ふりかえりで目指すのは自分を知ること

思考メモ

最近、改めて「ふりかえり」って大事だなって考えているのは、ふりかえりを習慣化してる人やチームを長期的な目線で見ると、ずっと良くなっているのを感じているからなんだけど。

ふりかえりの効能は、改善していくことだと思ってたのだけど、もっと本質的な効能は、己のことを客観的に見えたり、プロジェクトを俯瞰して見えるようになることではないかな、と。

ふりかえりだから、過去の自分や出来事を対象に見る訳で、その時点で既にメタな視点を持てる。自分の心と切り離して考えれば、気軽に改善点を出すことや、意見を出すことができる。


利害関係の複雑な人たちで構成されたプロジェクトや、顧客との案件であっても、一緒にふりかえりすることができれば、メタ視点では目線の向きが揃って、問題vs私たちの構図になる。

ふりかえりの機会があるかないかで、チームビルディングが進むかどうか違ってくる。なので最近は、パートナーさんやお客さまとも定期的にふりかえりをさせてもらうようにしている。


個人のふりかえりは、内省(リフレクション)の機会となるけれど、それも改善のためというより、自分の感情や心境の変化などを知ることの方が収穫。己を知ればコントロールできる。

ストレングスファインダーで言えば「内省」が上位に来る人は、放っておいても内省できるだろうけど、そうでない人は練習が必要なので、ふりかえりを誰かに付き合ってもらうと良い。

壁打ち役であり、客観視点を伝える役であり、コーチ役でもある。ソニックガーデンでは、最近は社内で相互に、ふりかえりをサポートしあっている。そこに先輩後輩あまり関係ないかも。


ふりかえりの本質を、自己改善から自己認知に切り替えて考えるようになれば、必ずしも成長だけを望まなくても良い。むしろ、己を知れば知るほど、人として仕上がっていくように思う。

具体化と抽象化、両方が大事

思考メモ

ふんわり頭の中で考えているだけだと、なんでも出来そうな気になって楽観的な気分でいられるけれど、具体的な計画に書き出したりし始めると、けっこう大変だなってことがわかったりする。

頭の中で構想を練ることは大事だけど、具体的に動き出すと具体的な問題が見えてくる。特に、手を動かしてアウトプットしだすことで、大変さがわかる。それが解像度が増す感覚なのだろう。

具体化することでしか仕事は進まないし、具体化さえできれば問題も明らかになってくるので、あとは一つずつ解決していけば進捗はする。そんな風に具体的に動ける人だけが、仕事ができる。


一方で、具体的に動くことだけを延々と続けていても、直線的にしか成果は出せない。具体的な出来事やアウトプットを観察して、仕組みを考えることで、成果を何倍にも上げることができる。

そのためには、具体的なものから共通項を見つけ出したり、他の分野の似た構造から連想したり、本質的な意味や価値を考えたりする必要がある。つまり、抽象化して考える能力が求められる。

抽象化は、具体的なものから得られる。具体的な経験があるから、ふりかえり(内省)をすることで抽象化して考えられる。抽象化さえできれば、他のことに応用して具体化することもできる。


マネジメントする立場になって、現場で自ら経験できないことも、メンバーとの1on1を通じて擬似体験から抽象化できるようになった。1on1は自分にとってインプットの時間でもあるのだな。

マネジメントが偉いわけではないのは、いくら抽象化して考えることができても、その先に具体化して動ける人がいないと、頭でっかちで終わってしまうから。具体化できる人の存在は大きい。


一人の中でも具体と抽象を行ったり来たりできるようになると、格段に進捗を出せるようになる。日々のふりかえりは、その訓練とも言える。こんな言語化も、具体化の練習になってるのかも。

正解のない世界で戦っているすべての人へ

思考メモ

頻度は違えど社員の全員と1on1をしているのだけど、先日は、創業メンバー入れて8人目に入社した古株メンバーの遠藤さんと実施した。かれこれ彼との付き合いとしては、10年近くになる。

