経営者もそうでない人も、経営戦略に関する本を読んだことがある人は沢山いると思います。

私も経営者になる前からも、経営者になってからも沢山の経営戦略の本を読んできました。経営戦略を語る本は、それぞれの著者が主張する戦略を述べるものが普通です。だからこそ様々な本を読んでる訳ですが、それぞれの経営戦略につながりがあることなんて考えたこともなかったです。

この「経営戦略全史」は、そんな古今様々ある経営戦略を俯瞰的に、歴史からすべてを辿って紹介している本です。

経営戦略全史 (ディスカヴァー・レボリューションズ)

本文中で登場した人物は延べ132名、書籍は72冊、会社は110社でした。およそ20世紀初頭からの100年を概観し、そこで出現した90個余りの経営戦略コンセプトを紹介してきました。(おわりに)

400ページ超の分厚い本なので、買ってからしばらくして躊躇していたのですが、読み始めてみると、想像以上に読みやすく、わかりやすい本でした。登場する経営戦略は非常に多いのですが、その経営戦略を提唱している人たちの思想や生き方もあわせて説明しているため、伝記物を読んでいるかのように読むことが出来ます。

それぞれの経営戦略や言葉を知っていたとしても、その経営戦略がどのような流れの中で出て来たのか、何を目指していたのかを知ることは、最新の経営戦略を知る上でも重要なことだと読んでみて、感じました。

本書を読んで、私の理解した経営戦略の歴史をざっと振り返ってみます。

「科学的管理」のテイラーと「人間的議論」のメイヨー

「科学的管理」を提唱したテイラーから「経営」の歴史は始まります。彼の主張から「定量的分析や定型的計画プロセスで経営戦略は理解でき解決する」という「定量的分析」の大テイラー主義につながります。

もうひとつの流れは、「企業活動は人間的側面が重く定性的議論しか馴染まない」と考えるメイヨーの「人間的議論」という主張から連なる大メイヨー主義です。メイヨーと言えば、ホーソン実験が有名です。

この本を読むまで、私はテイラーの思想があまり好きではなかったのですが、考えを改めるようになりました。テイラー自身が考えていたことと、それを駆使する経営側にギャップがあったことを知りました。

『科学的管理法の原理』の最初で、テイラーは言っています。
「管理の目的は労使の最大繁栄」にある。そして従業員の繁栄とは賃金だけでなく「生来の能力の許すかぎり最高級の仕事ができること」だ、と。  -- p.35

ポジショニング派とケイパビリティ派

大テイラー主義から連なるのは「儲かる市場」を見つけ「儲かる立場」を確立することこそが経営戦略だと考える「ポジショニング派」の人たちです。マネジメントの教科書で出てくるようなSWOT分析、PPM、ファイブフォース分析など、様々な分析的手法が生み出されたのもこの流れからです。

一方で、外部環境に依存するのではなく、自社の「企業能力(ケイパビリティ)」を高めることこそが競争に勝てると主張するのが「ケイパビリティ派」の人たちで、大メイヨー主義が背景にあります。

そして、それぞれの主張を組み合わせて、状況に応じて組み合わせるべきだというミングバーグをはじめとする主張が出てきます。外部環境の変化にあわせて、ポジショニングもケイパビリティも変わるのだと。そして、ミングバーグの言葉が過激で面白いです。

ミングバーグはしかし、もっと過激に言いました。経営戦略とは芸術であり、手芸品(クラフト)である。計画的につくれるものではなく、創発的にしか、価値のある戦略は築き得ない!と。  -- p.373

イノベーションの時代にこそ「試行錯誤型」経営

21世紀に入ってからは、ITをはじめとする技術進化のスピードが劇的に向上し、あわせて経済環境の変化のスピードもあがってくる時代に入ります。その中で経営において重要な要素を占めるのが「イノベーション」です。

イノベーションを起こした企業こそが勝ち残ることが出来る時代になって、変化のスピードが速くなってきたことで、それまでのようにポジショニングやケイパビリティをしっかりと考えている場合ではなくなります。

そこで考えられたのが「やってみなくちゃ、わからない」を前提とした「アダプティブ戦略」です。現在、勝ち残っている企業、アマゾンもグーグルもアップルも、それぞれのイノベーションスタイルを確立しています。そこで登場する経営戦略が「リーン・スタートアップ」です。

「やってみなくちゃ、わからない」ということ、そして、どう上手く素早く「やってみるか」、そしてそこから素早く「学んで修正して方向転換するか」という力こそがすべてだ、ということでした。高速試行錯誤の力です。  -- p.375

そして、ソニックガーデンが登場します

このように経営戦略の歴史を辿っていくと、最後の答えとして「アダプティブ戦略」にたどり着きます。そして、その流れの中で、スティーブブランクの「顧客開発」と「リーン・スタートアップ」が紹介されています。

アイデアだけを盲信して商品開発をしてから販売をしようとするから失敗するので、まずは顧客を開発せよ、というメッセージの「顧客開発」。その顧客開発の思想をベースに、スタートアップにおけるムダをなくし、失敗の確率を下げるため「構築・計測・学習」の試行錯誤サイクルを重視するのが「リーン・スタートアップ」です。

そしてその「リーン・スタートアップ」の事例として、なんと、私たちソニックガーデンのことを紹介して頂いています。私たちの主力事業であるSKIPを育てていく際にとった方法がリーンスタートアップ的であり、それが事例になっています。

この本で紹介されている多くの素晴らしい企業に並び、しかも、経営戦略の最後のまとめとも言える章に、事例として載せて頂いて、とても嬉しく思いました!ありがとうございました。

2009年創業のソニックガーデンは、その主力商品である社内SNS「SKIP」で、2度のピボットを経験してきたといいます。


 

目次

  • 第1章 近代マネジメントの3つの源流
  • 第2章 近代マネジメントの創世
  • 第3章 ポジショニング派の大発展
  • 第4章 ケイパビリティ派の群雄割拠
  • 第5章 ポジショニングとケイパビリティの統合と整合
  • 第6章 21世紀の経営環境と戦略緒論
  • 第7章 最後の答え「アダプティブ戦略」
  • 補章 全体俯瞰のためのB3Cフレームワーク
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