先日、ザッソウラジオ10月の収録を行いました。ゲストは、プロサッカークラブ「水戸ホーリーホック」のGM(ゼネラルマネージャー)を務められている西村卓朗さんです。
とても刺激的なお話を伺えたので、備忘録としてまとめておきます。
私は西村さんとは直接のご縁はなかったのですが、がくちょのお勧めで、私がNewbeeに出演した動画を西村さんがご覧になってくださっていて、逆に私は西村さんがPIVOTに出演された動画を拝見していたので、最初から話は弾みました。
全員で行う「ふりかえり」
水戸ホーリーホックでは、試合後に選手全員が必ず振り返りを行うそうです。
監督だけが評価するのではなく、一人ひとりが「サッカーにおける4つの局面」と「エリア・時間帯」に基づいた8項目を埋めることで、自分のプレーを構造的に見直します。補助線が用意されている点がとても印象的でした。
この取り組みには、私自身も大きな共感を覚えました。ソニックガーデンでも「ふりかえり」を必修としており、拙著『管理ゼロで成果はあがる』でも最初の章で取り上げたほど重要な実践だと考えています。
個人のミッション・ビジョン・バリュー
サッカーを続けていると「自分はなぜサッカーをするのか」がわからなくなる選手もいるそうです。
選手は一人ひとりが「個人事業主であり経営者」であるという前提に立ち、それぞれが自分自身のMVVを策定する取り組みをされています。その際にはキャリアコンサルタント資格を持つスタッフが1on1で支援に入り、内発的動機を引き出すとのこと。
ソニックガーデンにおいても、入社時の自己決定や半年ごとの「すりあわせ」を大切にしており、とても近い思想を感じました。MVVを一人ひとりに策定してもらう取り組みは、私たちでも試してみたいと思いました。
長期的な視点での育成
西村さんのお話で特に印象的だったのは、非常に長期的な目線を持たれていることです。
選手一人ひとりが、現役生活の先までを見据えてキャリアを考える必要がある。そのために、クラブとして型をつくり、短期的な成果ではなく持続的な成長を育んでいるという点でした。
育成は短期的な目線では決して実現できません。
この考え方は、私たちソニックガーデンの取り組みにも通じます。たとえば高卒採用を始めており、彼らが一人前になるまで長い目で育てていこうとしています。また、私たちの視点も単年度の売上や利益にとどまらず、より広く理念の実現に向けて活動しています。
まだ尽きない学びの広がり
さらに話題は尽きませんでした。モチベーションの立て直しや安定、監督の育成とお題設計アプローチ、スペシャリストからゼネラリストへの成長、分業ではなく全体を見る視点、型と制約条件の違いなど──次々と興味深い話が展開され、あっという間の時間でした。
私はソフトウェア開発を語る際にサッカーを喩えに出すことが多いのですが、運動神経が皆無の私はプレー経験がなく、サッカー漫画や観戦から得た知識で話しているので、どこか引け目がありました。
しかし今回、プロサッカークラブのGMである西村さんと直接お話しできて、「ソフトウェア開発は技芸である」という私の主張に共感していただけたことは大きな喜びでした。
具体は異なっても、抽象化したレベルで共通の話ができたのはとても得難い体験でした。信念があり、それが近い方とのお話は、共感と学びに満ちた時間になりました。
公開をぜひ楽しみにお待ちください。