頭の回転は鍛えられる〜考える習慣がつくる思考の速さ

頭の回転の速さは、CPUでいうクロック数のようなものです。生まれつき速い人はいますが、CPUとは違って人間は後天的な努力によって、その速さを高めることが十分に可能ではないかと考えています。

足の速さに例えると、たとえ生まれつき足が速くなかったとしても、日々走り続けて鍛えれば、一定の速さを身につけられるでしょう。頭の回転も同じです。人間の思考も、努力によって鍛えられる部分があります。

才能は変えられないかもしれませんが、努力なら重ねることはできます。では、頭の回転を鍛えるために何ができるのでしょうか。

考えることを習慣化している

一つは、考えることを習慣化しているかどうか、と考えています。特別に「考えよう」と構えるのではなく、日常的に思考する習慣がある人は、自然と考える力が鍛えられているはずです。

逆に、普段から考える習慣がない人が、いきなり深く考えようとしても簡単にはうまくいきません。普段から走っていない人が、いきなりマラソン大会に出ても走れるわけがないのと同じです。

脳も筋肉と同じ肉体の一部なので、使えば鍛えられ、使わなければ衰える。筋肉と違って目に見えないため、衰えに気づきにくいのは怖いところですが、逆に言えば鍛えれば確実に差がつくと信じています。

日頃から考える習慣を持っていれば、いざ考える場面に直面しても、ある程度の速さで考えを構築することができます。

「準備して考える」で差がつく

考える力を鍛えるには、日々の小さな積み重ねが大切です。その一つが「準備して考える」ということです。

速く考えられる人は、短時間で多くの試行を重ねられるため、自然と深く広く考えることができます。逆に言えば、速さがないうちは、時間をかければ良いのです。

例えばミーティングに参加する時、アドリブで良いアイデアを出して話せるのは頭の回転が速くないとできません。それを真似するのではなく、事前に考えを整理しておけば良いのです。

たとえ想定外の展開になっても構いません。事前に考えること自体が、思考力を鍛える訓練になるからです。

私自身も新入社員だった頃、大企業なので社長と話す機会などありませんでしたが、もし何か話せるチャンスがあったら何を話そうかと考えて過ごしていました。今思えば、それも「考える訓練」だったのだと思います。

意思決定を伴っているかどうか

考える力を本当に鍛えるのは、実践の中にあると感じます。その一つが「意思決定」です。

考えるときに、何のアクションや変化に繋がらないまま考えているだけでは、本当の考える力は身につきません。意思決定を伴った時にこそ、真剣に考えることになります。

意思決定は、訓練できるものだと考えています。特に経営をするようになって、毎日が意思決定の連続でした。その決定が、たとえ会社が小さくても、関係する人たちに影響を与えるのかと思うと、怖かった。

だから、意思決定のたびに一生懸命に考えました。何度も意思決定をしていくうちに、段々と意思決定までが速くなっていきますし、大きな意思決定もできるようになった実感があります。

考える力は、AIに任せれば良いと思う人もいるかもしれませんが、AIは意思決定までは担えません。AIは補助具として使い、意思決定できるだけの考える力を身につけていくことが大事だと考えています。

言語化してこそ思考は鍛えられる

考えていることの言語化も重要です。頭の中でモヤモヤ考えているだけでは、思考は整理されず「悩み」の段階にとどまります。言葉にすることで、自分の考えの構造が明確になります。

このとき、できるだけ多くの語彙を持っている方が、考えの幅も広がると考えています。逆に言えば、語彙が少ないと、それが思考の制約になるのです。言葉は認識を広げます。

本を読むことで得られることの一つは、語彙を増やし、視野を広げ、結果として考える力を鍛えることにあるのだと思います。

言語化に慣れないうちは、最初はメモで良いので、考えを書き出す習慣を始めるのも良いでしょう。書き出して言葉にしていくことで、曖昧に頭の中を占めていた悩みが結晶化され、考えに変わります。

日常の行動も思考トレーニングになる

考える機会は仕事だけに限りません。料理をしながら「もっと効率的にできないか」と考えたり、運動しながら「もっと良いパフォーマンスを出すにはどうすれば良いか」と考えることもできます。

試行錯誤して改善していこうとすれば、自ずと考えることになります。つまり、好奇心と改善意欲さえあれば、どんな行為も思考のトレーニングになります。

もちろん、考える仕事に就けばより密度の濃い実践が可能ですが、日常生活の中でも十分に鍛えられます。結局のところ、頭の回転を速くする秘訣は「ずっと考え続けること」に尽きるのではないでしょうか。

考える習慣を身につければ、思考の速さ、深さ、広さを少しずつ育てることができます。これは誰にでも可能なことです。日々の小さな思考を積み重ねる習慣が、頭の回転の速さにつながっていると信じています。

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倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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