インタビュー

採用の課題から考えた「プログラマ育成の場」とは

本シリーズ「今月のふりかえり」では、ソニックガーデンの顧問ライター長瀬が倉貫へのインタビューを通じて、現在進行形の取り組みを記事にしてお届けします。

今月のテーマは、プログラマの採用と育成です。若手プログラマの採用のために「育成の場」に着目し、ひとつの試みとして開催した“ハードな”プログラミング合宿。はたして、若手の採用とプログラミング合宿がどう繋がるのでしょうか。

プロセスを重視した採用へのこだわりと課題感

ーー ソニックガーデンは採用プロセスも独特ですよね。入社前に一緒に仕事をしてみたり、価値観の共有のために読書感想文を書いたり…。

そうですね。じっくり時間をかけて、お互いに納得のいくまでコミュニケーションを取っていくので、1年〜2年かけて入社してくれる人も珍しくありません。こうしたプロセスはこれからも大切にしていきたいと思う一方で、そうなると中途入社で入ってくる人数というのは多くても年に2~3人程度にはなるんですね。

ーー それだけ時間をかけていれば、そうですよね。

といっても、急成長を目指しているわけでもありませんので、中途入社に関してはそのくらいの採用ペースでいいかなとは思ってはいます。急いで人を増やして、我々が大切にしてきたカルチャーが崩壊してしまうのは本末転倒ですから。

それに、我々が理想とする仕事のあり方や考え方、つまり流派に共感してくれて、なおかつ顧問プログラマとして活躍できる人の母数は、そもそも多くないというのも自覚しています。ただでさえ、世間ではプログラマが人手不足と言われている状態ですからね。

ーー プログラマが足りない、というのは他の会社でもよく聞きます。

ただ、おかげさまで「納品のない受託開発」にご相談いただく数は増えてきており、お待ちいただく状況も生まれています。「納品のない受託開発」は、事業が続く限りずっとパートナーとして開発を続けていきますので、なかなかプログラマの空きが生まれにくいビジネスモデルでもあります。

私たちとしては価値観や文化を守るために一気に人を増やすことはしないけれど、お客様をお待たせし続けるのも心苦しい。じゃあ、どうするかを考えたときに、短期的な解決はできないけれど長い目で見たら若い人を育てて、ソニックガーデンの流儀を身につけたプログラマを増やしていくのはどうか、と考えたんですね。

ーー 若手の育成ですか。新卒入社はこれまでもありましたが、今後はより力を入れていくということですね。

はい。これまで新卒採用はプログラマに限定した採用というよりも、ソニックガーデンというコミュニティの中で純粋培養で文化を継承してもらうことを期待して、様々な仕事に取り組んでもらっています。そうした新卒採用は続けますが、今後は加えて最初からプログラマを目指す方の入り口も増やしていこうと考えています。

これは、会社としても創業から10年が経過して少しですがゆとりができたことも大きいです。また私個人としても、経営者として次に何に力を入れていこうかと考えたときに、若手が育つ場を作ることに取り組んでみたらどうだろう、という思いも芽生えてきました。

若手プログラマが経験を得る場が減ってきている

ーー とはいえ、若い人も誰でもOKというわけではないと思いますが、そこはどのように採用を行うのでしょうか?

そうですね、現場での経験もあると良いですが、そうでなかったとしても、プログラミングの本質を掴んでいて熱意があることが重要です。即戦力を求めているわけではないので、入社後に適切に経験を積むことで、数年後にでも顧問プログラマとして活躍してもらうことを望んでいます。

ただ、その判断は非常に難しいです。面談だけでは判断できませんし、何か作れるほどの経験はないわけですから、技術試験をするわけにもいきません。そこで、発想を逆転させて、採用して育成をするのではなく、先に育成の場を提供してしまうのはどうだろうか、と考えました。受け取る前に与える、ですね。

