「ふりかえり」を効果的にするための実践的なトライの出しかた 〜 TRYを掛け声で終わらせない

「ふりかえり」を効果的にするための実践的なトライの出しかた 〜 TRYを掛け声で終わらせない

メンバーの一人一人が自ら考えて行動し、それでいて仲間と協調し合うような自律的なチームを目指して、日々様々な取り組みをしています。その中でも、セルフマネジメントできる人材を育てるのに効果的だと考えているのが「ふりかえり」です。

そして、私たちは上手に「ふりかえり」ができるようにするために、メンターがついて、そのレビューを行っています。先日も私が「ふりかえり」のレビューをしたのですが、今回はその際に話した効果的なトライの出しかたについて書きました。

「KPT」を使った「ふりかえり」を「レビュー」している

そもそも「ふりかえり」とは何か、その手法である「KPT」とは何かについて、以前に記事を書いています。

自律的に現場を改善できるチームをつくるための「ふりかえり」の進め方 〜 KPTと進め方のノウハウ

KPTは、Keep/Problem/Tryの略で、「Keep=よかったこと」「Problem=悪かったこと」「Try=次に試すこと」を洗い出すシンプルな方法です。私たちはそのKPTの結果に対してフィードバックすることを「ワークレビュー」と呼んでいます。

というのも、「ふりかえり」は簡単なように見えて、とても奥の深いものです。どうすれば効果的か、うまく成長の機会にするにはどうすれば良いか、それなりにノウハウが必要です。だからメンターによるレビューが必要なのです。

以前、Problemをうまく出すための記事は書きましたが、Tryを出すときも幾つかポイントがあります。私がよくアドバイスするのは、判別できること、コントロールできること、すぐにできること、の3つの点です。

1)Tryは次回のふりかえりで判別ができることにする

Tryを出すときにやってしまいがちなものの一つが、「〜〜にならないように注意します」や「〜〜を意識するようにする」といった気持ちをリストアップすることです。もちろん、気持ちや意識の問題もあるでしょうし改善も必要です。

しかし、気持ちや姿勢などの目に見えないものをTryにしてしまうと、それが果たして効果があったのか、実践できたかどうか、次回にふりかえりをするときに判別できません。判別できないと、改善のしようがないのです。

意識ではなく行動をTryにすると、できたかどうか、結果としてどうだったかの判別がつきます。なるべく具体的な行動の方が良いでしょう。週ごとか隔週くらいでふりかえりをするべきで、それくらいの期間なら出来ることは限られている筈です。

例えば「伝わりにくい文章だった」と反省するのであれば、Tryは「ちゃんと伝わるように意識して書く」ではなく、「相手に渡す前に自分で読み返す」とすれば、そのTryが効果があったかどうか、さらにふりかえることが出来るでしょう。

2)Tryは自分の行動でコントロールできることにする

2つ目は、そのTryが自分でコントロールできるものかどうか、という点です。例えば「ミーティングをうまく仕切れなかった」というProblemがあったとした時、「きちんと仕切ること」はTryとしては適切ではありません。

そんなTryで解決出来るなら、最初からさほど問題にはならないでしょう。それが難しいからこそ問題が起きている筈で、どうやって解決するのか、その解決のために自分は何を試してみるのか、そこがTryになるのです。

また、具体的な行動であっても、その行動を起こすきっかけが偶然のものであるとしたら、それはコントロールできるものではないので、確実にTryすることができません。運に頼るようなものはTryではないのです。

先ほどの例なら「ミーティングに出る回数を増やして経験を積む」というのもTryとしては、後一歩というところ。多くの場合、それもコントロールすることは難しいでしょう。この場合、読者の皆さんなら、どういうTryを出すでしょうか。

3)Tryはふりかえりの直後からでもできることにする

最後のポイントは、その挙げたTryは本当にする気があるのか?ということです。ふりかえりを一生懸命にすればするほど、立派なTryを出すことができますが、それで満足してしまっては意味がありません。大事なことはTryを実行することです。

大袈裟なTryにしてしまうと、取り掛かるのに腰が重くなって先延ばしにしてしまいがちです。終わったらすぐに取り掛かりたいと思える位の気軽なTryで十分なのです。たとえ小さな改善であっても、実行できないTryよりは良いのです。

Tryは単なる掛け声ではありません。実行と次のふりかえりまでがセットです。定期的なふりかえりを続けることで、小さな改善は積み重なれば大きな進化となることでしょう。次のふりかえりまでの1週間か2週間で確実にできることに集中します。

大きな目標やビジョンを持つことは大事なことですが、いきなり実現することなどありえません。「ふりかえり」で見るのは現在の自分と、そこから次の一歩を進むための足元です。とても地道なことですが、目の前の一歩を踏まずに山頂にたどり着くことはないのです。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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