「納品のない受託開発」ビジネスモデルをオープン化! 〜 「ソニックガーデンギルド」を開始しました

「納品のない受託開発」ビジネスモデルをオープン化! 〜 「ソニックガーデンギルド」を開始しました

先日のブログで事例を公開した「納品のない受託開発」ですが、実際に現場で動くビジネスなので、必ずしも何も問題が起きないということはないですが、その上で前向きに一つ一つ問題をクリアしていっています。新しいことへの挑戦なので仕方ないですが、そうしたことを差し引いても、それでもやっぱり従来の開発よりも、お客様にも喜んで頂けているし、働くエンジニアもやりがいを持って働けているように感じています。

この「納品のない受託開発」をいくつも経験するにつれて、始めるまでは仮説だったお客様とエンジニアの両方の幸せを追求するこのビジネスモデルが、本当に良いものなんだと、実感を伴ってより深く感じるようになってきました。そして、このビジネスモデルをもっともっと広めたいという思いが強くなりました。

そのために私たちソニックガーデンが出来ることを考えていくつか実験した結果、「納品のない受託開発」ビジネスモデルのオープン化と、そのための仕組み「ソニックガーデンギルド」を始めることをにしました。そのプレスリリースも出しました。

この記事では、プレスリリースで書ききれなかったこと、ビジネスモデルのオープン化とソニックガーデンギルドに至るまでの思いや考えについて書きました。

「納品のない受託開発」をもっと広めたい

私はこれまで、ブログや講演などの様々な形で「納品のない受託開発」について紹介をしてきました。

おかげさまで多くの方に知って頂けるようになって、ご相談も沢山頂くようになりました。本当にありがとうございます。

しかし、私たちソニックガーデンだけでは、すべてのお仕事をさせて頂くのは限界があります。ソニックガーデンは小さな会社ですし、急拡大しないという哲学でやっていて、採用も時間をかけてやっています。そして、「納品のない受託開発」は顧問型のビジネスなので、一度契約させて頂くとずっと続くため、エンジニアが空くことは普通はありません。そういう訳で、簡単に限界が来ます。

そのことは多くの方からご指摘頂いていた点でもあります。私たちも、どうすればいいかずっと考えてきたところでもあります。

案件の数だけ人を雇うというのは簡単なことです。しかし、そうするとマネジメントをしなければならなくなります。マネジメントはプログラマの生産性を阻害します。また、一人のプログラマに沢山の案件を押し付けることも出来るかもしれませんが、その結果、お客様へのサービス品質が落ちてしまうなんてことはあってはいけません。なによりプログラマに強い負担はかけたくありません。

しかし、沢山のご相談を頂くのは事実であり、そうすると、なんとか力になりたいと、やはり強く思います。それに「納品のない受託開発」を広めていきたいという思いもあります。そこで考えたのが、ソニックガーデンだけが対応するのではなく、別の会社でも同じスタイルでビジネスをしてくれるところが出てきてくれれば良いのではないか、ということでした。

もちろん、ブログや講演を通じてビジネスモデル自体は紹介しているので、既に参考にして実践して頂いている会社さんもあると思います。それはそれで嬉しいことです。ただ、そういう会社があることは今のところ私には届いていないので、ご紹介は出来ません。今後は、そこはそことしてコミュニティを作っていきたいとは思っていますが、今回とは別の話です。

今回考えたことは、「納品のない受託開発」をもっと具体的に広めていくためと、ソニックガーデンに期待して頂くお客様にお応えできるようにするために、私たち以外の会社を「私たちから増やしていく」という方法です。それをうまく広める方法は、今の社員が「のれん分け」して、別の会社を作ることです。実は、その準備は進めていますが、それには時間がかかるため、もう少しスピードアップする方法も必要だと考えました。

そこで、私たちソニックガーデンが「納品のない受託開発」案件の紹介を行って、そのお客様と開発会社で直接契約を行いサービス提供してもらう仕組みを作ることにしました。その際にソニックガーデンは、これまで蓄積したノウハウと仕組みを元に、開発から運用までのすべてサポートを行うのです。その広げていく仕組みが「ソニックガーデンギルド」です。

ソニックガーデンギルドの仕組み

下図が、ソニックガーデンギルドの全体像です。

登場人物は、ソニックガーデンとお客さまとギルドのメンバーです。「納品のない受託開発」に対するニーズをお持ちのお客さまを、ギルドのメンバーの会社に紹介をし、そこで直接契約を結んで頂き、ギルドのメンバーからサービス提供を行って頂くモデルです。ソニックガーデンはギルドのメンバーに対して支援を行うことで加盟料を頂く形です。

案件を見つけてきてパートナーに仕事をお願いするというと、下請け構造のビジネスモデルにすることだって出来るかもしれませんが、そもそもそんな下請け構造のビジネスモデルが嫌で、そうした業界の古い慣習をなくしたいという思いで会社をやっているので、そんな選択肢はありません。

