先日、リフレーミングをテーマにしたワークショップで話をする機会がありました。恥ずかしながら、リフレーミングという言葉はそこで初めて知りました。

リフレーミングとは、意味を変えるために、その人が持っている枠組(フレーム)を変えること。リフレーミングの例としてよく挙げられるのが、「コップに半分の水を“もう半分しかない”と捉えるか“まだ半分ある”と捉えるか」の喩え。(考え方を「リフレーミング」して、前向きな思考を身につけよう - NAVER まとめ

なんとなくわかるようなわからないような。見方を変えることで、取り組み方も変えることが出来る、ということでしょうか。今回の記事では、その「リフレーミング」という観点から「納品のない受託開発」を考えてみました。

Framed
Framed / Rodrigo Baptista

一括請負では旨味のない案件だった

「納品のない受託開発」でお仕事をさせて頂く案件としては、インターネットを活用した新規事業が多いです。そのために必要なITやソフトウェアに関して全て、私たちソニックガーデンが引き受けて担当するというケースです。

インターネットを活用した新規事業の場合、サービスを開始するときの機能と、そこから例えば1年後の機能で同じということはなくて、様々な機能追加やバージョンアップが行われることになります。最初に立派なものを作りきってしまうよりも、少しずつユーザの反応を見ながら、改善を繰り返していくという特徴があります。要件定義をして作っておしまい、という訳にはいきません。

インターネットの特性は、ユーザと直接つながることが出来るということです。中間業者や店舗がある訳ではないので、ユーザからのフィードバックも直接受けることが出来ます。そのユーザからのフィードバックをいかに早く受け取って、いかに早く反映していくか、ということは、ユーザを離さないためのポイントにもなります。

一度に沢山立派なものを作りあげるよりも、なるべく早く市場に出すことと、市場に出したことでユーザから得た学びをソフトウェアに反映させていきたいと、サービス提供の事業者は考えているはずです。

よく「仕様変更」というと、開発者は身構えますし、開発会社は抑えようとするでしょう。仕様変更を悪だと思っている節があります。しかし、仕様変更とは本来は「良いこと」なのです。なぜならば、本当に必要だったものがわかってきた、つまり正解に近づきつつあるということだから、仕様変更が必要になるのです。事業をする側からすると、悪意をもって仕様変更というのではなく、事業の成功のために仕様変更が必要なのです。だとすれば、仕様変更は前向きに捉えるべきです。

特に、インターネットの世界では正解がありません。そのときの環境やユーザ数によっても変わってくるので、常に求めるものは変わっていきます。「仕様凍結」なんて出来るわけがないのです。

また、社員向けのシステムとインターネット向けのサービスでの最も大きな違いは、利用者の増加という点です。社員向けであれば、ある程度の利用者数は把握できます。しかし、インターネット向けの場合は、社員の数を遥かに超えて増えていく場合があります。しかし、最初からそこまで必要ではなく、小さく始めたいというのも新規事業の思惑です。小さく始めて大きく育てるようなインフラが必要です。

こうした特徴のあるような新規事業のソフトウェアという案件は、従来の一括請負の会社からすると、とっても扱いづらい案件でした。バッファを思いきり乗せることが出来るようならまだしも、イマドキの新規事業で、そこまで初期投資をかけるような市場状況ではありません。つまり、インターネットを活用した新規事業のシステム開発は、美味しくない案件だというのが一つの見方です。

なにより、一括請負で開発をするためには、相手の資金的な信用が大事になります。本当に小さな会社で、資金力があやしいとなると、開発しても支払能力がなかったりすると大損になってしまうので、開発会社は回収リスクの高い小さな会社の仕事は受けたがりません。信用調査をして、振るいにかけているはずです。

リフレーミングしてビジネスを変える

一方で、「納品のない受託開発」で行っているのは、その一括請負の開発会社からすると、まったく美味しくない案件である、インターネットの新規事業をしたいというお客さまを中心にお仕事させて頂いています。普通に考えると美味しくないと思えるような案件に取り組むのが、私たちの行った「リフレーミング」なのです。

「納品のない受託開発」で行っているのは、月額定額の受託開発です。開発にかかる金額を決めて、その金額内に機能を作るのではなく、月々一定の金額と出来る成果を決めて、その中で機能のスコープを調整しながら進めます。働く時間で約束するのではなく、毎週の成果を出して満足頂くことを価値として提供していきます。

「納品のない受託開発」を行うエンジニアたちが最も大事にしている指標は、お客さまとのお仕事の継続率です。どれだけ長い間、お客さまから信頼を頂き、事業拡大のお手伝いをすることが出来るのか、それが大事です。「納品のない受託開発」では、一度契約が始まるとゼロから作るところから成長していくにつれてずっと面倒を見させて頂く前提でいます。どこかで頑張って納めたら終わりということではなく、成長にあわせて直し続けていくのです。

お客さまとの関係が長く続けることができれば、エンジニアが空いてしまうこともないし、新規営業にかけるコストもいらなくなります。それは開発側の会社にとっても嬉しいことです。もちろん関係が続くということは、お客さまの事業が続いているということでもあるため、お客さまにとっても嬉しいはずです。つまり、お客さまと開発会社で同じ方向性を向くことができ、それをかけ声でなんとかするのではなく、ビジネスとしても直結しているのです。

