2015年を振り返って考えてみると、やはり「リモートワーク」と「ホラクラシー」というスタイルが、ソニックガーデンに与えた影響は大きかったと思います。この記事では、それらがチームにどういった習慣の変化をもたらしたのか考えてみました。
目次
1)オンとオフは1日単位ではなく時間単位で取得できる
リモートワークについては以前から取り組んできた私たちですが、2015年は会社全体がリモートワークをするようにシフトした年でした。それまでマイノリティだった在宅勤務のメンバーが一気に増えて今では半数近くがリモートワークをしています。
やはり社長である私が自らリモートワークを始めたことが、メンバーたちの「脳のブレーキ」を壊すきっかけになったような気がします。オフィスに行くか家で仕事をするか、それは些細な問題で、いつ仕事をするのかは自分で決めるようになります。
リモートワークが当たり前になることによって場所から意識が解放されただけでなく、働く時間についても1日単位ではなく、時間単位でオンオフがあるように意識が変わりました。たとえ日中であっても昼寝や子供のお迎えなど普通にしています。
2)物理的なオフィスはチームで働くときに必須ではない
また「論理出社(デジタル出社)」という言葉をチームで共有するようになったことも大きな変化をもたらしました。Remottyというツールが私たちにとっての「仮想オフィス」であり、かつ、そこが全員出社する本社であるような感覚になりました。
そうなると仕事をするときはRemottyにログインさえしていれば良くなったので、居場所など関係なくなりました。渋谷にある今の物理的なオフィスはあくまで関東近郊に住む社員のためのサテライトオフィスのような存在に変化したのです。
今の物理オフィスには3年前に引っ越してきたのですが、当初の計画通りに人は増えたものの、リモートワークのメンバーがほとんどなので、持て余すようになってしまいました。2016年には、今の状況と考えに沿ったオフィスに移転する予定です。
3)人が増えるほどに管理をなくしてスケールに対応する
これまで私たちは、セルフマネジメントできる人材を揃えて、管理職のいらないフラットな組織づくりに取り組んできました。それは2015年になって「ホラクラシー」と呼ばれるマネジメントスタイルに近いものだということに気付きました。
ホラクラシーとは、階層構造によってマネジメントする「ヒエラルキー」に対するアンチテーゼとして提唱された言葉です。ホラクラシーで知られるブラジルのセムコ社の言葉を借りると、コントロールを放棄する経営だと私は認識しています。
ソニックガーデンは今や30人近くが一緒に働くほどの規模になりましたが、普通なら人が増えるほどにどうやって管理をするのか考えますが、ホラクラシーで考える私たちの場合は、より管理をなくすことでスケールに対応していこうと考えています。
4)契約書というハードウェアから脱却した「論理社員」
私たちが2015年に大きく経営的な転換をしたのは、ギルドと呼んでいた制度をやめて自社で人材育成をする方向にしたことです。それは「納品のない受託開発」をやるためには、長い修行の経験とチームでのサポートが必要だとわかったからです。
その際に正規雇用のメンバーとギルド的なメンバーで、仕事の内容から働き方、報酬に社内情報へのアクセス権など全てを同じに変えました。彼らの違いは、法的な契約書の上での言葉だけになったため、彼ら全員のことを「論理社員」と呼んでいます。
会社が売上目標をなくし、社員をコントロールすることをやめ、誰もが論理社員として同じ立場で働くようになったことで、会社とは誰かのものではなく、社員の誰もがよりオーナーシップを強く持ってくれるようになってきたように感じています。
5)時間でなく成果、数字に頼らないマネジメントの本質
リモートワークとホラクラシーを実践してきて感じることの一つは、中間管理職を置かないホラクラシーと場所にとらわれずに働くリモートワークは非常に相性が良かったということです。いずれかだけでは、うまくいかなかったように思います。
新しいワークスタイルによって会社がマネジメントするべきは、働いている時間ではなく成果であるという当たり前のことを突きつけられます。数字に頼ることなく、仲間の思いを一つにしてチームワークを高め、生産性を高めなくてはなりません。
そもそも会社とは何か、物理的なオフィスのことを会社と呼ぶのではなく、一緒に働く仲間がいて、共通の財布で売上と報酬を分け合い、見返りなく助け合える関係があって、その関係のことを会社と呼ぶ。そんな本質的なことに気付かされました。
リモートチームでうまくいく マネジメントの〝常識〟を変える新しいワークスタイル
日本実業出版社
売り上げランキング: 2,484