ーー 採用のために、育成の場を提供してみたらどうなるだろう、と。

もはや、そう考えると私たちの採用のためだけでなく、世の中で活躍できるプログラマを増やすことを目的とした育成の場を提供するイメージです。

昨今、若いプログラマが育つ機会を、会社が提供しづらくなっているのではないかと考えています。例えば事業会社であれば、事業の成長こそが会社の本懐であって、何年も育成に時間のかかる若いプログラマを抱えることは、その企業のミッションに沿うものではないでしょう。そのため業務委託などで腕のあるプログラマを一定期間だけ雇う、というサイクルを繰り返している会社もあります。

また、これだけ流動性が高まっている人材市場の中で、若い人を採用して育成したとして、ずっといるかどうかは予測できません。抱え続けることも困難でしょう。せっかくコストをかけて育てたのにいなくなるのなら、いっそ業務委託で・・・という考えがあるのも仕方のないことだと思います。

ーー そうなりますよね…。

そうした背景もありますが、私たちソニックガーデンでは、あえて若手の育成の場に投資をしてみてもいいのではないか、と考えているんです。むしろ、我々の会社は育成に向いているんじゃないかとも思っています。

プログラマが育つために必要なのは時間と型

ーー どういうことでしょうか

1つに、私たちは会社としての急成長は求めておらず、なんだったら「プログラマを一生の仕事に」と謳っています。そういう会社なので、事業計画に合わせて無理に人を増やそうともしません。長い視点で、一緒に働くことを前提に入社してもらえる会社でもあるんです。

ーー 年間計画に合わせた採用をするために、価値観よりも能力を優先して採用してしまう。結果、ミスマッチになって早期離職してしまう…というのはよくある話だと思いますが、そういうことがまず起こらないということですね。

価値観はしっかり摺り合わせるので、これまでも離職率はすごく少ない状況です。一回入ったら、じっくりここで育ち、活躍するまで見守ることができる、そういう会社です。また、お客様との関係も長いビジネスモデルなので、短期的に戦力にならなくても、ある程度は育つまで待つことができます。

それからもう一つ、先月話したように、ソニックガーデンは1つの流派みたいなものなので、仕事やプログラミングには型があります。そうした型を教えることのできるプログラマもいます。

ソフトウェア開発の姿勢には非常にこだわっているので、学べることはたくさんあると思います。もちろん、受け身で教わって身につくものでもないですし、自ら獲得していくことが大事です。そうした成長のイメージも、しっかり摺り合わせたうえで入社してもらえれば、いずれプログラマとして活躍できるようになると考えています。

ーー 確かに、しっかり型があるのはお互いのメリットでもありますね。

そうです、若いうちはまず型を身につけてもらいたいと思っています。最初から自分なりのやり方があるのは一部の天才だけで、多くの人にとっては型を身につけることが修得の王道になると思います。私も、若い頃に型から身につけた覚えがあります。

それに、私も思い返してみると、今いる役員たち、つまり創業メンバーの半分ぐらいは、前職で私がマネージャーをしていた頃に新卒として入社した人たちなんですよね。そう考えると、少なからず私には育成してきた実績があるんだというのを思い出して、そうした過去も背中を押す要因になりました。

ーー そこは、社史のストーリーを書きながら驚いた部分でもあります。新卒から育てた部下と起業し、彼らは今は役員や副社長となって活躍している…というのはストーリーとしてもできすぎていると思ってました。

できすぎですね(笑)とてもありがたいです。

そんなわけで、さっそくオープンな育成の場を実験的に開いてみようと行ったのが「ソニックガーデンジム」と「ソニックガーデンキャンプ」になります。

ーー あ、すでに実験まで進んでいたんですね。もう終わったのですか?

