リモートワーク時代を生き抜くためのセルフマネジメントのスキルと思考法(その3)「オープンマインド」「自己認識」「自分軸で決断」

セルフマネジメントは、リモートワークの際だけに限らず、通常の仕事を推進していく上でも欠かすことのできないものです。そして、セルフマネジメントのスキルと思考法は訓練次第で身につけることができるものです。

前回の第2回では「着信主義でコミュニケーション」「ザッソウ」「小口化」といったコミュニケーションに関するものを解説しました。

セルフマネジメントは一人で仕事ができれば良いという訳ではありません。周りとうまく協調していくことも、セルフマネジメントには求められるのです。

第3回では、そうした周囲との関係性構築や、チームワークに貢献するためのセルフマネジメントのスキルと思考法について解説します。

オープンマインドでいる

セルフマネジメントができることと、チームで働くことは相反するものではありません。むしろチームワークを発揮するためには、チームの一人ひとりがセルフマネジメントを身に着けていた方が良いのです。

チームとは、ある共通の目的や目標を達成するために集まった集団のことです。ただ集まっただけのグループとは違います。チームには意思をまとめるリーダーが必要ですが、マネージャは必須ではありません。

リーダーの立てた共通の目的に向けて、チームのメンバー各々が自分の強みと役割を理解した上で、自律的に行動さえできるのであれば、あえてメンバーをマネジメントするまでもないのです。

チームは複数の人間が集まったものです。共通の目的があるとはいえ、それぞれ性格や考え方の違う人間が集まると、一定の摩擦が起きることは避けられません。

そうしたときに、大人ぶって自分の意見を通さずにいること。それは、セルフマネジメントの姿勢ではありません。むしろ、意見があるのなら、それをしっかりと周りに伝えて議論していくと良いでしょう。

本当に強いチームは、仲良しこよしでいるよりも、考え方の違うメンバー同士でも率直に意見を交わし合いながらも、チームの成果を追求していくものです。それこそが本当に心理的安全性が高い状態と言えます。

そのためには表面的な言葉で周りに合わせにいくよりも、自分の本心を隠したりせずにオープンでいることです。ただし、率直さは大事ですが、言葉の表現には配慮を忘れずにいましょう。そして、意見を主張すると共に、相手の立場や意見も受け入れることです。その上でフラットに意見を交わすのです。

またチームで働く上で、周りのメンバーに自分から状況や考えていることなど適切に伝えていくことも大事です。上司やマネージャが心配するようになったら、それはマネジメントのコストがかかっていることになります。

自分自身の意思や思いをオープンに伝えていくことで、周りの人たちから応援したいと思ってもらえるようになります。

自己認識から自己肯定へ

オープンでいるからには、自分の弱いところもさらけ出すことになります。競争社会において弱みをさらすことは負けることに繋がってしまうと考えてしまいそうですが、チームにおいては悪いことではありません。

むしろ、自分の弱いところは何で、逆に強みの部分は何かということをチームで共有しているからこそ、助け合うことができるのです。良いチームは、メンバー同士がパズルのピースのように、強みの部分(凸)で弱い部分(凹)を補いあって成果を出します。全員が同じステータスである必要はありません。

そのために自分自身がどういった強みがあるのか、何が得意なのか知ることから始めましょう。自分の理想と実力にギャップがあるのに自己認識がズレているとしたら、本人のみならず周囲にとっても不幸な状態となります。

技術的なスキルの棚卸しはそう難しくないでしょう。一方、自分自身がどんな仕事をしているときに回復し、どういった仕事で疲弊するのかを自己分析するのは難しいことです。

そこで使えるのが「ストレングスファインダー」です。書籍購入時についてくるコードを使えば、サイトの質問に答えることで自分の強みの上位5位までを知ることができます。

もちろん自分の特性を知ることができて、自分自身にとっての仕事をしていく上での指標にもなりますが、その結果をチーム内でシェアしあうことで、互いにどういったコミュニケーションをすれば良いのか、わかるようになります。

主観と客観が揃っていれば、過度の期待やプレッシャがなくなって、今の自分で貢献できることに集中できます。その結果、今の状態に納得いかないこともあるでしょう。しかし、それで自己否定はしないようにしましょう。

誰かにメンタルケアをしてもらわなくても良いことも、セルフマネジメントの一環です。健全な精神状態でいるためには、自己肯定感をもっておくことは重要です。

自己肯定感を得るコツは、周囲と比較をしないことです。そのためにも自分の中に基準を持ち、自分自身の軸を鍛えていくことをしなければいけません。

自分軸を持ち決断を委ねない

自分の軸を鍛えるというのは、一体どういうことでしょうか。人から言われたまま、自分の考えを持たずに仕事を続けていては、考える力は身につきません。

どんな仕事であれ、その仕事の意義や目的について考えた上で、自分なりの考えをもって望むことです。もちろん、その考えが正しいとは限りませんし、考えたことが通らないことも多々あるでしょう。だからといって、考えることを放棄してしまうと、いつまでたっても成長することはありません。

端的に言えば、自分ごとで考えるということです。そう簡単にはいかないのはわかります。良いマネージャに恵まれたら、仕事の意義から伝えてくれたり、裁量と合わせて仕事を渡してくれるので、自分ごとで考えやすいでしょう。しかし、そんなシチュエーションばかりではありません。

そうした中でも、自分なりに意義を考えて、自分で取り組むのだと決めるのです。モチベーションをコントロールするのは自分自身です。動機づけを自分なりに決めて、仕事に向かうことです。言われたから仕方なくやっている姿勢でいると、結局つらくなるのは自分です。

考えることは決めることです。何も決めなくていいなら、それは悩みです。決断するために考えるのです。決断することは、その選択以外を切って捨てるということなので、とても難しいものです。

そんな決断力は鍛えることができます。マネジメントや経営といった抽象度の高い仕事になればなるほど、決まった正解というのはなくて、その時々でベストだと自分で考えたことを意思決定していきます。

立場や責任が大きくなるほどに決断は難しくなります。とても単純化すると、10万の投資か、1000万の投資か、どちらの決断が難しいでしょうか。難しい問題に対して決断することは、才能もありますが、経験で身につくことの方が大きいです。

どんな人にも、いきなり大きな決断は難しいでしょう。最初は小さなことでも良いから自分で決断するのです。「どうすれば良いですか?」と聞いて、誰かに決めてもらっていては、まだあなたの仕事になっていません。

決断することを避けて、誰かに委ね続けていると、いつか自分で考えることができなくなるでしょう。決断を繰り返すことで、決断力は鍛えられていきます。それが自分で考える軸を鍛えることになるのです。

今回はここまで。次回は、以下のスキルと思考法を紹介します。

  • ふりかえりを習慣化する
  • 言語化でアウトプットする
  • 自己マスタリーを身につける

第1回と第2回はこちら。

倉貫 義人

株式会社ソニックガーデン代表取締役社長。経営を通じた自身の体験と思考をログとして残しています。「こんな経営もあるんだ」と、新たな視点を得てもらえるとうれしいです。

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