今、私は社内ベンチャーの責任者をしています。社内という温室ではありますが、一応、経営をしている訳です。

なぜ社内ベンチャーという形なのかは、いつか書く機会があれば詳しく書きたいと思いますが、今のTIS株式会社というSIerでは出来ない新しい事業にチャレンジするために、既存の事業構造とは分けて活動しやすくするということが主な理由です。

今回、私たちSonicGardenが取り組んでいるのは「新規事業」ということで、今まで会社でやってこなかった事業な訳です。毎日が試行錯誤で、マーケティングなどは少し試してみてうまくいくときは続けてみたり、駄目だったら見直してみたり・・・というような感じで進んでいます。こんな状況では、"アジャイル"な体制でなければうまくいく訳がないです。やってみてわかってきたことですが、"アジャイル"は、何もソフトウェア開発だけでなく、今回のような探索型の事業経営、新規事業の立ち上げにも多いに効果を発揮してくれます。アジャイルと経営についての話しも、また今度。今回は、人材の話です。

新規事業の立ち上げ時に、どういった人材が有用なのか、そして、アウトソーシングしないといけない場面ではどのように使うべきなのか、気づきをまとめてみます。

新規事業ではフィードバックが大事

新規事業の立ち上げという業務では、定型的な業務は、ほとんどありません。SonicGardenの場合は、まだ社内ベンチャーということなので、いくつか親会社のしきたりに従うための定型作業は残っていますが、それでも、ほとんどが新しいことを作り出すことに注力しています。

新規事業を進めていく中で、大事だとわかってきたことが一つあります。それは「フィードバックを受けて変えていくこと」です。まるで、eXtremeProgrammingのようなことを言ってますが、本当に実感しています。

新規事業を始める際は、当然ですが、親会社からの資金援助を受けるためにも、しっかりした事業計画書を作りました。市場調査、顧客ターゲットの選定、価格設定、付加サービスなど、その時点で持っていた「アイデア」をもとに、予測分を含めた上で、事業計画をたてたんですね。しかし、その通りに行く訳はなくて、色々なことがおこります。その際に、当初作った計画からなるべく外れないように事業経営の判断をしていこうとしても、駄目そうだな、と思うことがあります。

それはそうで、事業計画書を作った時点よりも、私自身も経験を積んできているので、過去の時と違った判断ができるようになってきているからでしょう。そうなると、事業を進めていく中で外部/内部からのフィードバックを受けて、微調整を繰り返していかざるを得なくなります。トライ&エラーで、正解をさぐっていくような感じですね。

事業経営でも「変更容易性」が重要かも

進め方自体の見直しを繰り返しながら進めるような、新規事業の立ち上げの際に、事業の体制/あり方の重要なポイントは、「変更容易性」になってきます。

例えば、事業立ち上げ時期の数人という少人数のタイミングで、【業務ルール】は必要でしょうか?もちろん、お互いの約束事は大事ですが、それを【業務ルール】という形で明文化する必要はありません。【業務ルール】を作ってしまったが故に、自分たちのフットワークを重くして動きを制限することが起きてしまうことがあります。なにより数人のためだけに、明文化するコストがもったいないです。

別の例では、事業向けのWebサイトを用意したりしますね。ホームページ作りそのものは、事業の本質ではない場合に、アウトソーシングしてしまうこともありますよね。その際も、後から改修が入ることを想定した上で、アウトソーシングしないと後悔することになります。新規事業の立ち上げ時期は、色々と変更していくことが多いので、サービスメニューの変更などがあった際に、すぐにWebサイトも変更できるようになっていた方が良いです。そのためには、完成品まで丸投げしてお願いするのではなく、その先は自分たちで改修していけるような発注をしないといけません。ずっとアウトソーシングしていければ良いですが、どうしても反応が遅くなりますし、コストもかかってしまいますからね。

お腹が空いたときに狩人に何を頼むのか

どこかで聞いた中国の故事だったか忘れましたが、こんな話を読んだことがあります。(うろ覚えなので、ちょっと脚色します)

昔、優れた狩人が旅をしているときに、とある村に立ち寄りました。その村では、その年、大変な食料不足に悩んでおり、訪れたその旅人に、食料となる獲物を求めました。旅人は、その狩猟の技術を使って、鹿やウサギを採ってきて宿代代わりに置いていきました。村人も大変喜びました。
また、旅を続けると、別の村でも同じ状況になっていました。その村人は旅人にお願いしました。「狩りの仕方を教えてほしい」と。旅人は村人と一緒に狩りをして、一人で狩りをするよりも収穫は少なかったですが、村人は大変喜びました。
数年後、狩人がそれらの村を再び訪れたとき、最初の村はすでに滅びていました。

・・・みたいな話でした。新規事業の立ち上げ時期でも同じ教訓が活かすことができます。やみくもにアウトソーシングするのではなく、「自分たちの足りない経験を得るために、外部のプロフェッショナルを活用する」というスタンスが重要になってきます。なので、アウトソーシングした先と一緒に仕事をする時は、「いかに盗んで自分のものにするか」という学びの姿勢が大事です。

プロフェッショナルとジェネラリスト

さて、それを踏まえた上で、新規事業を立ち上げる際に必要な人材を考えたとき、私は2種類あると思っています。一つは、とある特定分野に特化したプロフェッショナルな人材、もしくは、ある程度のことならば何でもこなせるジェネラリストな人材か。前者であれば、アウトソーシングする必要がなくなるので、「変更容易性」を保ったまま、事業の改善ができそうです。しかし、全員を全分野においてプロフェッショナルを、リスクの高い新規事業の立ち上げ時に集めるのは難しいのも事実です。

そこで、ある程度なんでもこなせる人材もいた方が助かります。新規事業なのだから、最初から経験豊富という訳にはいかないので、むしろ、このジェネラリストでありつつ、先ほどのアウトソーシングした先から「積極的に学ぶ姿勢」を持っている人材こそ、欲しい人材です。

そして、本当のプロフェッショナルの部分は、新規事業にとってのコアコンピタンスとなり得るところで集める必要があります。SonicGardenで言えば、(ソフトウェア+クラウド)で出来るサービス実現力の部分は、アウトソーシングする気もなく、プロフェッショナルを集めています。

プロフェッショナルとジェネラリスト、いずれの場合でも、新規事業の立ち上げのタイミングで必要な素養は、「自ら、考えて学び、動ける」というところです。そして、日々の新たな仕事の中で学んでいくことで、変化していくことのできることが、新規事業に携わる醍醐味でもあります。変更していけるのは成長している証拠です。

新規事業を立ち上げる組織が持つべき大切な価値観の一つに「変更容易性」というのがありそうです。