ビジネスにおいては、価値の提供者と受益者の間に関わる人の数を減らせば減らすほど効率的に仕事を進めることが出来ます。インターネットによって直接つながることが出来る時代になって、間に入ってマネジメントという名の伝言ゲームをするような仕事は徐々になくなっていくでしょうし、なくしたい。

直接契約をするということは、そこに責任が発生するということです。中間に入って保障だけをしてくれる会社は存在しないので、自分でリスクを持たなければいけないのは大変なことですが、そもそも間に会社が入ろうが入らなかろうが、責任は重いものなのです。だったら、直接に契約してもらっても構わないはずです。

一括請負のビジネスモデルであれば、検収されるまで支払いが行われないため、検収が終わるまでの間を耐えきれるだけのキャッシュを持っていなければ案件は受けられませんでした。つまり企業体力に応じたプロジェクトしか受けられなかったので、大きな会社が中間に入る価値はあったのかもしれません。

しかし月額定額のビジネスモデルでは、そんなことはありません。月々のキャッシュフローは安定するようになります。そうであれば、大きな会社が取引先の双方に保障するためのバッファとして存在する意味はないのです。

ソニックガーデンギルドでやりたいことは、中間に入る会社をなくしてピラミッド型の下請け構造を壊して、これまでにないフラットで直接に価値提供が出来るようなパートナーシップの形です。そう、お客さまとの「納品のない受託開発」における関係もパートナーシップであったのと同様に、メンバーとの「ソニックガーデンギルド」における関係もパートナーシップなのです。

このようなソニックガーデンギルドを作ったことで、次はそこに参加しても良いという企業の募集を開始することにしました。とはいえ、これまでのビジネスで続けられている会社が、いきなり全てビジネスモデル転換をすることは容易ではないでしょうから、どちらかというと、自ら起業したいとか、自分たちのサービスを作りたいと考えているようなエンジニアの方への起業支援に力を入れていきたいと思っています。

フランチャイズやクラウドとは違う新しい仲間の形

ソニックガーデンギルドの仕組みは、一見すると構造としては「フランチャイズ」のビジネスモデルに非常に似ています。ソニックガーデンが本部になって、ギルドのメンバーがフランチャイジーという訳です。「のれん分け」を仕組み化したのがソニックガーデンギルドなので、確かに似ていますが、違う点もいくつもあります。

まず、一般的なフランチャイズにあるようなマニュアル化は行いません。統一するのは、ビジネスモデルとその価値提供のスタイルであり、それ以外については、それぞれのプログラマの個性に委ねられます。プログラミングは属人的なスキルでもあり、お客さまとの関係づくりなども属人的なスキルです。プログラミングでは、同じものを2つと繰り返しで作ることがない仕事なので、マニュアル化するのはナンセンスだと考えています。

そして、ロイヤリティの決め方も月額定額にしている点が大きな違いです。売上高や利益に応じて決めてしまうと、どれだけ頑張っても多く取り分が取られてしまう、そうなると本部に依存する心理になってしまうこともあるかと思いますが、そうではなく自立してもらうことが大事だと考えており、加盟料は定額にすることで、各社が自分たちで試行錯誤して成長を目指してもらうようにしています。

そのためにも、自社の独自製品を開発してもらうことを奨励しています。フランチャイズであれば独自性は出せなくなることもありますが、ギルドではもっと創意工夫してもらいたいですし、思考停止せずに自分たちで考えるスタイルがソニックガーデン流なので、そのカルチャーはソニックガーデンギルドの会社でも持ってもらいたいと考えています。

スタートアップのお客さまを応援すること、私たち自身がスタートアップであることなど、そして、私たちソニックガーデンのビジョンのひとつが「いつまでも、いつからでも夢に挑戦できる社会にする」ということもあり、新しい挑戦をしやすい環境を作ることを目指しています。

ソニックガーデンの「納品のない受託開発」を実践することで、ストック型で受託開発をしながら、お客さまとは時間契約ではなく成果契約を行うため、自社サービスを開発する時間を持つことができます。安定したキャッシュフローの中で、自社製品の開発に取り組むことができるようになるのは、エンジニアのスタートアップとしては、ある意味で理想的ではないでしょうか。そこから成功するモデルを生み出していきたいのです。

ソニックガーデンギルドに参加する会社には、そういう意思を持ってもらいたいと思っています。ぜひ「納品のない受託開発」を続けながら、この世にないサービスを沢山生み出してもらうようになれば良いと考えています。

「納品のない受託開発」では、エンジニアのいないスタートアップを支援することで社会変革のお手伝いをさせて頂き、「ソニックガーデンギルド」では、エンジニア自身が起業するスタートアップも応援していきたいのです。スタートアップが沢山うまれてくることで、日本に元気な小さな会社が沢山でてくるようになってほしいのです。