ジムは今行っている最中(取材時点)で、キャンプは昨年の12月から1月にかけて実施して第1期を無事に終えたタイミングです。

ーー 応募要項を見ると、ジムが経験者、キャンプが未経験者をそれぞれ対象にした学生・第二新卒向けのプログラミング合宿となっています。じゃあ、ちょうど第一回目が終わったというキャンプの様子や手応えなどについて、伺いましょうか。

未経験からのプログラミング合宿「キャンプ」

ーー まずは、簡単に概要を教えてください。

ソニックガーデンキャンプ(以下、キャンプ)はプログラミング未経験者、Ruby on Rails未経験者でも参加可能なプログラミング合宿です。第1期は、昨年の12月20日から1月14日まで、土日とお正月の三が日以外は全日9:30~18:30までプログラミングを行うというカリキュラムになっています。

最初の2日間だけ講義形式で基礎知識を学び、その後の2週間はRuby on Railsのチュートリアルに取り組んでもらいます。その後は、チームにわかれ、オリジナルアプリの企画から開発までを1週間程度かけて行い、最後にプレゼンを行う、というのが一連の流れになります。

ーー 全日、朝から晩までですし、正直、結構ハードな内容だなと感じました…。

そうですね。ハードな合宿になる旨は、募集文にもしっかり記載しています。この合宿自体は参加費は無料にしていて、その分このハードな内容を受け入れる覚悟を持った人だけが、参加できるという設計にしました。

ゆるくしてしまうと、参加人数は増えるかもしれませんが、合宿自体の濃度といいますか、温度感は下がってしまうかもしれません。しっかりと思いや意欲のある人が集まる合宿にしたかったので、こうした内容にしました。

ーー 何人ぐらい集まったのですか?

当初8人を定員としていたのですが、それを超える多くの方から応募があり、選考した結果10人に参加をしてもらいました。みんな20代前半で、新卒、第二新卒世代の意欲溢れる人ばかりでした。転職準備中の方や、就職前でアルバイト中の方などがいました。こちらの本気に応えてくれるように、集まったみなさんも本気の人ばかりでした。

ーー リタイアした人はいなかったのですか?私なんか、想像しただけでも苦しくなってしまったのですが…。

これが、驚くことに全員最後までやりとげてくれたんです。正直、私たちも開催前は「途中離脱者が出るのは想定しておこう」という話をしていたんです。でも、蓋を開けてみると、みんな見事にやりきってくれました。

ーー すごい!合宿中はどんな様子だったのでしょう?

最初の2日間の講義はソニックガーデンのメンバーが行い、その後の課題やアプリ開発はオンラインで繋ぎっぱなしにしながら、各々がプログラミングをするという環境で行いました。ソニックガーデンの運営メンバーがチューター的な役割として、オンラインで常時繋がっており、何か質問や困りごとがあればいつでも相談できるようにしています。

リモートではありますが、約一ヶ月をかけて共同生活をしながらプログラミングを学ぶような環境です。そんな環境にいるので、次第に参加者同士の仲間意識が芽生えて、お互いで励まし合ったり、教え合ったりするようになっていきました。

ーー 仲間になっていくのはいいですね。

前半の課題は、Railsチュートリアルに取り組むのですが、これは未経験者が1~2週間で終わるような内容ではないんですね。本来はもう少し時間をかけて行うものなのですが、短期集中でチューターなどの手助けもありながら、みんな最後までクリアしました。

後半のアプリ開発になってくると、みんな打ち解け合っているので、チームに分かれた後のアイデア出しや設計の議論なども盛り上がっていたようです。それぞれが自分たちで決めた仕様に沿って、バグが出ないように開発を進めていき、最終日には私とソニックガーデンのベテランプログラマたちの前でプレゼンを行います。

ベテランプログラマも驚いた、短期間での成長

ーー 緊張の瞬間です。プレゼンはいかがでしたか?