創業2年目に入社したメンバーが今も一緒に働いてくれることに感謝しつつ、同じ会社に10年近くいるのだから、私としては、彼が飽きてないか今も楽しく仕事ができているか心配もあった。

そんな心配をしながら1on1で話をさせてもらったのだけど、彼は今が一番楽しいと言ってくれたし、入社前に理想としていた働き方ができているんだって聞けて、本当に嬉しかったんですね。


これは私の嬉しさでもあるけれど、それだけじゃなくて、いま若いプログラマの人たちにとって、彼のような働き方があることを知れるのは、とても希望があることじゃないか、と考えました。

そこで彼と私で対談をした内容を記事にしてもらいました。結果としては、プログラマだけでなくクリエイティブに関わる仕事をしている多くの人に価値ある言語化ができたように思います。

もはや今の時代、プログラマに限らず、正解のない仕事に取り組まねばならないことは多いはず。そこで彼が「正解のない世界」で、どう生き抜いてきたのかを知ることは、参考になるかも。

ソニックガーデンに入る前までは、お客さんに「正解」を確認してから作るのが一番王道で、間違いのない仕事のやり方だったんです。

「正解」も難しい言葉ですけど、要するに決まりがある世界だったんですよね。僕はこれまで仕様書や要件定義で形が決まってるものを、いかにきれいに作るかという仕事をしてきたんです。

でも、ソニックガーデンでそのやり方をすると、逆にお客さんが困ってしまうケースが多くて。そこではじめて、「世の中って正解がないんだ」と気づきました。

どっちに行けばいいか全くわからない「正解のない世界」で戦う術を僕は知らなかった。

「正解のある世界」と「正解のない世界」の差が想像以上に大きくて、自分なりの戦い方を見つけるまでかなり苦しみました。「あれ、俺どうすればいいんだ?」って。

第1回より

全4回の短期連載になっていて、毎週水曜日に更新予定です。

【連載のタイトル(予定)】

■第一回:プログラマの道を極めた先に見える景色(7/14公開)
 ・開発だけじゃなく、ビジネスの構想から関わるプログラマへ
 ・技術者として頑張るほど、自分の首がしまる矛盾
 ・「正解のある世界」と、「正解のない世界」

■第二回:「正解のない世界」での戦い方(7/21公開)
 ・開発者の帽子を脱ぐとうまくいく
 ・「作らない提案」の難しさ
 ・ソフトウェアは「生き物」

■第三回:プログラマの腕の見せどころ(7/28公開)
 ・プログラムのコードは「負債」
 ・最高に楽しいインフラ委員会
 ・「内製化」のハードル

■第四回:死ぬまでプログラマでいたい(8/4公開)
 ・背中を預けられる人がいる
 ・お客さんとはチーム、ソニックガーデンはコミュニティ
 ・「楽(らく)」の先に「楽しい」はない

ZDNet Japanに取材が掲載されました

思考メモ

創業から10年を経て、今後の経営方針についての資料を公開しましたが、興味を持ってもらって取材して頂きました。ありがとうございました。よかったらご覧ください。

https://japan.zdnet.com/article/35173759/

 「この10年は生き残れればいいという生存戦略だったが、これからの10年は社会に目を向ける」とし、倉貫社長は職人としてのプログラマーの価値を高めることに力を注ぐ考えのようだ。
その一環として、趣味でプログラミングをする人たちを増やすための草の根運動を展開する。
そのために、若手育成のために作成したプログラミングレベルの向上法や未経験者がゲーム感覚でプログラミングを学べる学習コースなど、社内の取り組みを公開したり、毎月開催する社内プログラミングコンテストに外部からの参加を募ったりする。
「当社の採用やCSRのためにやるものではない。世の中に役立つものと純粋に思っている」と、倉貫社長はプログラムの文化を広げたいという。

リモートワークで日記と日報

思考メモ

全社員リモートワークでも、互いのことを知る機会があると良いと考えて「日記」という仕組みを入れている。日報ではなく、あえて日記。日記は、仮想オフィスのシステムに組み込まれている。