ジェニュインブルーが最初の仲間になりました

ソニックガーデンギルドを立ち上げるにあたり、ただ構想だけを作って語ったとしても意味がないと考えました。そもそもは、「納品のない受託開発」を通じて、お客さまとエンジニアの幸せを、どう広げていけば良いかを考えたところからであり、「ソニックガーデンギルド」の形として出来上がったのは、本当に最近のことで、それまでは試行錯誤を続けている状態でした。

ソニックガーデンにしてみると、今回の「ソニックガーデンギルド」はひとつの新規事業です。この取り組みをボランティアやコミュニティで進めるのではなく、ソニックガーデンの収益としても成立することを考えた上での事業です。思いだけがあっても事業にしなければ続けることが出来ないからです。

今回、この新規事業を創りだすためにやったことは、事業計画を書いたり、ソフトウェアを開発したりする訳ではなく、様々な状況やニーズを把握しつつ、本当に多くの方と話をして、たくさんの協力を頂いて、徐々に形になってきたという印象です。こうした形での新規事業の作り方は初めてのことでしたが、改めて考えると、沢山の人と話をさせて頂くというのは、本質をついたやり方なのではないかと思います。

そうした中で出会ったのが、フリーランスで働いていた越川さんでした。越川さんとじっくり時間をかけて、様々な可能性を検討しながら、仲間との出会いや別れもあったりして、そうして、2013年7月に、株式会社ジェニュインブルーを設立してくれました。そして、ジェニュインブルーは、ソニックガーデンギルドの第1号としても参加してくれたのです。このエピソードについては、また別の記事で書きたいと思います。

今、ようやくソニックガーデンという会社だけでなく、「納品のない受託開発」を実践するジェニュインブルーという会社が出来ました。ジェニュインブルーとソニックガーデンは会社は別ですが、志を同じにする仲間であり、会社同士のチームでもあります。ソニックガーデンギルドとして、共に助け合って進んでいきたいと思っています。

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ソニックガーデンギルドに参加しませんか?

私たちソニックガーデンと共に、志をひとつにして、共に成⻑していけるチームとしての仲間を募集しています。

ソニックガーデンギルドを日本全国に広げて行きたいと思っています。ひとつの都道府県に少なくともひとつあるような、そんなことを目指しています。「納品のない受託開発」のスタイルであれば、場所にとらわれないで仕事をすることも可能です。だからこそ、地方にだって大きなチャンスがあると思っています。

ソニックガーデンギルドに入るためのプロセスは、まだ確立していません。この点も、しっかりと確立されたプロセスなんてなくて良いと思っています。人の数だけ個性や考え方があって、それぞれにおかれた文脈は違うはずなので、当面の間は、参加したいと言って頂ける方々と、じっくり話し合って、お互いを知り合って、そうやって仲間になっていってもらおうと考えています。そういったギルドに入る前の情報交換の場が、コミュニティになっていけば良いんじゃないかとも思っています。

ソニックガーデンギルドに入れる会社の条件は、私たちとカルチャーや価値観が近くあって欲しいと思っていることから、たったひとつだけ考えました。それは「社長自身がプログラマであること」それだけです。

ソニックガーデンのビジョンは以下の3つです。

  • 顧客企業の真のパートナーとして
    価値を提供し続ける
  • プログラマを一生の仕事にする、
    高みを目指し続ける
  • いつまでも、いつからでも
    夢に挑戦できる社会にする

この3つのビジョンを実現するために、ビジネスとして成立させる「納品のない受託開発」と、それを広げていくための「ソニックガーデンギルド」の両方の仕組みが必要です。このビジョンに共感してもらえるならば、一緒に実現にむけて歩んでいきましょう。より多くの方に、そのための仲間になって欲しいと思っています。

私の思いは、このビジョンの実現であり、その根底には、ソフトウェア開発に関わる人たちを幸せにしたいという思いがあります。

ソニックガーデンでは3つのチェンジというキーワードを掲げています。尊敬するケントベックとリンダライジングの言葉です。

  • Embrace Change ー 変化を受け入れ変わっていくこと
  • Fearless Change ー 変化を恐れず自ら変えていくこと
  • Social Change ー 自らの変化を周囲に広げていくこと

私は10数年前にアジャイル開発を知って、その変化を自分の中に受け入れていくことから、今のビジョンが始まりました。3年前、外からの変化を待つのではなく、自分自身が先に変わっていくことを実現するために、独立をしてソニックガーデンを起業をして「納品のない受託開発」を始めました。そして今、変化できた自分たちを、外の世界に広げていくことが次のステップなんだと考えるようになりました。それが「ソニックガーデンギルド」です。

これからは「納品のない受託開発」と「ソニックガーデンギルド」について、色々なところで、沢山の方と、もっともっとお話をさせて頂きたいと思っています。地方でも少人数でも、どこにでも行きますので、コミュニティや勉強会などを開催して頂けたら嬉しいです。

ぜひこちらのページからお問い合わせください。もしくは、メールやFacebook、メッセージリーフなどの手段でも構いません。よろしくお願いします。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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