実際、一昔前に起業すると言えば、そうだったかもしれません。もし実際に失敗した後の再チャレンジの機会がないとすれば、そこで得た経験がどこにも引き継がれないとしたら非常にもったいない話だと思いませんか。

もし、スタートアップをするのに、一度の失敗で人生の全てを失うほどのリスクを負わずに、しかも、一度や二度の失敗の経験を積むことで、成功の確率を高めていき、何度目かのチャレンジの果てに成功まで辿り着けるのだとしたら、スタートアップにもっと科学的に取り組むことができるし、起業リスクをマネジメントできるようになります。そうした考え方がリーンスタートアップです。

今、ウェブサービスを始めるとしたら、どれほどのコストがかかる、つまり、どれだけのリスクを負う必要があるでしょうか。ソフトウェアを構成する基盤のほぼ全てがオープンソースで提供されているので購入費用は必要ないし、実行環境もAmazonなどのクラウドを活用することで最初の段階では非常に低コストで運用が可能です。開発をするためのノートPCさえあれば、オフィスをもたなくてもできるはずです。そう考えると、ほぼ人件費だけで始めることができます。

このように、スタートアップに対するリスクを最小限にすることが出来れば、まず始めることが容易になります。スタートアップに対する投資を下げることができれば、恐れる失敗も小さくて済むことができます。小さく始めて、小さな失敗と小さな成功の中から、事業の経験を積み、学びを得ていくのです。リーンスタートアップでは、事業の見直しをすることを「ピボット」と呼び、継続する事業の繰り返しの中で、方向性を見直し続けて成功まで進めます。

このピボットをするかどうかが非常に重要で、最初に描いた事業がそのままうまくいく訳がないので、次へ次へと切り替えていかないといけません。日本の例で言えば、mixiも最初は求人サービスを展開していましたし、DeNAだって携帯オークションなどを手がけていました。ある時点でピボットした訳ですね。この最初に計画した通りにいかないというのは、ウォーターフォールのダメな点と共通します。受託開発で完成さえすれば良いようなビジネスであればウォーターフォールで良いかもしれませんが、リーンスタートアップではアジャイルであることは必須です。

既にある程度大きくなった組織や企業で新しい事業をするのに難しいのは、この計画に重きを置きすぎるというところがあります。スタートアップは正解がないので、成功するまでピボットを繰り返しながら、次々と内容を変えていかないといけません。しかし、組織をあげて新規事業をしようとすると、まずは計画に対する総意をとらないといけなくなります。その合意をとった関係者が多くなればなるほど、計画の変更が難しくなるのは容易に想像できます。企業の中で新規事業を成功させようとするのであれば、人件費の予算だけを確保して、その内容については口を出さないというのが、おそらく良いでしょう。ただ、そのために計画を通すのが大変、という鶏タマゴの問題があるので、うまくいかないのでしょう。

リーンスタートアップでは、繰り返しの中の学びを重視します。リーンスタートアップは低コストであると誤解されるかもしれませんが、そうではありません。確かに、一度にかける金額は低コストかもしれませんが、何の為に低コストにしているのかといえば、長く続けるためです。繰り返しの中の学びと経験を積んで成功の確率をあげようとするには、それなりの期間が必要になります。チームでスタートアップを長く続けることで、そこから成功を導きだすことができるのです。これは、アジャイルが速く安くのファストフードだと勘違いされているのに似ています。アジャイルも学びを重視し、その繰り返しが重要になるので、長く続けることを前提としています。簡単な例を出すと、1億の資金があったとき、3ヶ月で成功させるか、3年で成功させるか、と言えば、明らかに後者の方が成功の確率が高いと思いませんか。

リーンスタートアップであれば、すぐに始められます。今、サラリーマンや学生であれば、スタートアップする前に、ベンチャーキャピタルからお金を入れると支配されるとか、資金がないとプロモーションできないとか、色々と心配することが沢山あるかもしれません。しかし、まず経験もない人にVCも投資しません。そんな心配は投資が入る位まで注目を集めてからで十分です。最初に必要なのは、スタートアップに関する経験と学びです。それを得る為にも、リーンスタートアップで小さく始めることが大事になります。サラリーマンをあと2年経験してから、と考えるよりも、リーンスタートアップで2年経験した方が、経営者を目指す人にとって価値あるものになるでしょう。

リーンスタートアップであれば人件費くらいで済むとはいえ、その生活費を稼がずに資金がショートするまで続けるのは不安というのは理解できます。SonicGardenでは、日々の仕事しながらも、新しいチャレンジが出来るようなビジネススタイルを構築しました。その一つがサービス型受託開発であるカスタムクラウドという手法です。人月の受託開発をしないので、それぞれの個人の中で投資と受託をバランスもつことが出来るのです。この辺りの詳しい内容については、またの機会に書きましょう。

私たちがSonicGardenで目指しているビジョンは、次々とウェブサービスのスタートアップを立ち上げ経験し、社員が小さく失敗してもそこで人生が終わり、ではなく、そこで得た学びを組織として蓄積していき、何度もチャレンジできるような母体となる企業です。SonicGarden自体は一つのウェブサービスに特化するのではなく、ウェブサービスを産み出すアントレプレナーたちのトライブでありたいと考えています。SonicGardenは、リーンスタートアップを実践するための組織です。SonicGardenでは、私たちの文化と価値観に共感してコラボレーションしてくれるスタートアップや、ジョインしてくれるアントレプレナーを募集しています。まずはソーシャルメディア上で交流しましょう。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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