日記だけあって、いわゆる仕事の日報と違い、プライベートなことを中心に書くようになっている。日記には、休みの日に家族と出かけた話や、今ハマっている趣味の話なんかが投稿されている。

ブログよりも日記という呼び名がよくて、難しい考察を書くよりも、出来事を書くだけなので圧倒的にハードルは低い。ちなみに日記には「いいね」でなく懐かしの「へぇボタン」が置いてある。

仕事に関係ない近況なんかが書いてあると、なんとなくでも、その人となりがわかる。なにより、テレビ会議で話すときに、本題の前に話す雑談のネタにできて、アイスブレイクがしやすくなる。


だから、日報は要らないな、と思っていたけれど、最近やっぱり日報は日報で大事だな、ということに考えを改めた。というのも、入社してすぐの人にとって日記を書く方がハードルが高いのだ。

たしかに、入社してすぐは成果も上げられていないので、そんな中でカジュアルなことを書き込むのは気が引けるだろう。社内に知り合いも少ないから、どんな反応があるかわからないのも怖い。

知り合いを増やすためにも日記を書けばいいのだけど、それはマッチョな意見。そこで日報である。日報なら、業務のことなので書くべきことが決まっているし、業務の一環だから書くしかない。


日報は、社員なら誰でも見えるオープンな掲示板に書いてもらうので、自然と目に入ることでリモートワークでも存在感を出すことができる。なにより、日報はセルフマネジメントの練習になる。

セルフマネジメントでは、時間の管理を自分でする必要がある。朝の仕事前に1日の予定を見積もって、仕事終わりに実績を残せば、予実を把握できる。予実管理はセルフマネジメントの基礎だ。

日報には感想を添えてもらうが、これがふりかえりの練習になる。予実を見てふりかえることで、業務の改善ができる。最初のうちは強制力をもって日報を書くことで、ふりかえりが習慣になる。


ふりかえりが習慣化されると、自己改善できる人になるのでセルフマネジメントに1歩近づくことができる。そんな訳で、日記と日報の両方大事だったんだな、ということがわかったという話。

応援したくなる人の特徴

思考メモ

どこか応援したくなる人っている。仕事柄、社内に限らず面談する機会が多いけれど、話を聞いてるうちに、なんか応援したくなる気持ちが湧いてくる人たちがいる。そこに共通点がありそう。


まず自分ごとで動いている人。誰かの仕事を、頼まれたからやってる人のことは応援しにくい。というか、むしろ応援すると悪い気がするが、自分ごとで取り組んでいる人は、応援したくなる。


難しいことに挑戦しようとしている人。誰が見ても簡単なことなら、たとえ本人にとって高いハードルでも生暖かく見守るしかできない。自分にできないことに挑戦する人は、応援したくなる。


難しいことだけど、できると信じている人。困難なことを前提に、実は無理だと思いながら取り組んでる人は応援しにくい。自分の可能性を信じて賭けようとしている人は、応援したくなる。


自分の為だけに取り組もうとしていない人。頑張って得するのは当人だけなら応援しがいはないけれど、社会のためや応援する人にとっても望ましい結果を得られることなら、応援したくなる。


相談してくれると応援したくなる。人間心理として、頼られることでモチベーションが高まることがあり、頑張ってる人から相談されると、なんかしてあげたくなる。関わると、応援したくなる。


大変だけど深刻そうにしていない人。目標に向かう姿勢はよくても、自分自身を犠牲にして悲劇のヒーローぶってる人は応援しにくい。つらそうにしてないで前向きな人なら、応援したくなる。


応援してもらえるって、とても良い資質。物語の主人公になれる資質といっても良い。ゲームや小説でも主人公はだいたい応援される。逆に考えて主人公のように振る舞うことが大事なのかも。

哲学者トマス・アクィナスは、「希望とは、獲得困難だが獲得可能な未来の善」と定義していたけれど、応援したくなるのは「希望」を感じさせてくれる人だと言っても良いのかもしれないな。

