仕事中でも仲間とプログラミングで遊ぶ「部活」 〜 なぜ新規事業をやめて部活と呼んでいるのか

仕事中でも仲間とプログラミングで遊ぶ「部活」 〜 なぜ新規事業をやめて部活と呼んでいるのか

私たちソニックガーデンでは、「納品のない受託開発」という受託事業の一方で、リモートワーク支援ツールRemottyなど自社サービスの提供を行なっています。

そうした自社サービスの新しい企画や開発をする活動を、私たちは「部活」と呼んでいます。「部活」といってもテニスやフットサルのような運動をすることではありません。私たちの「部活」は、一般的には新規事業開発と呼ばれるような創作活動で、それをあえて呼び方を変えている訳です。

本記事では、この「部活」という制度について、なぜ新規事業と呼ばずに「部活」と呼んでいるのかお話します。

生産性を高めれば時間の自由が増える働き方

さて「部活」の前提として「納品のない受託開発」について簡単に紹介しましょう。その特徴によって「部活」という制度が実現できているからです。

私たちの提供する「納品のない受託開発」では、顧問税理士のような顧問の形で、ソフトウェアの企画から開発、運用まで全てを担当するお客さまのパートナーとして、ビジネスを一緒に成長させていく役割を担います。

そして、このサービスの大きな特徴が、時間ではなく成果を提供するということです。労働する時間を約束するのではなく、毎週のミーティングを通じて、安定したソフトウェアの運用とバージョンアップを提供します。

このことは生産性を高められれば、かかる時間を短く圧縮できることを意味します。技術者として腕を磨き、技術を学び、自動化など工夫をすることで、短い時間でも高い成果を出すことができれば、仕事にかかる時間を減らすことができるのです。

「時間対効果」を高める働き方とマネジメントに書いたように、時間あたりの生産性を高めることで、自由な時間を得ることができるのです。

「お金を稼ぐ」よりも「時間を稼ぐ」ために働く

そうして出来た時間を、どう活用するのでしょうか。普通の会社であれば、空いた時間に新しい案件を入れたりすることもあるでしょう。出来る人ほど忙しいというのはよく聞く話です。しかし、私たちは違います。

ソニックガーデンには、「ベストエフォート経営」というポリシーがあります。きちんと生活ができるだけのお金はもちろん必要だし、その分を稼ぐことは大事なことですが、際限なくお金を稼ぐことを目指してはいません。

めちゃくちゃハードワークして、めちゃくちゃ稼ぐという考えもあると思いますが、私たちは、それを望んでいません。一定額を稼ぐことが出来たら、あとは自分たちが自由にできる時間を持つことの方に、私たちは価値を感じています。採用時から、そういう価値観の人が集まるようにしています。

余談ですが、もはや現代日本は、高度成長時代や新興国ではないのです。所有よりも利用する価値観、お金よりも時間を大事にする価値観に、私たちに限らず多くの日本人の価値観がシフトしてきているように思います。

またチームの助け合いを重視し、個人主義でもなく個人評価もしないため、誰かが他の人より多く案件をして、それだけ多く報酬を得るようなこともありません。メンバーには稼ぐ上限のキャップが決まっているようなものです。だから効率良く仕事をしたら、必然的に自由な時間が出来てしまいます。

会社の中で自由な時間に、会社の仲間と遊ぶ

では、得られた自由な時間をどうするのか。休暇を取るわけではありません。私たちはチームで働くことを重視しています。チームで助け合うために、基本的に平日の昼間の時間には論理出社、つまりRemottyにログインして一緒に働いています。

そこがフリーランスとの違いだと私たちは考えています。自分の仕事が終わったからといって、あとは完全に自由という訳ではなく、仲間からの相談や頼みごとにいつでも応答できるようにしています。そんな仲間のことを論理社員とも呼んでいます。

論理出社していても、お金を稼ぐ案件としての仕事が終わっているなら、その空いた時間に何をするのか。そこで好きなことをしても良い、としています。といっても、私たちにとって好きなことは、プログラミングをしたり、新しい技術を習得したり、新しいソフトウェアを作る創作活動です。