私も、他のメンバーたちもみな感心するすばらしい内容ばかりでした。発表中にチャットでたくさんコメントもつきましたし、プレゼンしている側も楽しそうでした。「本当にこの短期間で、未経験者がこのアプリを作ったの?」と、口を開けて驚いているメンバーもいましたよ。

終わった後は、参加者同士で称え合うシーンもあって、戦友のような関係性になっていました。審査メンバーも、そうした姿には感銘を受けていましたね。ソニックガーデンのプログラマたちにとっても、若い人たちの懸命な姿を見るのは、いい刺激になったようです。

ーー 第1期から、素晴らしい盛り上がりだったのですね。

参加者のアンケート結果も良好でした。そこから何人かはソニックガーデンへの応募を真剣に検討してくれているようです。この取り組みがどのような形で実を結ぶかはまだこれからですが、少なくともソニックガーデンキャンプのファーストシーズンはいい形で終わりを迎えられたかな、と思います。

ーー キャンプもジムも、合宿をクリアした人には、ソニックガーデンから推薦状が出るとも書いてあります。

はい。これだけハードな合宿をクリアしていくので、参加者は成長もしているでしょうし、自信もついていると思います。たとえソニックガーデンではなく別の会社を選んだとしても、一定の活躍はできるはずです。ソニックガーデンの推薦状を持っていることで、少しでも若いプログラマに箔が付いて、その後のキャリアを歩む手助けになればいいなという思いからです。

ーー この合宿に参加したからといって、ソニックガーデンの採用に応募しなければいけないということではないと。

もちろんです。あくまで、育成の場を提供するというのが第一の目的ですから。当然、応募していただくのも嬉しいことで、合宿を通じてお互い理解が深まった状態で採用がスタートできます。

合宿を通じて、ソニックガーデンという会社のカルチャーであったり、価値観も少しは感じてもらえると思います。そうした中で、私たちと一緒に働きたいと思ってもらえれば応募していただきたいですし、そうでなくても、合宿をクリアしたという誇りを持って、ぜひいろいろな場所でプログラマとして活躍していただきたいですね。

手応えを感じたプログラミング合宿は継続予定

ーー 前半に、プログラマを増やしたいという話がありました。その一歩として育成の場を提供するというのは、一見遠回りに思えますが、ソニックガーデン流への入門者を増やすと捉えれば合点がいきます。

そうですね。門下生募集のための公開稽古合宿、みたいなものかもしれませんね。といっても採用だけが目的じゃないですが。

ーー ちなみに、この合宿の運営も大変そうだと思ったのですが、すべてソニックガーデンのメンバーで行ったのですか?

はい。企画から合宿中のチューター役など、すべてソニックガーデンの20代の若手メンバーが中心となって行ってくれました。年末まで時間をかけてくれましたし、日中は業務の合間を縫って参加者の相談に乗ったりしてくれました。

20代の若手メンバーを中心にしたのは、参加者の気持ちが一番理解できるからです。若手メンバーにしても、今回のキャンプ運営が、すごくいい体験になったようです。人を育てる行為は、自分の成長にも繋がりますし、ソニックガーデンにとっても還元されるものはたくさんあったなと感じています。

ーー 第2期第3期と続けていくと入門する人も増えていきそうですね。

そうなると嬉しいですし、先ほども言ったように1ヶ月でもソニックガーデンの流派にみっちり触れた人がプログラマとして活躍してくれるのは、単純にうれしいです。

それに、今後は合宿をクリアした人たちが、チューター役となってキャンプやジムの運営を手伝ってもらうという可能性もあり得ます。どう転ぶかはまだわかりませんが、価値のある試みなんじゃないか、という手応えは感じています。

ですので、これからもこの試みは継続的に行っていきたいですね。

ーー 今後1年、2年かけて、この取り組みがどのような実を結ぶかはすごく楽しみです。ということで、今月のふりかえりは採用と育成の場についてでした。では、また来月!

※次回以降のソニックガーデンキャンプ・ジムに興味のある方は、こちらからエントリーしてください。2022年夏のキャンプ詳細はこちら

これから更新する記事のお知らせをLINEで受け取りたい方はこちら。

長瀬光弘

フリーエディター・ライター。メディア運営やコンテンツ制作、コピー開発などコトバに関わる幅広い領域を手掛ける。得意&好きなテーマは組織づくり。岐阜県在住。

ページ上部へ