全社員リモートでPマークの取得

思考メモ

先日ソニックガーデンで、プライバシーマークを取得しました。なんとオフィスなし全社員リモートワークでも取得できました。

管理ゼロのマネジメントですが、だからこそセキュリティや個人情報保護には力を入れていかねばならないな、と考えています。

すべてクラウドという前例のないことばかりで、かなり大変だったと思いますが、粘り強く対応してくれたメンバーに感謝です。

Pマークは取得しただけでなく、継続的に個人情報保護に取り組むことが本質ではありますが、それでも取得できて良かった。

なにより良かったのは、取得に向けて取り組んだことで、個人情報保護に関しての意識が高まり、仕組み化が進んだことです。

また取得には、オプティマ・ソリューションズさんにご支援いただきました。完全リモートでの支援、ありがとうございました。

オプティマ・ソリューションズさんの事例記事も出ました。リモートワークにおけるエポックメーキングな出来事になれば良いな。

https://www.optima-solutions.co.jp/archives/17345

ソニックガーデン11期からの経営方針

思考メモ

今月からソニックガーデン11期目になりまして、これを機に幾つか新しい取り組みや制度の導入を実施しました。主に内部的な人事制度・組織改変の話になりますが、ご案内させてください。


1つは、グループ会社である株式会社ラクローの独立。今後の事業成長を考えたときに、代表の岩崎さんの希望もあって、資本関係も解消して自立するためにMBOを実施してもらいました。

株式会社ラクローの、MBOによる当社グループから独立のお知らせ

手放すことに躊躇はありましたが、応援すべく決断しました。奇しくも、ソニックガーデンがTISからMBOさせてもらい独立してから10年目に、MBOしてもらって応援する側になりました。


次に、自社サービスの仮想オフィス製品「Remotty」ですが、昨年からの事業成長を受けて、より自由度を上げて経営するために、人事権まで権限委譲したカンパニー制度を導入しました。

管理ゼロでフラットなプログラマ集団と、事業会社らしく運営する組織では、組織文化も人事評価も違ってくるので、子会社に相当しつつ取り回しに便利なバーチャルカンパニーとしました。

Remottyと同時に、kintone連携サービスの「じぶんシリーズ」も合わせてカンパニーとして運営します。こちらも奇しくも、TIS時代にソニックガーデンが誕生した際の制度を使うことに。


関連会社と自社事業の整理をしたことで、ソニックガーデン自体は、改めて「納品のない受託開発」にフォーカスして、お客様の問題解決と要望にお応えしていくことに取り組む所存です。

「納品のない受託開発」事業は私たちソニックガーデンにとって、アイデンティティとも言えるビジネスモデルですが、その経営を行う経営チームを発足し、執行役員の制度を導入しました。

執行役員制度及びカンパニー制導入のお知らせ

創業時から支えてくれている取締役3名の安達、松村、西見に、新たに野上・遠藤を加えた5名の執行役員からなる経営チームで事業運営をしてもらい、徐々に現場のことは任せていきます。


私と副社長の藤原は、各事業の経営の支援と、コーポレートガバナンスの観点からの取り組み、新しい活動への投資、関係者の皆さんが安心して働ける環境づくりなどに取り組んでいきます。

どの制度も改めて意味づけを行なっただけで、実態としては以前から大きく変わるわけでもありませんが、社員一同精進して参りますので、引き続きご支援のほどをよろしくお願い致します。


以下は、ソニックガーデン11期からの経営方針の説明資料です。社内向けかつプレゼン資料だけなので伝わりにくいところもあるかと思いますが、ご参考までに。

暗黙知から引き出す文章化

思考メモ

なんとなく心の余裕ができたからか、改めてブログを書きたい意欲が湧いてきつつある。ここ最近は、ただ思うことを徒然とFacebookに書いているけど、もう少し考察して書いてみたい。

経験したことをそのまま残すのは日記で、それも役には立つと思うけど、経験を自分なりに抽象化することで、他の人にとっても将来の自分にとっても役に立つものになる、かもしれない。