個人の活動でなく会社の仲間と一緒に好きな開発を、それも受託開発では出来ないようなことを、自分たちの作りたいものを、試してみたい技術を使って、好きなように開発をすること。それが私たちが稼いだ時間の使い方です。そうした活動を総称して、受託開発の仕事に対して「部活」と呼んでいます。

「部活」は、メンバー誰もが参加できます。かけられる時間は自由です。仕事中でも構わないし、プライベートな時間に活動しても構いません。稼ぐ必要もないし、逆に稼いでも良い。決まったルールがある訳ではありません。

稼ぐ仕事もプログラミング、遊ぶこともプログラミング

もともとは「部活」と呼ばずに、新規事業と呼んでいました。受託開発で稼ぎつつ、自社サービスの新規事業もやっていきましょう、と言っていたのです。しかし、新規事業と言ってしまうと、楽しさよりも面倒臭さの方が強くなってしまいます。

経営者が指示命令をして新規事業が生まれるなら、そんな楽なことはありません。経営者が新規事業を失敗させてしまう7つの罠にも書いた通り、指示命令をして計画を立てたからといって新規事業がうまく立ち上がる訳ではないのです。

新規事業ならば、経営者としては投資と回収で考えなければなりませんし、赤字を垂れ流し続けるわけにはいかないので、期限も決めなければいけません。現場は経営への報告も大変です。また、新規事業の立ち上げには、プログラミングだけでは出来ません。マーケティングはもちろん、時には営業もしなければならないでしょう。

しかし、私たちはプログラマの職人集団です。好きなことはプログラミングなのです。好きなことをするために、生産性を高めて、せっかく自由な時間を得たというのに、プログラミングをしないでマーケティングをしなければいけないのは、とてもナンセンスなことに思えました。

そこで、もっと自由に好きなことをしたら良いじゃないか、と頭を切り替えました。別に、生活に必要なお金は受託開発で稼げているのだから、それ以上のことは望まずに、好きなことをしよう!と。会社の時間に、会社の仲間とする、公式な活動を何と呼ぶのか、「部活」と呼ぶことにしました。

ソニックガーデンで活動している「部活」の紹介

ソニックガーデンの社内では多くの部活が動いています。既に公開されているものから、幾つか紹介します。

Remotty

Remottyは、リモートワークを導入しているチームや会社が、離れていても仲間として一緒に働けるようにするためのコミュニケーション基盤です。物理的なオフィスの代わりとして使えます。最初は社内で使うために作ったものです。

イシュラン

イシュランは、乳がん患者が自分にあった病院と医者を探すことのできるサービスです。医療系コンサルティングをされているメディカルインサイトさんとのコラボレーションになります。詳しい経緯はこちら

サカナタッチ

サカナタッチは、拡張現実(AR)を活用した娯楽アプリです。カメラ越しに覗いた現実世界には多くのサカナが泳いでいて、タッチすることで捕まえることができます。デザイン会社ツクロアさんとのコラボレーション作品です。

エンプラス

エンプラスは、グリーティングカードをウェブで送ることのできるサービスです。年賀状や暑中見舞いなど、主に法人での利用を想定し、担当者ごとにメッセージを添えることができます。

Sakenote

Sakenoteは、自分の飲んだ日本酒を記録したり、他人の飲んだお酒の感想を知ることのできるアプリです。日本全国津々浦々の酒蔵名、銘柄が登録されています。日本酒好きのエンジニアが始めたのが活動のきっかけです。

TalkTree

TalkTreeは、ビジネス・コミュニケーションを実現するチャットです。ツリー型のインタフェースを持ち、管理と安心に重点をおいたツールです。論理社員の所属するデジタルジェットとのコラボレーションです。

まかない

ここで紹介した以外にも、社内で使う「まかない」と呼ぶようなシステムや、まだ企画開発段階のものなど、外部には公開していない部活も沢山あります。

次回は「部活」と新規事業の関係について、考察して見ます。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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