そうであれば、機能の豊富さよりも早くサービスを開始して、ユーザからのフィードバックを得たいというニーズに対応することも、私たちのビジネスモデルなら可能です。月額定額が決まっており、出来る範囲で入れ替えられるので仕様変更だって前向きに捉えることができます。必要なものを先にまわして、優先順位の低いものは後回しにすることを調整なく自然と出来ます。

また、扱う環境はすべてクラウドを活用しています。そのためサービス開始の当初から大きなサーバーを用意する必要もなく、スモールスタートが出来ますし、必要に応じて大きくしていくことが可能です。

月額定額をお客さまから頂くという「納品のない受託開発」という事業の設計では、1社からどれだけ沢山のお金を出してもらうかという発想ではなく、各社から頂く金額はそれなりに抑えて一定にして、お客さまの数を増やすという方針で行っています。1社に依存すると経済的に自立できなくなってしまうことは、ビジネスを進める上でも不利になってしまいますし、お客さまへの意見も言いにくくなってしまうでしょう。そこで、私たちは、1社ずつは小さくてもそれで儲かるようにして、その数を増やしていく方針を採っています。

さらに月額定額の良いところは、お客さまの会社の規模を気にせずに取引が出来るということです。一括請負の会社であれば、支払能力の審査で落ちてしまうかもしれない新規事業をしようとしている方々とも、我々は一切の信用調査などせずにお付き合いができます。毎月のお支払いになるので、完成したのに支払われないというリスクがないからです。

私たちはビジネスモデルを変えてしまうことで、これまでは美味しくないと思われていた案件さえも「リフレーミング」して考えて、大事なお客さまとして取引することができるし、そうすることで大きなブルーオーシャンが広がっている市場を見つけることが出来たのです。

リフレーミングに必要な4つの姿勢

「リフレーミング」して考えるためにはコツが必要な気がします。私たちソニックガーデンでは、最初からリフレーミングすることを狙った訳ではなく、様々な案件をしていく中で、これまで美味しくなかった案件の見方を変えて、自分たちにフィットする案件だと見つけられるようになったのです。結果としてリフレーミングしたことになっていますが、きっとそういうものではないか、と思っています。

そうやって結果としてリフレーミングを得るために日々の仕事の中で出来ることは何か、4つの姿勢があるように思います。

  • 本質を捉える
  • 変化を恐れない
  • 徹底的に行う
  • 思考停止しない

本質を捉える

リフレーミングはあくまで見方を変えるということで、本質は変わりません。なので、なるべく最初から本質を捉えて、自分たちにあう見方を探っていくことが大事です。本質を見失い、軸を持たずにフレームを変えたとしても、正解には辿り着けません。

私たちソニックガーデンでは、本質を捉えるために普段から「そもそも」という言葉をよく使います。よく問題が起きたときに「なぜなぜ」で分析するという話もあるかもしれませんが、私たちはそもそも問題が起きないようにするにはどうすれば良いかを考える方が本質的だと考えています。つまり、どんなことも理由つまり本質があって、それを知るためのキーワードが「そもそも」なのです。

変化を恐れない

リフレーミングするためには、自らの立ち位置を変える必要が出てくる可能性があります。見方を変えるというのはそういうことです。自らの立ち位置を変えていくことを恐れていてはリフレーミングを成し遂げることはできません。

変化を恐れない、といってもどうすれば良いかわかりませんよね。私たちソニックガーデンでは、大きな変化には大きな勇気が必要だけど、小さな変化には小さな勇気で良いと考えていて、なるべく変化することを当たり前のことにするように、普段から変化を受け入れて起こしています。たとえば「ふりかえり」です。そうして変化する習慣がついてしまえば、変化することは怖くなくなります。

徹底的に行う

リフレーミングすると見方が変わるので、これまでの常識が通用しなくなってしまうことがあります。そうしたときに、あくまで過去の常識に縛られつつ、リフレーミングした頭で考えようとすると、必ずどこかで綻びが出ます。

リフレーミングしたならば、そのベクトルの中ですべてを徹底的にすべきです。一部だけやったとしてもそれはうまくいかないでしょう。その新しい見方の中で本質を捉えて、すべきことを考え直せば、それまでの常識とは違っていても、きっとうまくいきます。先ほどの例で言えば、お客さまの信用調査は過去の習慣に従うならすべきことですが、本質を考えたら不要だとわかります。

思考停止しない

「リフレーミング」なんてカッコいい言葉にした瞬間に、どうやってリフレーミングしようか、なんて考えてしまう人も多いことでしょう。それが大きな間違いではないか、と思うのです。

大事なことは問題の本質です。本質を捉えて、それをどうやって頭を柔軟にして色々な観点から見直すか、それを続けていくことでしか新しいフレーム(見方)は手に入りません。どこかで思考停止して諦めてしまうことはリフレーミングではありません。どうすればいいか、ずっと考え続けるしかないのだと思います。