経験したことには前提となる文脈があるので、いかに文脈に依存せず理解できるように構成できるか、単体の記事として成立する構成になるか、記事の構想を練るのは大変だけど、楽しい。

経験をふりかえりながら、内省した気付きを言葉にして、筋の通った文章にできるように構造化していく。この時間を経ることで、自分にとっても再現可能な血肉となっていく感覚がある。

一度、ブログの記事にして言語化できてしまえば、それ以降に取材を受けたり、社内でコンセンサスをとる必要があるときにも、言い淀むことがなくなる。これが暗黙知の表出化なのかも。

構造化された文章を書こうとすると、心の余裕だけじゃなく時間の余裕もないと作れない。ライターさんに書いてもらえるかというと、この構想の部分だけは他人にアウトソースできない。

もう少し効率的にできたら良いのに、と思うけれど、そもそも、この過程自体が楽しいからやってたことを思うと、無理して効率化もアウトソーシングもしなくても良いのかもしれないな。

それに、これが自分にとっての抽象化思考のトレーニングになってたのかもしれない。しばらく書けてなかったから、リハビリしていこう。

ボランチ論から学ぶビジネス

思考メモ

中村憲剛さんのボランチ論。鈴木啓太さんのYouTubeで見つけたけど、この人たちの言語化いいな。面白かった。


攻撃派と守備派の組み合わせとかビジネスとかプログラミングでもありそう。テスト好きな堅牢派のプログラマと、プロトタイプ派のプログラマが組むとうまくいく。

30歳越えてからは頭で上手くなる話。これもビジネスの世界でも言える。20代に訳もわからず、がむしゃらに色々と経験すれば、次は経験を活かせるようになる。

ボールを止めれるようになる話。どうすれば出来るようになるか。本人の意識と、見て止まってると言ってくれる指導者の存在。これ、ふりかえりでやってることだ。

ボランチが試合を作るには言語化がマスト。短い時間、短いセンテンスで伝える。これもマネージャ論に聞こえるな。スキルだけじゃなく伝える練習をした方が良い。

フォワードは点を取りたいだけだから、点に繋がる指示を出せば動く。これもマネジメントの肝だわ。内発的動機付けを把握しつつ、全体のために動けるようにする。


こういう分野違いだけど、思考が深い人たちの話は、むしろ自分の分野に置き換えて、抽象化して考えられるから面白いな。プログラミングで同じことしてみたい。

創業10周年の感謝

思考メモ

今日は、ソニックガーデン10期末の全社集会。集会といっても、いつも通り全員リモートで参加。半年に一度の、社員の皆さんに私からプレゼンさせてもらう機会。


10周年なので、創業から10年分の思い出をふりかえり、少しずつ増えた仲間たちに感謝を述べさせてもらった。5人で始めた会社が、やっと50人を越えるまでに。

全然、急成長はできなかったけれど、身の丈にあった成長を続けてこれただけでも、本当に感謝しかない。数字は気にしてなかったけど、結果は過去最高益だった。

それなりに立派な数字を残せたことは経営者として一安心ではあるけれど、それよりも一緒に楽しく働いてくれる仲間たちがいることの方が嬉しい。感謝しかない。


もちろん、求めてくださるお客様がいて、助けてくれるデザイナーやライターといったパートナーさんがいてくださり、やってこれた。本当にありがたいことです。

なにより、創業時のメンバーが誰一人欠けることなく続けてくれたこと、それどころか創業から一桁台の人が全員が活躍し続けて、今や経営を支えてくれるまでに。


今まで、まずは生き残ることを優先にしてきたけれど、次の10年は少しでも直接的に社会へ貢献していこう。プログラミングという私たちが大事にしている文化で。

そんな話をさせてもらった本日の打ち上げのときに、社員の全員からのメッセージの詰まった創業メンバーへのメッセージブックをサプライズで贈ってもらった。

今、そのメッセージブックに書いてくれた皆の言葉を読みながら、10年頑張ってきたことに報われた気持ちになったし、こちらこそ感謝だよと感慨にふけっている。


10年、大変なこともあったけど楽しくやってこれたし、楽しいことが今も続いているってのが、幸せなんだなと思う。幸せなうちにやめたいと思うこともあるけどw

まだ実現したいこともあるので、もうしばらくは頑張りたいと思います。よろしくお願いします。

実態が先にあって制度をつくる

思考メモ

会社の人数が増えてきたこともあり、来月からの11期に向けて、人事制度の再整備をしているけれど、とても難しいパズルを解いているような気分。この半年ずっと考えて、ようやく解けそう。


私たちの会社の制度づくりで気をつけていることは、実際に起きている事象を分析して、適切な名前を付けて制度にしていくこと。間違っても制度から導入することがないようにしている。

なので、制度ができても現場レベルでは変わらないことが多い。もちろん伝え方に細心の工夫をして、出来てるかどうかはさておき、制度の導入に伴うハレーションや混乱が起きないよう努力してる。


新しい制度を考えるキッカケも、現場を観察して気付いたこと、社員との1on1で出てきた要望、トラブルやリスクへの対応などがトリガーになる。なので、常に歪みがないか現場を観察している。

全社員リモートワークということもあり、人もデータもデジタル上に存在しているから、時間も越えて見聞きできるし、広範に目配りができる。おそらくオフィスだったら難しかったかもしれない。


実態ありきで制度を作る順にしているのは、制度にした瞬間からレガシーになって、必ず実態の方が未来にいってるからなのと、制度にすると1/0(デジタル)になるけど、実態はアナログだから。

人数が50人を越えて事業も広がった中で、実態からの制度を作るとなると、分析・整理するのも骨が折れる。ただソフトウェア開発でいえば、データモデリングみたいなものでハマると気持ち良い。


特に人事制度は、ゲームデザインをしている気分になる。自由度と制約のバランスが悪いとクソゲーになるけど、うまく作れば、気持ちよく働きつつ個人も成長もできて、フロー状態に入ってもらえる。

ゲームデザインって考えると、自社のビジネスモデルが何なのか、シューティングかRPGか理解せずに、他社の事例や目新しいコンセプトなどを参考にして作ってもうまくいかないのは当然なんだな。

気兼ねなく決める楽しさ

思考メモ

「孤独のグルメ」というドラマが好きで、Netflixで飽きずに何周も見てる。似た感じの店を探して飲んだり食べたりするドラマも好き。

誰に気にするでもなく、好きな店を選んで、好きなメニューを選び、好きなペースで食べる。そういうのが、自分も趣味で好きなのだ。


なんで好きなんだろうって、ふと考えてみたら、単純に美味しい食事が好きというのもあるけど、一人でする店選びが楽しいのかも。

それも自分一人で入る店を選ぶのは楽しい。誰かと行くことを考えると、失敗したくないから気を使うけど、自分だけなら失敗しても良い。

一人旅の旅先で、地元の人しかいなさそうな店に入ってみたりして。うまく溶け込めば楽しいし、外れなら早々に退散する。それも楽しい。


たぶん普段の仕事が、一応は経営の仕事なので、なんだかんだ決める場面が多いけれど、考え抜いてなるべく失敗の無いように決めている。

絶対に失敗しないってことは無理だけど、その時点での考えたベストな判断はしたいと思っている。なので多方面に配慮して決めている。

だから一人で気兼ねなく失敗しても良い店選びするのが好きなのかも。最近はあまり行けないけれど、また気軽に行けるようになると良いな。

内発的動機付けでの採用判断

思考メモ

採用面接の初回から私も出ることが多いのだけど、どうしても難しい方には、その場でお断りすることになる。とても心苦しいけれど、きちんと伝えている。ただ、結果は単純な合否ではない。

採用面接に向かうときの姿勢は、会社側として採用したいかどうかの視点はいったん横に置いて、応募してくださった方の人生にとってのベストな選択は何かを一緒に考えることにしている。


ベストな選択がソニックガーデンに入ることなら良いし、そうでないことがわかれば、どれだけ優秀な方でも引き留めずに、その選択を応援する。むしろ早くわかって良かったね、となる。

だから、まずは応募された方が本当に何をしたいのかを深掘りしていく。「入社したい」というのは、本質的ではないので、入社するかどうか関係なく何をしたいのかを問うところから始まる。


自分は何をしたいのか、どういう状態になりたいのか、案外と明確に言語化できてない人も多いから、色々な角度から質問してみたり、考えてもらったりして、自分自身で言葉にしてもらう。

自分がしたいことを、自分の言葉で表現するのは、人生の選択肢を考える上で、とても重要で、そこがすりあえば会社としても応援しやすくなる。内発的動機付けマネジメントの第一歩。


これは、もはや採用面接というより、コーチングみたいなものかもしれない。私たちの会社では、入社後も年に一度は、こんな感じで社員と自分がしたいことの「すりあわせ」をしている。

私たちの会社で「すりあわせ」をするときに使っているのがYWTというフレームワーク。「やったこと・わかったこと・次にやること」の、なんと日本語の頭文字。シンプルだけど強力。


なにも転職するときだけでなくても、定期的に本当に自分のしたいことを考えたり、自分が働いている会社と方向性のすりあわせしていく機会があっても良いと思うんだよな。

「選択と集中」から「分散と修繕」へ

思考メモ

この記事、めちゃくちゃ面白かった。経済合理性を目的から追求する「選択と集中」では変化の激しい中では機能しないため、探究したい問いを起点にした「分散と修繕」で取り組むのが良いという主張。

これまで私が経営の中で取り組んできた姿勢そのものが説明されていて、とても肯定された気持ちでスッキリした。こうして言語化されて嬉しい。

『「分散と修繕」の主眼は「どこかに到達すること」ではなく、あくまで「自己の変容」であり、自分自身のアイデンティティを探究していくことだ。』

経営してて考えることは、まさしくこれで、到達するゴールよりも、その過程におけるアイデンティティの探究で、問いに対して答えを見つけることを続けているに過ぎない。


現代の多くの経営論が、目標ありきのエンジニアリングだから、経営者の集いで違和感と居心地の悪さを感じてたのは、自分の流派が手元にあるもので工夫するブリコラージュだったからだな。

レヴィ=ストロースの「ブリコラージュ」についても知っていたけれど、こんな風に、問いの探求と組み合わせることで、非常にクリアな論旨を展開できるなんて、美しさを感じる。


力強い洞察を得るためには、マルチタスクが重要で、多面的なインプットとアウトプットによって到達しうるというのも、私たちが兼務を推奨していることに通じるようだ。

『洞察は、これまで結びついていなかったAとBが結びつき、新たな知のつながりが生まれることで起こる。(略)これを「新結合」と呼び、経営学ではイノベーションや組織変革の源泉だとされる。』

「納品のない受託開発」のようなビジネスモデルも、管理ゼロのマネジメントの実践も、私にとって実験みたいなもので、自分の問いを証明したかったのが最初のモチベーションだった。

ある程度の答えが見えてくると、さらにまた新しい問いが生まれて、ずっと続くのかと思っていたけど、「自己の変容」が成果なら、むしろその状態が自然なことなのかもしれない。


まだ読み解けてなく、誤解してる部分もあるかもしれないけれど、私にとっては大きなインスピレーションを貰えた記事でした。

指摘に慣れるまでは、時間をおいてみる

思考メモ

私たちの会社には、コードレビューの文化があって、品質を高めるためにも、必ず同僚同士によるレビューが入るようにしている。


コードレビューでの指摘に慣れないうちは、レビューされる度にウッとなる。コードへの指摘だとわかっていても、自分にダメージがくる。

指摘している側は、なにも他意はなく、純粋に良いコードにするために必要な指摘をしているだけなので、ダメージを感じるのは受け手の話。


こうした感覚は慣れてくるものだとわかってはいても、慣れるまではツラい人もいるだろうし、それでレビューを避けるようになっては本末転倒。

その抵抗感への対処のアドバイスは、作ってからレビューを受けるまでに時間をおくことだ。作ってすぐは、まるで自分ごとになってしまう。


なんであれ創作物は、作ってすぐは、自分から切り離されていない。作品=自分になってしまうけれど、時間が経てば冷静に客観視できる。

コード以外でも、私の経験だと、書籍の原稿なども書いてすぐに、編集の方からのチェックが入るとめげてしまうことも多い。


少しでも時間を置くことで、自分から切り離すことが出来れば、直していくのも前向きに取り組むことができるはず。とてもシンプルだけど効果的。

KPTのPは”Potential”にする

思考メモ

ふりかえり文化は私たちの会社では欠かせないもので、週に一度、誰かとふりかえりをして、自分の仕事や考えを内省し、客観的にフィードバックしてもらう機会にしている。


アジャイル開発で知られるふりかえりとの違いは、チーム活動でなく、個人ごとに実施している点。レトロスペクティブよりも、リフレクションの色合いが強い。

ふりかえりをすることで、自己改善と自己認知が進む。特に、内省と客観により自己認知が進むことが重要で、それによって結果的に改善も進む。改善テクニックより本質的。


ふりかえりは同僚と1on1の形で実施するので、その二人の関係性も深まる。1時間の時間をとっていれば、ふりかえりしながら雑談もするので、時間をとっておくのが大事。

(余談だけど、ソニックガーデンは代表取締役が二人体制で、毎週の経営ミーティングあるけど、これはある意味1on1で互いのふりかえりをしてたんだなって思った。)

マネージャーがいないこともあり、同僚同士でのふりかえりになるが、その結果をメモで見えるところに残してもらえると、社内の他の人からも存在を認知されるようになる。


そうした個人ごとのふりかえりの他に、リリース作業や顧客ミーティング、社内イベントなど、何かチームやペアで取り組んだ仕事があれば、その直後にふりかえりをしている。

こちらも、まず起きた出来事に対しての認識合わせから始まる。誰かは成功だと思っていても、他の人は違っているかもしれない。チーム内での認知の歪みを解消する。


個人でもチームでも、ふりかえりに使うフレームワークは同じで、KPTを使う。Keep/Problem/Tryで項目を出すという有名なやつ。ただ、最近ひとつ変えたいと思っている。

それは、Problemという言葉。日本語にすると問題となるけど、問題を出すと言うと、けっこう抵抗感がある。あと、解決できないような問題まで出てきてしまう。

そこで、KPTのPは、Potentialとした方が良いんじゃないかと考えている。改善すべき問題よりも、改善できる可能性。そう考えると、前向きにアウトプットできそう。


たかが言葉だけど、人の脳は言葉で考えるから、言葉を変えることで、向き合い方や気持ちの持ちようが変わるなら、変える意味は大きいと思うんだよな。

良い名前をつけること

思考メモ

組織の設計や、制度の策定を考えている中で、もっとも悩むのが名前付けで、良い名前がバチっと決まったときは、その制度の運用を始めてもうまくいくことが多い。


プログラミングでも名前付けはとても大事。変数名、クラス名、テーブル名、様々な場面で名前を付ける。適当につけてしまうと、後で読み返すときに苦労する。

名前を付ける行為は、そこにあるはずの概念を言葉で掴み取ることだ。名前を付けられないとしたら、まだ本質を理解できていない。これはソフトウェア設計における重要な指針になる。


うまく名前付けできたら、あたかも昔から決まっていたかのような感覚になる。なぜ、もっと早くに気付けなかったのかと思うが、よくよく考えるから名前を捕まえられる。

Rubyをつくったまつもとさんも「適切な名前をつけることができた機能については、その設計の8割が完成したと考えても言い過ぎでないことが多い」と仰っていた。


この感覚が、プログラミングというコード(ソフトウェア)のデザインと、経営という組織・制度(ソフトウェア)のデザインの名前付けにおける共通点と言える。

コーポレートガバナンスコードという言葉があるように、組織や制度を支える規則のこともコードと言うから、やはり私にとっては経営もコーディングなのかもな。

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